「赴任先に日本人学校があるらしい。下の子は幼稚園から入れられるだろうか」――駐在の準備でこれを調べ始めると、多くの方が同じところでつまずきます。学校の公式サイトを隅々まで見ても、幼稚部の情報がどこにも出てこないのです。理由は2つあります。ひとつはそもそも幼稚部がない学校のほうが多いこと。もうひとつは、幼稚部があっても学校本体とは別の法人・別の名前で運営されていることがあるためです。この記事では、幼稚部がある学校とない学校を実際の公表資料で確認し、保育料の実額(クアラルンプール・ニューデリー・フランクフルト・ソウル)、そして幼稚部のほうが小学部より高いことがあるという構造まで整理します。
まず結論――日本人学校の本体は「小学部と中学部」
日本人学校は、日本の義務教育に相当する教育を海外で行う在外教育施設です。義務教育は小学校と中学校ですから、日本人学校の本体も小学部と中学部で、これは世界のどの学校にも共通しています。文部科学省の認定も、この小学部・中学部を単位として行われます。
では幼稚部はどうかというと、義務教育ではないため「あるかないか」は学校ごとの判断になります。現地の日本人会や運営母体が「就学前の子どもの受け皿も必要だ」と考えた学校には幼稚部があり、そうでない学校にはありません。そして数のうえでは、幼稚部を持たない学校のほうが多数派です。「日本人学校があるのだから幼稚園もあるだろう」という前提で赴任準備を進めると、着任してから慌てることになります。
幼稚部がある学校・ない学校【公表資料で確認できるもの】
| 都市・学校 | 幼稚部 | 備考 |
|---|---|---|
| クアラルンプール日本人学校 | あり | 幼稚部。2026年度の費用を公式サイトに掲載 |
| ニューデリー日本人学校 | あり | 「附属幼稚園」として別サイトで運営 |
| ジャカルタ日本人学校(JJS) | あり | 幼稚部。費用は年度別PDFで配布 |
| ソウル日本人学校 | あり | 幼稚部(年少・年中・年長)。学年定員あり・抽選 |
| フランクフルト日本人国際学校 | あり | 別法人「共益法人フランクフルト日本人国際学校幼稚部」が運営 |
| ドバイ日本人学校 | あり | 「ドバイ日本人幼稚園」として併設 |
| 日本メキシコ学院 | あり | 幼稚部は日本コースとメキシココースが合同 |
| バンコク日本人学校(泰日協会学校) | なし | 公式に「同一敷地内に小学部・中学部を併せ持つ」と明記 |
| シンガポール日本人学校 | なし | 小学部2校(クレメンティ・チャンギ)+中学部1校 |
| 上海日本人学校 | なし | 小学部・中学部・高等部 |
| デュッセルドルフ日本人学校 | なし | 公式に「小学部と中学部で構成」と記載 |
| 台北日本人学校/高雄日本人学校 | なし | 小学部・中学部(台北は特別支援学級・通級指導教室あり) |
| 香港日本人学校 | なし | 幼稚部は1986年3月31日に廃止 |

保育料の実額――4校の公表額を並べる
幼稚部の費用は、学校によって考え方も金額もまったく違います。公表されている4校の額をそのまま並べます。
| 学校 | 入園時 | 保育料(月額) | その他 |
|---|---|---|---|
| クアラルンプール日本人学校 幼稚部 (2026年度) |
入園金 RM2,630 (約9万2千円) |
RM2,330 (約8万2千円・教材費込) |
学校維持資金 月RM370/PTA会費 月RM8/通園バス 月RM439.50 |
| ニューデリー日本人学校 附属幼稚園 | 入園金 250,000ルピー (約45万円) |
45,000ルピー (約8万1千円・半年分一括払い) |
送迎バスなし(保護者が責任を持つ) |
| フランクフルト日本人国際学校 幼稚部 | 入園料 540ユーロ (約9万2千円) |
630ユーロ (約10万7千円) |
施設料 年350ユーロ/遠足代・記念写真代は別途 |
| ソウル日本人学校 幼稚部 (令和8年度) |
入園入学金 650,000ウォン (約7万2千円) |
年少 550,000ウォン 年中・年長 510,000ウォン |
校舎改築積立金 月50,000/冷暖房費 月30,000/通学バス 月283,500 |
月額でみるとどの学校も8万〜11万円のレンジに収まりますが、入園時の一時金だけが桁違いにばらつきます。ニューデリーの入園金250,000ルピー(約45万円)は、クアラルンプールの入園金RM2,630(約9万2千円)のおよそ5倍です。赴任期間が2〜3年の場合、この一時金が総額に効いてきます。
幼稚部のほうが小学部より高いことがある
これは多くの方が想定していない構造です。ソウル日本人学校の月額授業料は、幼稚部年少550,000ウォン > 年中・年長510,000ウォン > 小学部・中学部390,000ウォンという並びになっています。諸費用まで含めた月額の合計で見ると、幼稚部年少が630,000ウォン、小学部・中学部が470,000ウォン。幼稚部のほうが月に16万ウォン(約1万8千円)高いのです。
理由は幼稚部の手厚さにあります。ソウル日本人学校の場合、学年定員が年少30名程度・年中40名程度・年長50名程度と案内に明記されており、申込者が定員を超える場合は抽選になります。少人数を手厚く見る体制は、そのまま単価に反映されます。「小学部の学費を見て予算を立てていたら、下の子の幼稚部のほうが高かった」という誤算は実際に起きます。

なぜ学校サイトに幼稚部の情報が載っていないのか
「幼稚部はあるはずなのに、学校のサイトに何も書いていない」――これには理由があります。幼稚部が学校本体とは別の法人・別の名称で運営されているケースがあるのです。
たとえばフランクフルトの幼稚部は、「共益法人フランクフルト日本人国際学校幼稚部(Vorschule der Japanischen Internationalen Schule Frankfurt am Main e.V.)」という独立した法人が運営しており、学校本体とは別のウェブサイトを持っています。ドバイも「ドバイ日本人幼稚園」という別名称で、募集要項も幼稚園として別に配布されます。ニューデリーも「附属幼稚園」として別サイトです。
実務上のコツはひとつです。「〇〇日本人学校 幼稚部」ではなく「〇〇 日本人幼稚園」でも検索してみてください。学校名で探して見つからなかったものが、幼稚園名で一発で出てきます。別法人ということは会計も別ということなので、学費の一覧表にも幼稚部が載っていません。見積もりを作るときは、小学部の校納金表とは別に幼稚部の案内を取り寄せる必要があります。
入園条件は「日本人会・学校会員であること」が先に来る
幼稚部の入園条件は、小学部の入学条件とほぼ同じ構造です。クアラルンプール日本人学校の幼稚部は、①子どもが日本国籍を保有していること(パスポートで確認)、②保護者がクアラルンプール日本人会の家族会員であること、③保護者と子どもが長期滞在ビザ(子どもは就学可能なもの)を保有していること、④学校運営理事会による入学審査――の4つをすべて満たすことが必要です。
フランクフルトも「保護者または勤務企業が学校会員であること」が必須で、さらに親子参加の入園面談、ドイツで受診した健康診断書、麻疹の予防接種証明書が求められます。ニューデリーは「ニューデリー及びその近郊に在住」「幼稚園とのやり取りを円滑に行う日本語能力」「デリー日本人会の正会員または会友」。
つまり会社の現地法人が日本人会に入っているか、保護者が会員手続きを済ませているかが、園に申し込むより前の前提条件になります。ここが未処理だと申込みの土俵に乗れません。赴任準備の順番としては、会社の総務に日本人会の会員状況を確認するのが先です。

送迎とお弁当――生活が回るかどうかの分かれ目
見落とされがちなのが送迎です。クアラルンプールは通園バスが月RM439.50で用意されていますが、ニューデリー日本人学校の附属幼稚園には送迎バスがありません。案内には保護者が送迎の責任を持つこと、ハウススタッフやピックアップグループでの代行も可能であることが書かれています。登園は8:30〜9:00、降園は14:00です。
共働きでなくても、この時間帯に毎日往復できるかどうかは住居の場所で決まります。幼稚部があるかどうかだけでなく、送迎の仕組みまで確認してから住まいを決めてください。学校の近くに住むかどうかで、赴任中の生活の回り方が変わります。
幼稚部から小学部への「接続」で得することがある
幼稚部を選ぶメリットのひとつが、小学部への接続です。ニューデリー日本人学校では、附属幼稚園の卒園児は日本人学校入学時の入学金が半額になります。入学金の水準を考えると、これは小さくない差です。
一方で、ソウル日本人学校のように幼稚部から小学部への内部進学でも入園入学金が徴収される学校もあります(同校は小学部から中学部への内部進学では徴収しません)。また、抽選のある学校では「入園時に小学部3年生以下の兄弟姉妹が在籍している家庭が優先」という運用がはっきり公表されていることもあります。上の子を先に入れておくと下の子の抽選が有利になる、という設計です。兄弟がいる家庭は、学費より先に「入れるかどうか」を確認してください。
幼稚部がない都市では――そして幼児期の日本語について
幼稚部がない都市に赴任した場合、選択肢は現地のプリスクール、インターナショナルスクールのキンダーガーテン、あるいは現地の幼稚園になります。この年齢の子どもは環境への適応が早く、半年もすれば現地の言葉で友だちと遊ぶようになります。
ただし、ここでよく起きるのが日本語の「話し言葉」が薄くなるという現象です。幼児期の日本語は、文字や漢字ではなく、同世代とのやりとりのなかで育ちます。家庭では親としか日本語を話さないので、語彙が「家庭内語彙」に偏り、子ども同士のことば――遊びの誘い方、順番の決め方、けんかの仲直りのしかた――が育ちません。帰国して日本の小学校に入ったときに戸惑うのは、じつは漢字よりもここです。
ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の教員が8人の少人数クラスを担任し、日本にいる同世代の子どもたちと一緒に学ぶオンライン日本語スクールです。先生と1対1で学ぶのではなく、日本の同世代の子どもと一緒のクラスで過ごすという設計にしているのは、まさにこの「子ども同士の日本語」を絶やさないためです。月額定額の通い放題で、日本人学校の幼稚部に通いながらの補完としても、現地のプリスクールに通う家庭の日本語の土台づくりとしても使えます。
よくある質問
日本人学校に幼稚園はありますか?
学校によります。ない学校のほうが多数派です。日本人学校の本体は義務教育にあたる小学部と中学部で、幼稚部は義務教育ではないため各校の判断で設置されています。クアラルンプール・ニューデリー・ジャカルタ・ソウル・フランクフルト・ドバイ・メキシコシティなどには幼稚部(または附属幼稚園)がありますが、バンコク・シンガポール・上海・デュッセルドルフ・台北・高雄・香港にはありません。
幼稚部の保育料はいくらくらいですか?
公表されている学校では月8万〜11万円のレンジです。クアラルンプールが月RM2,330(約8万2千円)、ニューデリーが月45,000ルピー(約8万1千円)、フランクフルトが月630ユーロ(約10万7千円)、ソウルが年少で月550,000ウォン。これに入園時の一時金と、バス代・施設費などが加わります。
小学部より幼稚部のほうが高いことはありますか?
あります。ソウル日本人学校では諸費用込みの月額が幼稚部年少630,000ウォン、小学部・中学部470,000ウォンで、幼稚部のほうが月16万ウォン高いという並びです。少人数を手厚く見る体制がそのまま単価に反映されるためです。
何歳から入園できますか?
多くの学校が年少(3〜4歳児)からで、年少・年中・年長の3学年を置いています。フランクフルトは「その年度中に4歳を迎える子どもが年少」という数え方を案内に明記しています。学校ごとに基準日が異なるので、早生まれのお子さんは必ず学校へ確認してください。
幼稚部がない都市に赴任します。日本語はどうすればいいですか?
幼児期の日本語は文字より「話し言葉」です。家庭内の会話だけでは、子ども同士のことばが育ちません。ともだちじゃぱんは日本にいる同世代の子どもと同じクラスで過ごす設計なので、現地のプリスクールで現地語を伸ばしながら、日本語のやりとりだけを絶やさずに保てます。就学後の国語の考え方は帰国子女の国語にまとめています。

保育料を公表していた4校の都市については、小学部から先の学費と現地校・インターとの比較も調べています:クアラルンプール/ニューデリー/フランクフルト/ソウル。幼稚部のあいだに払う額と、小学部に上がってからの額を並べて見ておくと予算が立てやすくなります。
幼稚部がない都市では、現地の園やインターのプリスクールに通いながら日本語をどう保つかが論点になります。都市ごとの学校事情はこちらです:バンコク/シンガポール/上海/香港/ロンドン/シドニー。
幼稚部がない都市では。日本人学校に幼稚部がない都市でも、その都市の補習授業校が何歳から受け入れているかが次の判断材料になります。開講学年は都市別のまとめで確認できます=シンガポール/香港/バンコク/クアラルンプール/フランクフルト/ソウル。
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この記事で取り上げた都市のある国は、その国にある日本人学校の校数と学費を国単位でも整理しています。タイの日本人学校の学費/中国の日本人学校の学費/イギリスの日本人学校の学費/オーストラリアの日本人学校の学費/香港日本人学校の学費。
幼稚部に入れるか迷う段階では、現地の園も含めて費用を比べることになります。駐在の幼稚園|補助はあるのか・費用と幼稚部の実際。通園の手段が心配な場合は日本人学校のスクールバス(10校のバス代と申込の実際)もあわせてご覧ください。

