赴任が決まって、上のお子さんの学校より先に悩むのが下の子の幼稚園だという方は多いです。実際「駐在 幼稚園」で検索すると、いちばん最初に出てくる関連キーワードが「補助」で、その後に「一時帰国」と都市名がずらりと続きます。つまり多くの家庭が知りたいのは、①いくらかかるのか・補助はあるのか ②日本に一時帰国したとき日本の園に入れられるのか ③自分の赴任先には何があるのかの3点です。
この記事は、その3点を制度の条文と、園・学校の公式サイトで確認できた事実だけで組み立てます。先に結論を書きます。幼稚園段階は、国の支援がいちばん薄いところです。小学部・中学部には教師の派遣や教科書の給与といった支援がありますが、幼稚園段階については、文部科学省が「現状では難しい」と明言しています。だから費用も選択肢も、赴任先の都市によって大きく変わります。

「補助」の答え|日本の無償化は、海外の園には届かない
まず日本の幼児教育・保育の無償化です。こども家庭庁の説明では「幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳までの全てのこどもたちの利用料が無料になります」とされています。「全ての」と書いてあるので、海外でも使えるのではと考えたくなります。
ところが条文をたどると、制度の入口が3か所とも日本国内に閉じています。
1つめは対象になる施設の定義です。子ども・子育て支援法 第7条第4項は「教育・保育施設」を、認定こども園と「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する幼稚園」と児童福祉法第39条第1項の保育所に限定しています。学校教育法第1条が定める学校は「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」で、これは日本国内の法律に基づく施設のことです。
2つめは認定を誰がするかです。同法第20条第2項(および第30条の5第2項)は「前項の認定は、小学校就学前子どもの保護者の居住地の市町村が行うものとする」と定めています。3つめは支給の対象になる施設をどう決めるかで、第30条の11第1項は「市町村長が施設等利用費の支給に係る施設又は事業として確認する子ども・子育て支援施設等」から支援を受けたときに支給する、とし、第58条の2はその確認を「市町村長が行う」としています。海外の園について、確認する市町村長がいません。
自治体側の案内はもっと直接的です。世田谷区は無償化のページで「認定の有効期間は、世田谷区内在住の間のみ有効です」と書いています。江戸川区は「江戸川区から転出する場合は、転出した日から居住自治体で認定を受ける必要があります」、大田区は「大田区に住民票を移してから一か月以内に申請してください」です。
ここは正直に書いておきます。「海外の幼稚園は無償化の対象外です」と明記した公的文書は、今回見つけられませんでした。こども家庭庁の無償化のページとFAQ、複数の自治体のページを確認しましたが、「海外」「国外」に触れた記述はありません。制度がそもそも海外を想定していないので、わざわざ「対象外」と書く必要がなかった、という状態です。上に挙げた条文と自治体の在住要件から、実務上は使えないと判断するのが妥当です。渡航前にお住まいの市区町村へ確認しておくと確実です。
児童手当も、原則として止まります
こちらは条文がはっきりしています。児童手当法 第3条第1項は「児童」を「日本国内に住所を有するもの又は留学その他の内閣府令で定める理由により日本国内に住所を有しないもの」と定義しています。こども家庭庁のQ&Aも「原則として、児童が海外に住んでいる場合は、その児童の分の児童手当は支給されません」と書いています。
例外は留学ですが、家族帯同はここに当たりません。児童手当法施行規則 第1条が「留学」を、日本国内に3年を超えて住所を有していた者が「教育を受けることを目的として外国に居住すること(法第四条第一項第一号に規定する父母等……と同居する場合を除く。)」と定義しているためです。括弧の中の「父母等と同居する場合を除く」――駐在への帯同は親と同居するので、この例外に入りません。
なお、親だけが海外に住み子どもが日本に残る場合は別です。こども家庭庁は「日本にいる祖父母のいずれかを、児童を養育している人として指定すれば、指定された人が手当を受け取ることができます」としています(父母指定者。児童手当法第4条第1項第2号)。
国も、幼稚園段階は支援していない
日本側の制度が届かないなら、在外教育施設としての支援はどうか。ここも空白です。文部科学省のCLARINET(在外教育情報)のQ&Aに、そのままの質問と答えがあります。
Q7 幼稚園段階や高等学校段階への政府支援はどのようになっていますか。
A.「文部科学省では、現在、教育の機会均等や義務教育の無償を定めた憲法第26条の精神に沿って、在外教育施設の小学部、中学部に対して支援を行っているところです。このような観点や目下の厳しい財政事情を踏まえた場合、幼稚園段階や高等学校段階に対する支援を行うことは現状では難しいと考えています。」
同じQ&Aは「憲法第26条は、属地的に働く規定であるとされています。憲法第26条は直接在外邦人の子どもに適用されません」とも書いています。義務教育の無償や機会均等の話が、海外にはそのまま届かないという整理です。
制度の形も同じ方向を向いています。「在外教育施設の認定等に関する規程」第1条は、認定の対象を「小学校、中学校又は高等学校(以下「小学校等」という。)の課程と同等の課程を有する」ものとしており、規程の全文を検索しても「幼」という字が1件も出てきません。令和4年に成立した「在外教育施設における教育の振興に関する法律」(令和4年法律第73号)も、通知の定義で「本法律において『学校』とは、学校教育法……第1条に規定する小学校、中学校又は高等学校をいうこと」としています。幼稚園段階は、認定制度にも振興法にも入っていません。
だから幼稚園については、日本の教科書が届く仕組みも、日本から教員が派遣される仕組みもありません。小学部・中学部の話は日本人学校の教科書にまとめていますが、あの仕組みは小・中だけのものです。
幼稚部がある日本人学校は、15校中4校だった
「日本人学校に幼稚部があれば安心」と考える方は多いですが、幼稚部を持つ日本人学校は少数です。今回、駐在者の多い15校の公式サイト(学校要覧・入園案内・納付金表・学則・サイトマップ)を確認しました。
| 学校 | 幼稚部 | 公式サイトの記述 |
|---|---|---|
| クアラルンプール 日本人学校 | あり | 「クアラルンプール日本人学校は、マレーシアにおいて幼稚部から中学部までの生徒に質の高い教育を提供しています」。年少・年中・年長で園児66名(年少9/年中21/年長36) |
| ジャカルタ 日本人学校 | あり | 幼稚部は別サイトで運営。募集要項に「満5歳(年長)」「満4歳(年中)」「満3歳(年少)」の生年月日区分を明記 |
| フランクフルト 日本人国際学校 | あり | 本校が「同じ施設内には幼稚部を併設している」と明記。「設置クラス:縦割り3クラス」「保育時間:月曜日~金曜日 8:20~14:00」 |
| ソウル日本人学校 | あり | 「本校は幼稚部、小学部、中学部の3つの学部からなり」。年少組の対象は2022年4月2日〜2023年4月1日生まれ、保育は午前9時30分〜午後3時15分。★保育料は非公開 |
| シンガポール 日本人学校 | なし | 「小学部から中学部までを持つ日本人学校です」。クレメンティ校・チャンギ校(小学部)・中学部の3構成 |
| 台北日本人学校 | なし | 学校規則第4条「この学校の教育課程は小学部及び中学部とし」 |
| 香港日本人学校 | 日本人学級はなし | 募集は新小1と小2〜中3の編入のみ。※同一校内の国際学級(IS)は3歳のReceptionからあり |
| 上海日本人学校 | なし | 学則第3条「虹橋校は小学校教育課程、浦東校は小学校教育課程及び中学校教育課程、高等部は高等学校教育課程を有する」 |
| ホーチミン 日本人学校 | なし | 「学校規模 小学部1〜6学年、中学部1〜3学年」 |
| ハノイ日本人学校 | なし | 学年ページ・学費表とも小学部1〜6年と中学部のみ |
| バンコク日本人学校 | なし | 公式サイトに「幼稚部」の語がなく、入学の最下限は小学部1年 |
| デュッセルドルフ 日本人学校 | なし | 併設は幼稚部ではなく日本語補習校。サイト全ページで「幼稚」「幼児」の記載なし |
| ロンドン日本人学校 | なし | 公式が挙げる学部は小学部・中学部のみ |
| ニューヨーク 日本人学校 | なし | 募集は初等部1〜6年・中等部7〜9年とアップル学級 |
| シドニー 日本人国際学校 | 日本人部はなし | 「Japanese Division…from Year 1 to Year 9」。※インター部のKindergartenはNSW州制度の小学校1年目(5歳)で、日本の幼稚部ではありません |
1つ注意点があります。バンコク日本人学校の入学要項に「11月1日現在、タイの幼稚園に通園している年長園児のみを対象としたお申し込みを受け付けます」という記述がありますが、これは小学部1年生の入学についての話で、同校に幼稚部があるという意味ではありません。シドニー日本人国際学校の「Kindergarten」も、日本の幼稚部ではありません。NSW州の小学校1年目にあたる課程で、インター部側にのみ置かれています。
もう1つ。幼稚部の情報は探しにくいところにあります。ジャカルタとフランクフルトはいずれも幼稚部が別ドメインで運営されていて、本校トップのナビゲーションからは辿れません。「公式サイトを見たけれど幼稚部が見つからなかった」ときは、サイトマップやお問い合わせページから探すと出てくることがあります。
公表されている費用は次のとおりです(通貨は原文どおり。円換算はしていません)。

クアラルンプール日本人学校の幼稚部には入園条件もあります。「お子様が日本国籍を有すること。」「クアラルンプール日本人会の家族会員であること。」と、保護者と子の長期滞在ビザの保有です。小学部・中学部でも国籍やビザの条件は学校ごとに違うので、日本人学校の入学条件と手続きとあわせて確認してください。
赴任先に何があるか|日系の園とインターの公表値
日本人学校に幼稚部がなくても、別法人の日系幼稚園がある都市は多いです。公式サイトで金額を公表している園を並べます。年度が明記されていない園、古い年度のままの園があるので、そこも隠さずに書きます。
| 都市 | 日系の園(公表値) | 英語のインター系(公表値) |
|---|---|---|
| シンガポール | シンガポール日本人幼稚園:保育料(日本語クラス)S$1,600+GST/月、入園料 S$1,200+GST(★年度の記載なし)。「文部科学省『幼稚園教育要領』に基づいた保育内容です」 | Stamford American(Early Learning Village):2026-2027で Pre-Nursery・Nursery SGD 20,420〜30,820/年、K1 31,620〜45,340(GST9%込み) |
| バンコク | こばとようちえん:保育料 日本人部15,000/バイリンガル部18,000(月)、入園金15,000〜30,000(★年度の記載なし・通貨表記は給食費のみ「バーツ」)。「日本の幼稚園教育要領の精神を踏まえ」 | Bangkok Patana School:2026/27で Nursery THB 515,000/年、FS1 577,000、FS2 640,000+入学金 第1子250,000 |
| 上海 | オイスカ上海日本語幼稚園:保育料 8,000元/月、入園料は無料(★年度の記載なし)。「文部科学省『幼稚園教育要領』に示された年間39週の教育週数を基本としています」 | Dulwich College Shanghai Pudong:2026/2027で Toddlers RMB 282,000/年、Nursery・Reception 313,000 |
| 香港 | 帝京香港幼稚園:保育料 HK$6,500/月(★2025年度)。オイスカ香港日本語幼稚園:HK$4,800/月(★公式に「(2020年度)」と明記されたまま) | ESF International Kindergartens:2026/27で HK$107,200〜132,000/年。★公式に「subject to the final approval by the Education Bureau」=確定値ではない |
| ニューヨーク (ニュージャージー) | ニューヨーク育英学園 NJキャンパス 幼児部(私立在外教育施設):2026年度の保育料は3学期合計で年$19,930+入園金$1,850。「文部科学省幼稚園教育要領に準拠した保育内容」で4月始まり | British International School of New York:2026-2027で Nursery $45,600/年、Reception 51,000 |
| ロンドン | チューリップ・プリスクール(週2日・各2時間):2026年4月〜27年3月で入会金110ポンド、夏ターム(9週)週一日186.50ポンド。全日制の園ではありません | The International School of London:2026-2027で Early Childhood 1(3歳)24,630ポンド/年、EC2 28,310 |
| 台北 | 博如日本幼児園:金額は非公開。「日本の幼稚園教育要領に基づき」、前期4月〜9月/後期10月〜3月で4月始まり | Taipei European School:2026-2027で Nursery half-day NT$208,800/学期、Reception 325,600/学期 |
| ホーチミン | おおぞら日本人幼稚園:金額は非公開(定員は各学年20名)。「日本文科省『幼稚園教育要領』に基づく保育。」 | ISHCMC:2026-2027で Early Explorer 2 Full Day VND 396,000,000/年、EE4 514,800,000 |
| ソウル | ソウル日本人学校の幼稚部以外に、公式サイトを持つ日系園を確認できませんでした | Seoul Foreign School:2026-2027で Pre-K 2 Full Day W26,990,000+$8,625(原文はウォンとドルの併記)。8月始まり |
| シドニー | Konomi Kindergarten International(2〜5歳の3クラス):金額は非公開。ウェイトリスト申込制 | German International School Sydney:2026 Preschool は日額 $118〜147(通貨表記は「$」のみ)。NSW州のStart Strong補助が最大$4,456 |
この表からわかることが2つあります。1つは日系の園とインター系で費用が一桁違うことです。もう1つは、日系の園の多くが「文部科学省 幼稚園教育要領」に基づくと明記していることです。シンガポール日本人幼稚園、オイスカ上海・香港、帝京香港、おおぞら(ホーチミン)、博如(台北)、ニューヨーク育英学園NJ――いずれも公式サイトに書いています。日系の園を選ぶと、日本の幼稚園と同じ枠組みで過ごせるということです。
そして見落としやすい落とし穴があります。現地の学年と日本の学年がずれることです。香港のこひつじ幼稚園は、この事情を公式サイトで説明しています。「香港の幼稚園は教育局の定めによりK1(2歳8ヶ月~)……また年度の始まりが8~9月であるなど日本の幼稚園との違いがあります。」そのうえで「当園では年度の始まりは日本に合わせて4月とし、入園可能時期を香港の制度に寄せて2歳8ヶ月からとしております。」としています。上の表でも、日系の園は4月始まり、インター系は8月始まりが多くなっています。赴任のタイミングによっては、半年ぶんの空白ができるということです。
「費用が高い」は気のせいではない
駐在の幼稚園でお金の話が最初に来るのは、実際に費用が最大の課題になっているからです。ここは公的統計ではありませんが、業界団体の調査に数字があります。
一般社団法人日本在外企業協会が会員企業に行った「第14回 帯同家族、海外・帰国子女教育に関するアンケート」(2026年3月2日公表・89社が回答/回答率41.2%・回答者は主に国際人事関連部門)によると、「就学前教育(幼児・保育)」の課題として「費用の高さ」を挙げた企業は62.9%でした。次が「通学距離・安全面での懸念」34.8%、「現地との文化・言語の断絶」27.0%、「入園手続きや情報収集の難しさ」18.0%です。
同じ報告書は理由も書いています。「そういった就学前教育施設自体の絶対数が少なく選択肢が限られる」「就学前教育施設の経営自体も児童数が限られ、安全面での高いリスク対応体制が求められるため、経費がかさみ、民間ベースでは授業料が高止まってしまうことはやむを得ない面がある」。そして「海外帯同子女においては『就学前教育(幼児・保育)の壁』と共に『中1の壁』が存在する」とまで書かれています。高いのは、あなたの赴任先だけの話ではないということです。
会社の補助については、期待しすぎない書き方をしておきます。同じ調査で会社の施策として挙がったのは「教育費補助(授業料・入学金・スクールバス等)」24.7%、「保育料・ベビーシッター等の子育て支援」9.0%で、「特になし」が11.2%でした。この設問は選択肢のない自由記述を協会側が集約したもので、協会自身が「『補助などを全くしていない』ということではなく」と注記しています。それでも報告書本文が「多くの会社が義務教育期間である小学校・中学校の間の授業料・入学金・スクールバス代などいわゆる『学校教育費』の補助を実施してきている」としているとおり、補助の実務は義務教育段階が中心です。幼稚園の費用が出るかどうかは、必ず自社の規程で確認してください。公的な統計は存在しません。
母数の感覚として、同報告書が引く公益財団法人海外子女教育振興財団の資料では、海外で学ぶ日本人子女は約25万人、うち企業駐在員の帯同子女が13万人で、乳幼児が約3万人とされています。
一時帰国して日本の園に入れられるか|国の制度は存在しない
「駐在 幼稚園」の第2サジェストが「一時帰国」です。ここで先に押さえるべき事実があります。文部科学省が海外から一時帰国する家庭向けに出しているFAQに、こう書かれています。
「いわゆる『体験入学』は国の制度としては存在しておらず、正規の編入学とは違い、各教育委員会の裁量によって実施されているものです。『体験入学』を実施していない教育委員会もあれば、実施していても期間や条件が違う場合もあります。」
これは小・中学校についての説明で、しかもこの文書は新型コロナウイルス感染症に起因する一時帰国を前提に作られたものです(幼稚園についての記述の根拠も令和2年3月26日の通知)。平時の恒久制度としてそのまま引くことはできません。CLARINETのQ&Aも、住民票がない場合の就学については公立の小・中・義務教育学校について答えており、幼稚園についてはこれに相当する国の説明が見つかりません。
では実務上どうなっているか。自治体ごとにまったく違います。一時帰国中に使えるとしたら「一時預かり」「一時保育」といった事業ですが、名称も期間も費用も住民要件も揃っていません。
| 自治体 | 制度名と住民要件(公式の記述) | 期間・費用 |
|---|---|---|
| 世田谷区 | 区立保育園の一時保育。「申込時、利用時とも世田谷区にお住まいであることが必要です」 | 3か月(原則1回更新可)。令和8年4月利用分より無償(延長は30分200円) |
| 杉並区 | 同じページに4つの制度が並記。「一時預かり」「ひととき保育」は「区内在住」「原則、杉並区在住」 | 1施設につき同一月内に原則10回まで/1時間800円 |
| 横浜市 | 一時保育。「横浜市民以外の利用については、利用料や受入可否について、各施設によってことなります」=市外は施設判断 | 月120時間以内/0〜2歳300円・3〜5歳160円(1時間)。市外居住は上限額の適用外 |
| 品川区 | 一時保育。しおりに「品川区内に居住する生後4ヶ月から小学校就学前までの集団保育可能な児童」 | 2か月以内/1日2,000円。就労・買い物目的は対象外 |
| 吹田市 | 公立保育所等の一時預かり。「吹田市に居住していること」 | 理由により週2〜3回・2週間〜6か月/3歳未満2,500円・3歳以上1,500円+給食300円 |
| 大阪市 | 「原則、市内に居住する」。市外可の例外を限定列挙(里帰り出産・介護・裁判員・災害避難) | 3歳児以上 日額1,200円。市外居住者は利用料減免の対象外 |
| 奈良市 | 「市立幼稚園は奈良市在住を入園資格としていますので、市外から通園していただくことはできません」 | ―(体験入学の制度も設けていないと明記) |
ここでいちばん驚いたのは、同じ自治体の中で、小中学生と未就学児の扱いが逆になっていることです。世田谷区は小中学生について「海外に在留している児童・生徒が一時的に日本に帰国し、滞在先の区立小中学校に就学を希望する場合には、世田谷区教育委員会へ就学の申請をおこなうことにより、入学を認めております」「なお、体験入学ではありません。正式な編入学での受入れとなります」とし、住民登録を海外へ転出していても滞在証明書などで受け入れています。一方、区立幼稚園は「入園申し込み時点から在園期間中、世田谷区内に実際の居住場所とそれに基づく住民票が継続して存在している必要があります」。お兄ちゃんは入れるのに、妹は入れないということが起こります。小中学生の一時帰国については一時帰国の体験入学にまとめました。

予防接種は「出発3か月以上前から」
園の申し込みで求められることもあるので、先に触れておきます。厚生労働省検疫所(FORTH)は「必要な予防接種は、渡航先、渡航期間、渡航形態、渡航目的、渡航者自身の年齢、健康状態、予防接種歴などによって異なります」とした上で、「なるべく早く(できるだけ出発3か月以上前から)、トラベルクリニック、渡航外来等の医療機関で、予防接種を接種するワクチンの種類と接種日程の相談をしてください」と案内しています。数回に分けて接種するワクチンがあるためです。
日本の定期接種については、FORTHが「定期の予防接種については、日本の予防接種スケジュールを確認の上、年齢相応のものがすべて終了しているか、海外渡航前に必ず確認してください」としています。予防接種法 第5条第1項は定期接種を「当該市町村の区域内に居住する者」に対して市町村長が行うものと定めているので、渡航前に済ませておくのが基本という理解になります。なお海外で輸入ワクチンを接種する場合、FORTHは「日本で承認されていないワクチンについては、副作用発生時の医薬品副作用被害救済制度の対象になりませんのでご注意ください」と注意しています。
幼稚園の選択が、小学校での日本語に直結する
費用と手続きの話をしてきましたが、数年後にいちばん響くのは別のところです。英語の園に入れると、子どもは驚くほど早く英語で遊ぶようになります。それ自体はいいことです。ただそのぶん、日本語で考える時間は減ります。
この影響がはっきり形になるのが小学校に上がるときです。日本人学校の入学資格には、日本語能力の要件が明文で書かれている学校があります。今回15校を確認したなかで、次の学校が明記していました。
| 学校 | 公式サイトの記述 |
|---|---|
| 上海日本人学校 | 「本人及び保護者が学校生活に必要な日本語能力を有し、本人に集団生活適応能力があること。」+「説明会前に学年に応じた日本語能力を有しているか教育相談等を行うことがあります。」 |
| バンコク日本人学校 | 「本校は日本語補習校ではありませんので、お子様には日本語での通常の授業についていける日本語能力が求められます。更に、緊急時も含めて、学校とご家庭との間の文書や電話等による各種の連絡は全て日本語で行われますので」 |
| ホーチミン日本人学校 | 「日本語能力が、日本の教育レベルに達していること」 |
| 香港日本人学校 | 「学齢に達しており、日本語による教育に支障がない方。国籍は問いません。」 |
| メルボルン日本人学校 | 「授業はEALの授業を除いては全て日本語で行っております」「授業を理解できる日本語力が必要となります」 |
| 台北日本人学校 | 「日本語の能力(話す、聞く、読む、書く)が学年相応に身に付いていること。」★ただしこれは学校規則の別記付則で外国籍者に適用される条項です |
つまり「日本人だから日本人学校には入れる」とは限りません。赴任先の学校が日本語能力を要件にしているかどうかは、園を決める段階で見ておく価値があります。
国の側も、幼児期の言語環境について書いている文書があります。文部科学省初等中等教育局幼児教育課の「外国人幼児等の受入れにおける配慮について」(令和2年3月)です。ここは向きが逆であることを先に言っておきます。この文書は外国人の幼児が日本の幼稚園に入る場合を扱っており、英語の園に入る日本人の子について書かれたものではありません。「文部科学省が英語のプリスクールを危ないと言っている」わけではまったくありません。ただ、そこで示されている構造は考える材料になります。
「日本語の習得については、ある程度は、普段の生活の中で自然に身に付くと言われています。……しかし、教師の指示を他の幼児の行動や教師の身振り手振りを手掛かりに理解しており、日本語は理解していないこともあり、小学校以降の学習場面で言語を使って思考を進めることができず、学習につまずく可能性があります。」そして「幼い時期に来日した子供は、母語を忘れる傾向があり、成長するにつれ、保護者との関わりが難しくなる場合もあると言われています。そのため、幼稚園では日本語、家庭では母語といった対応が考えられます。」とも書かれています。
言語を入れ替えて読むと、①園の言語が家庭の言語と違うと、家庭の言語は忘れる方向に動きやすい ②その場では通じているように見えても、就学後に「言語で考える」場面でつまずくことがある――この2つが、国の文書に書かれている構造だということになります。
同じことは日本国内の統計にも出ています。文部科学省が「日本語指導が必要な児童生徒」を定義するとき、その筆頭に挙げているのは海外から帰国した児童生徒で、定義そのものが「日常会話ができても学年相当の学習言語能力が不足している」状態を指しています。令和7年度の調査(公表2026年5月25日)では、公立学校で日本語指導が必要な児童生徒84,759人のうち日本国籍が11,446人で、その言語別の最多は「日本語」27.7%でした。話せることと、学年相当に読み書きできることは別です。
ともだちじゃぱんは、学年相当の国語を扱うオンライン日本語スクールです。日本の現役水準の教員が8人の少人数クラスを担任し、日本の同世代と一緒に読んで・書いて・話します。授業はメタバース上なので送迎はゼロ、3つの時間帯+時差調整があるのでどの国からでも組み込めます。費用は月額定額(通い放題)です。就学前のお子さんの受け皿ではありません。ただ、幼稚園を英語の園にする・日系の園にするという判断は、小学校で日本語をどう続けるかという判断と地続きです。そこまで見通しておくと、園選びの迷いは軽くなります。就学後に効いてくる論点は帰国子女の国語とインターに通う子の日本語にまとめています。
よくある質問(駐在の幼稚園)
駐在先の幼稚園に、日本の無償化は使えますか?
実務上は使えないと考えてください。子ども・子育て支援法第7条第4項が対象施設を「学校教育法第一条に規定する幼稚園」等に限定し、第20条第2項が認定を「保護者の居住地の市町村が行う」とし、第30条の11第1項が支給対象を「市町村長が……確認する」施設に限っているため、海外の園はどの要件にも乗りません。自治体側も世田谷区が「認定の有効期間は、世田谷区内在住の間のみ有効です」と明記しています。ただし「海外の園は対象外」と書いた公的文書は確認できませんでしたので、渡航前にお住まいの市区町村にご確認ください。
会社は幼稚園の費用を補助してくれますか?
公的な統計は存在せず、自社の規程を見るしかありません。日本在外企業協会の会員企業アンケート(2026年3月公表・89社回答)で会社の施策として挙がったのは「教育費補助(授業料・入学金・スクールバス等)」24.7%、「保育料・ベビーシッター等の子育て支援」9.0%、「特になし」11.2%でした。同報告書は「多くの会社が義務教育期間である小学校・中学校の間の……補助を実施してきている」としており、補助の実務は義務教育段階が中心です。幼稚園段階が対象かどうかは会社ごとに違います。
日本人学校の幼稚部に入れますか?
幼稚部がある学校自体が少数です。今回確認した15校のうち幼稚部があったのはクアラルンプール・ジャカルタ・フランクフルト・ソウルの4校で、シンガポール・台北・香港・上海・ホーチミン・ハノイ・バンコク・デュッセルドルフ・ロンドン・ニューヨーク・シドニーは小学部からでした。入園条件がある学校もあり、クアラルンプール日本人学校は「お子様が日本国籍を有すること。」「クアラルンプール日本人会の家族会員であること。」と長期滞在ビザの保有を求めています。「その都市に日本人向けの園がない」という意味ではありません。別法人の日系幼稚園は多くの都市にあります。
児童手当は続きますか?
原則として止まります。児童手当法第3条第1項が「児童」を「日本国内に住所を有するもの又は留学その他の内閣府令で定める理由により日本国内に住所を有しないもの」と定義し、こども家庭庁も「原則として、児童が海外に住んでいる場合は、その児童の分の児童手当は支給されません」としています。例外の「留学」は、児童手当法施行規則第1条が「教育を受けることを目的として外国に居住すること(……父母等と同居する場合を除く。)」と定義しているため、親と一緒に赴任する家族帯同は当てはまりません。なお子どもが日本に残る場合は、祖父母などを父母指定者にすれば受け取れます。
一時帰国のあいだ、日本の幼稚園に通わせられますか?
国の制度としては存在しません。文部科学省のFAQは「いわゆる『体験入学』は国の制度としては存在しておらず、正規の編入学とは違い、各教育委員会の裁量によって実施されているものです」としており、これは小・中学校についての説明です。幼稚園についてはこれに相当する国の説明が見つかりませんでした。実務では自治体の一時預かり・一時保育が候補になりますが、世田谷区・杉並区・品川区・吹田市・大阪市はいずれも「区内在住」「市内に居住する」を要件にしており、奈良市は「市立幼稚園は奈良市在住を入園資格としていますので、市外から通園していただくことはできません」と明記しています。滞在予定の自治体に直接確認するのが唯一の方法です。
英語の園に入れると、日本語はどうなりますか?
園の言語環境と日本語の伸びを直接調べた公的データは確認できませんでした。ただし文部科学省「外国人幼児等の受入れにおける配慮について」(令和2年3月)は、外国人幼児が日本の幼稚園に入る場合の話として「幼い時期に来日した子供は、母語を忘れる傾向があり」、また「小学校以降の学習場面で言語を使って思考を進めることができず、学習につまずく可能性があります」と書いています(★英語のプリスクールについての記述ではありません)。確実に言えるのは小学校の入口の話で、上海日本人学校は「本人及び保護者が学校生活に必要な日本語能力を有し」、バンコク日本人学校は「日本語での通常の授業についていける日本語能力が求められます」としています。一方でシドニー日本人国際学校は「any language ability」を受け入れると明記しており、学校によって前提が違います。
幼稚部のうちは費用も送迎も何とかなっても、小学部に上がると学費の桁と一日の使い方が変わります。実額は国ごとにかなり違うので、香港の日本人学校の学費、マレーシアの日本人学校の学費、上海など中国の日本人学校の学費 を一次情報で確認しておくと見通しが立ちます。全日制ではなく「平日は現地校、土曜だけ日本語」を考えるなら、バンコクの補習校、シドニーの補習校、ロンドンの補習校 の開講曜日と通学距離もあわせてご覧ください。

