「帰国子女 編入 中学」と検索する保護者の方が知りたいのは、たいてい次の4つです。公立中学にはどうやって入るのか/何年生に入ることになるのか/私立中学に途中から入れるのか/入ったあと授業についていけるのか。結論から言うと、公立中学校は試験ではなく「手続き」で入ります。いっぽう私立中学校は、欠員が出た学校だけが学期末ごとに募集するため、入れるかどうかはタイミング次第です。そして――ここがいちばん見落とされるのですが――学校ごとに条件がまるで違い、「帰国後○年以内が一般的」という共通の基準は存在しません。この記事では、文部科学省と東京都、各校が公表している要項だけを使って、中学の編入を整理します。
先に用語――中学校は行政上「転学」、「編入学」は高校の言葉
検索では「編入」が使われますが、行政の定義では少しずれがあります。東京都は転・編入試験の公表資料の中で、「転 学…中学校、高等学校に在籍しており、空白期間がなく、引き続き他の学校の相当学年に移る場合。/編入学…高等学校に入学後、一度退学した後に改めて入学する場合等。」と定義しています(令和8年2月17日発表)。いっぽう文部科学省は、海外から帰国した子どもが小・中学校に入ることを一貫して「編入学」と呼んでいます。つまりどちらが誤りというわけではなく、場面によって使い分けられているのが実態です。この記事では検索で使われている「編入」を主に使い、学校の要項を引用するときはその学校の言葉に合わせます。

公立中学校――試験ではなく「手続き」で入る
文部科学省は就学事務のQ&Aで、次のように説明しています。「日本国民である学齢児童生徒が帰国した場合、その時点からその保護者には就学義務がかかることとなり、住所地の教育委員会は住民基本台帳に基づいて学齢簿を編製し、保護者に対して就学すべき学校の指定・編入学期日を通知することとなります。」(学校教育法第17条)。つまり帰国して住民登録をした時点で、教育委員会の側から「どの学校に、いつから」が通知される仕組みです。
実際の流れは自治体のページがいちばん具体的です。新宿区は「区役所本庁舎・特別出張所において新宿区への転入手続きを行った保護者の方に、『入学通知書』を発行します。/指定校に入学通知書を提出し、(日本人学校・補習授業校に通学していた場合は、『在学証明書』『教科用図書給与証明書』が発行されますので、併せて提出してください。)」としています(最終更新2025年4月1日)。江東区も「住民票の登録(入国)手続き時に、学齢のお子さまがいる場合には、通学区域により指定する学校への転入学通知書が交付されます」と同じ流れを示したうえで、「中学校新1年生…以外の学年で江東区へ転入してきた方については、学校選択の対象となりませんので、住民登録地の通学区域の学校(=指定校)への転入学となります」と明記しています(更新2026年1月30日)。学年途中の転入では学校選択制の対象外になり、住所で行き先が決まるという点は、住まいを決める前に知っておきたいところです。
なお、これらの一次情報のどこにも学力試験や選抜の規定はありません。ただし「試験は行われません」と明記した公的文書があるわけでもないので、この記事では「試験ではなく手続きとして規定されている」という書き方にとどめます。また新宿区は「通学期間が短い場合や、学校の運営状況によっては受け入れができない場合があります。事前に学校運営課にご相談ください」とも書いています。短期の一時帰国は体験入学の枠組みとは別物なので、混同しないようにしてください。手続きの実務全般は帰国後の編入・転入手続きの流れにまとめています。

何年生に入るのか――原則は年齢相当学年、例外もある
文部科学省は「外国から帰国した学齢児童生徒の小・中学校への編入学に当たっては、原則として、その年齢に応じ、小学校、中学校又は義務教育学校の相当学年に編入学することになります」としています。原則は年齢相当学年です。そのうえで例外も認めています。
ひとつめは一時的な下学年編入。「帰国児童生徒の日本語能力等の事情により、直ちに相当学年の教育を受けることが適切でないと認められるときは、学校の生活に適応するまで、一時的に下級の学年に編入する措置をとることも可能です」としつつ、「この場合、指導要録上は学齢相当学年に編入したものとしておく必要があります」と定めています。ふたつめは、「日本語能力等が著しく欠如しているなどの特別な理由がある場合には、保護者や本人の意向を確認の上、指導要録上も年齢相当学年より下級の学年に編入させ…下級の学年で教育を受け続けることも可能です」という恒久的な下学年編入です。
よく「学校教育法施行規則の第○条で下学年編入が認められている」と書かれていますが、この扱いに施行規則の根拠条文はありません。文科省が挙げている根拠は学校教育法第17条・第18条と、昭和29年・昭和49年の行政実例です。学年の期間そのものは学校教育法施行規則第59条(第79条で中学校に準用)が「小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる」と定めています。学年の決まり方をさらに詳しく知りたい方は、小学校段階の実務を書いた帰国子女の小学校編入もあわせてどうぞ。
私立中学校――「欠員が出たときだけ」の募集
私立は仕組みがまったく違います。東京都は「生活文化局私学部では、各学校の欠員状況に応じて、学期末ごとに実施される、都内私立中学校及び高等学校の転・編入試験について、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の調査に基づき、とりまとめ、公表しております」としており、令和7年度第3学期末に転・編入試験を行うのは中学校69校(令和8年1月23日現在)でした。前年の令和6年度第3学期末は80校で、実施校数は年によって動きます。「毎年○校ある」と覚えるのではなく、受けたい時期の一覧を都の公表資料で確認するのが正しい使い方です。
この一覧には応募資格の記号があり、「①=転勤・転居、②=海外帰国、③=条件なし」と凡例が示されています。令和7年度第3学期末の中学校一覧で②海外帰国の資格を設けていたのは、海城・神田女学園・田園調布学園中等部・サレジアン国際学園世田谷・順天・淑徳・大妻多摩・啓明学園など。募集人員はほぼ全校が「若干」で、具体的な数を示していたのは桐朋女子(5/5)だけでした。対象学年は第3学期末実施のため中2・中3相当のみです。
試験科目も一様ではありません。国語・数学・英語がもっとも多いのは事実ですが、海外帰国の枠に限ると作文だけ・英語だけ・小論文だけという学校が並びます。神田女学園は②は「国・英」、③は「国・数・英」と同じ学校のなかで資格別に科目を変えており、佼成学園は①が「国・数・英」、②が「作文」。啓明学園は「(国・数・英)又は〔英・作文(日本語・英語)〕又は〔作文(日本語・外国語)〕」から選べます。面接は一覧の全校で「有」でした。
| 学校 | 対象・時期 | 応募資格(海外・帰国後) | 試験科目 |
|---|---|---|---|
| 市川(千葉・私立) | 年2回。9月入学=中1〜高1/4月入学=新中2・新中3 | 帰国生対象 | 筆記=英語のみ(Reading・Writing/英検準1級程度)+日本語の面接 |
| 広尾学園 | 7月試験・9月編入 | 海外在住1年以上/帰国後1年以内 | ―(英検2級以上が条件のコースあり) |
| 広尾学園小石川 | 編入=7月試験・9月編入/別に帰国生入試あり | 編入=帰国後1年以内/入試=帰国後3年以内 | ― |
| 東京学芸大学附属国際(国立) | 9月編入。第1〜3学年それぞれ数名 | 2025年6月1日以降に帰国・来日(予定含む)/海外の教育機関に連続1年と1日以上 | 外国語作文(英仏独西中韓から選択)・基礎日本語作文・面接/検定料5,000円 |
| 山脇学園 | 2026年度は高1のみ・中学の募集なし/出願は随時 | 海外在住1年以上ほか/帰国後に国内の高校に在籍がないこと | 学科(英・数・国)+作文(日本語)+日本語の面接/受験料25,000円 |
表でとくに見ていただきたいのが広尾学園小石川です。同じ学校のなかで編入は「帰国後1年以内」、帰国生入試は「帰国後3年以内」と条件が分かれています。「帰国枠の中学受験」と「編入」は別の入口だということが、ここにはっきり表れています。受験のほうの仕組みは帰国子女の中学受験、海外にいるまま受ける場合は海外から日本の中学受験、制度全体は帰国子女枠とはをご覧ください。
入ったあと――日本語指導は制度としてあるが、時間には上限がある
編入できたら終わり、ではありません。公立中学校には「特別の教育課程」による日本語指導という制度があります。平成26年1月14日公布・同年4月1日施行で、文科省は「国際化の進展等に伴い、我が国の義務教育諸学校において帰国・外国人児童生徒等に対する日本語指導の需要が高まっていることを踏まえ…在籍学級以外の教室で行われる指導について特別の教育課程を編成・実施することができるよう制度を整備するものです」と説明しています(学校教育法施行規則第56条の2、第79条で中学校に準用)。対象は「海外から帰国した児童生徒や外国人児童生徒…のうち、学校生活を送るとともに教科等の学習活動に取り組むために必要な日本語の能力が十分でないもの」です。
ただし、この制度には現実的な限界もあります。「日本語の能力に応じた特別の指導に係る授業時数は、年間10単位時間から280単位時間までを標準とすること」とされており、下は年10時間からです。さらに「日本語指導の対象とすることが適当な児童生徒の判断は学校長の責任の下で行う」とされているため、受けられるかどうかも、どれだけ受けられるかも、学校によって変わります。そしてこの制度が扱うのは「日本語」であって、教科としての「国語」の遅れを埋めるものではありません。会話に不自由がなく見える帰国生ほど対象になりにくく、しかし教科の国語ではつまずく――という帰国子女が国語を苦手にする理由で書いたずれが、ここで起きます。

3年後の高校受験を、編入の時点から見ておく
中学で編入した子は、そのまま日本の高校受験に進みます。東京都の令和8年度 海外帰国生徒等入学者選抜実施要綱は、海外帰国生徒対象の選抜を実施する都立高校を三田高校・竹早高校・日野台高校・国際高校としており、検査は「国語(作文を含む。)、数学及び外国語(英語)の3教科並びに面接とし、各教科の満点は100点とする」と定めています。応募資格は在外年数に応じて2年以上3年未満なら帰国後1年以内、3年以上4年未満なら2年以内、4年以上なら3年以内と段階的です。
提出書類の規定も見ておく価値があります。要綱は「海外における最終学校の成績証明書又はこれに代わるもの…なお、中学校に在学している者又は既に卒業した者及び日本人学校卒業(見込み)者は調査書(様式10又は10-2)を提出する」としています。つまり日本の中学校に編入した子は、現地校の成績ではなく日本の中学の調査書で見られることになります。ここで「編入した帰国生は内申が有利/不利」と書きたくなるところですが、要綱は選考について「当該都立高校長が定める」としているだけで、調査書点の具体的な扱いは公表されていません。公的に確認できないことは、この記事では書きません。高校段階の受け方全体は帰国子女の高校受験にまとめています。
なお、学期の区切りは全国一律ではありません。学校教育法施行令第29条は学期や休業日を市町村または都道府県の教育委員会が定めるとしています。たとえば世田谷区の令和8年度は中学校の1学期が4月1日〜8月31日、2学期が9月1日〜12月31日、3学期が1月1日〜3月31日(始業式4月6日、卒業式3月19日)。「何月に帰国するのが有利」という公的な根拠はありませんので、帰任の時期は仕事の事情で決めていただいて構いません。
編入できるかどうかより、入ったあとの国語で差がつく
ここまで見てきたとおり、公立中学校への編入は、手続きとしてはむしろシンプルです。私立は欠員次第ですが、これも要項を追えば見通しは立ちます。難しいのはその先で、教室に入った初日から、日本の同級生と同じ教科書・同じ進度の授業が始まることです。中学の国語は語彙と漢字の量が一段上がり、説明的文章の記述量も増えます。海外にいる間に空いた分は、日本語指導の制度では埋まりません。
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よくある質問
帰国したら、公立中学にはすぐ入れますか?
文部科学省は「日本国民である学齢児童生徒が帰国した場合、その時点からその保護者には就学義務がかかることとなり、住所地の教育委員会は…保護者に対して就学すべき学校の指定・編入学期日を通知する」としています。住民登録の手続きの際に転入学通知書(入学通知書)が交付され、それを指定校に提出するのが基本の流れです。日本人学校や補習授業校に通っていた場合は在学証明書・教科用図書給与証明書もあわせて提出します(新宿区)。ただし新宿区は「通学期間が短い場合や、学校の運営状況によっては受け入れができない場合があります」とも書いていますので、事前に自治体へ相談してください。
中学編入は、帰国後何年以内という決まりがありますか?
共通の基準はありません。公立中学校には帰国後の年数の規定そのものがなく、就学義務にもとづいて手続きします。私立は学校ごとで、たとえば広尾学園と広尾学園小石川の編入は「帰国後1年以内」、いっぽう広尾学園小石川の帰国生入試は「帰国後3年以内」。東京学芸大学附属国際は年数ではなく「2025年6月1日以降に帰国または来日」という特定日で区切っています。「○年以内が一般的」という一般化は成り立たないので、必ず各校の要項をご確認ください。
私立中学に途中から入れる学校はどれくらいありますか?
東京都が学期末ごとに公表しています。令和7年度第3学期末に転・編入試験を行う都内私立中学校は69校(令和8年1月23日現在)でした。前年の令和6年度第3学期末は80校で、年によって増減します。募集人員はほぼ全校が「若干」。応募資格は①転勤・転居/②海外帰国/③条件なしの記号で示され、海外帰国を対象とする学校は一部です。願書締切が「随時」の学校については「応募状況により募集を終了する場合がある」とされています。
編入試験の科目は国語・数学・英語ですか?
一覧全体では国・数・英がもっとも多いのは事実ですが、海外帰国の枠に限ると科目はばらばらです。市川は筆記が英語のみ(英検準1級程度)+日本語の面接、佼成学園は海外帰国枠が作文、田園調布雙葉は小論文、東京学芸大学附属国際は外国語作文+基礎日本語作文+面接。神田女学園のように同じ学校で資格別に科目が違うケースもあります。面接は令和7年度の一覧では全校で「有」でした。
日本語や国語についていけない場合、学校で支援を受けられますか?
公立中学校には「特別の教育課程」による日本語指導があります(平成26年4月1日施行、学校教育法施行規則第56条の2・第79条)。対象は「海外から帰国した児童生徒…のうち、学校生活を送るとともに教科等の学習活動に取り組むために必要な日本語の能力が十分でないもの」。ただし授業時数は「年間10単位時間から280単位時間までを標準」で幅が大きく、対象とするかどうかの判断は校長に委ねられています。この制度が扱うのは「日本語」であって、教科としての国語の遅れを埋めるものではない点にも注意が必要です。国語そのものの立て直し方は帰国子女の国語と帰国子女の漢字をご覧ください。
下の学年に入れてもらうことはできますか?
できる場合があります。文科省は原則は年齢相当学年としたうえで、「帰国児童生徒の日本語能力等の事情により、直ちに相当学年の教育を受けることが適切でないと認められるときは、学校の生活に適応するまで、一時的に下級の学年に編入する措置をとることも可能です」としています。この場合「指導要録上は学齢相当学年に編入したものとしておく必要があります」。さらに「日本語能力等が著しく欠如しているなどの特別な理由がある場合」は、保護者・本人の意向を確認のうえ指導要録上も下級学年とすることも可能とされています。実際の判断は学校・教育委員会との相談になります。帰国後の授業についていけるかが不安な方は帰国後、国語だけついていけない…を防ぐもどうぞ。
編入できるかどうかより、入ったあとの国語で差がつきます。
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