「子どもの日本語をどうにかしたい」と検索窓に打ち込んで、「帰国子女 日本語学校」という言葉にたどり着いた。けれど出てくるのは留学生向けの学校ばかりで、うちの子の話ではない気がする――その違和感は正しいものです。日本語で「日本語学校」と言うとき、制度上の意味と、保護者が探しているものは別のものを指しています。この記事では、まず言葉のねじれをほどき、次に「あなたが探しているのはどの場所か」を判定し、それぞれの実体と費用のかたちを並べます。学校選びそのものではなく、入り口の地図の話です。
制度でいう「日本語学校」は、外国人のための機関を指す
2024年(令和6年)4月1日、「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」(日本語教育機関認定法)が施行されました。文部科学省の説明によれば、この法律は日本語を学ぼうとする外国人が適正な日本語教育を受けられるよう、機関と教員に一定の水準を設けるものです。これにもとづき、文部科学大臣が日本語教育機関を認定する「認定日本語教育機関」の制度が始まりました。
もうひとつ、以前からある枠組みが「告示校」です。出入国在留管理庁の案内では、在留資格「留学」で日本語教育機関に通うには、法務省が告示をもって定める日本語教育機関、または認定日本語教育機関に入学する必要があるとされています。在籍期間は通常、最長2年間とも記載されています。つまりこちらは、海外から留学ビザで来る人のための入り口として設計された仕組みです。
制度の中身を見ると、性格がもっとはっきりします。認定日本語教育機関が置ける課程は「留学のための課程」「就労のための課程」「生活のための課程」の3区分で、文部科学省が公表している認定結果(令和7年度2回目・令和8年4月30日認定)では、認定された32機関の課程分野はすべて「留学」でした(就労0、生活0)。公式に確認できるのはここまでです。「子ども向けの課程は制度上ない」と言い切ることはできませんが、少なくとも日本の小中学校の国語を学齢相当で積む場として設計された枠ではありません。

保護者が「日本語学校」と呼んでいる場所は、実は4種類ある
「日本語学校を探しています」という一言の中身は、だいたい次の4つに分かれます。呼び名は同じでも、対象も教える内容も費用の形も違います。
①海外の補習授業校。文部科学省は在外教育施設を「海外に在留する日本人の子供のために、学校教育法に規定する学校における教育に準じた教育を実施することを主たる目的として海外に設置された教育施設」と定義し、そのうち補習授業校を、現地の学校やインターナショナルスクール等に通う日本人の子どもに対し、土曜日や放課後などを利用して国内の小学校または中学校の一部の教科を日本語で授業する施設としています。2026年8月時点で51か国・1地域に246校。海外にいる方が「日本語学校」と呼んでいる対象は、多くの場合これです。全体像と費用は補習授業校のしくみと費用に、全日制との線引きは日本人学校と補習校の違いにまとめています。

②日本国内の日本語教室・学校での日本語指導。帰国後の受け皿として名前が挙がるのがこちらです。文化庁は「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業を行っており、公式の説明では対象は「生活者としての外国人」、空白地域とは日本語教室が開設されていない地域を指すとされています。子ども向けのクラスがあるかどうかは自治体や運営団体ごとに違い、公式資料から一律には断定できません。学校の中で受けられる日本語指導は公立学校で受けられる支援とその限界で扱っています。
③継承語教室。現地の日本人コミュニティや保護者会が運営する、日本にルーツのある子ども向けの教室です。制度上の位置づけは地域ごとにばらばらで、日本の学習指導要領に沿うとは限りません。会話は続くのに読み書きが伸びない悩みが起きやすいのもこの層で、引き上げ方は継承語を学齢相当に育てる方法に書きました。
④オンラインの日本語スクール。住む場所に関係なく受けられる形です。中身は幅広く、会話中心のものから日本の教科書に沿って国語を進めるものまであります。選び方は海外の子どもの日本語の続け方まとめで整理しています。
あなたが探しているのはどれか。3つの質問で決まる
質問1|いま、お子さんはどこに住んでいますか。海外なら候補は①③④、日本国内なら②④が中心になります。①の補習授業校は海外に設置された施設なので、帰国後に「近所の補習校を探す」という発想は成り立ちません。住んでいる場所だけで、選択肢は半分に絞れます。
質問2|必要なのは「日本語」ですか、「国語」ですか。ここが最大の分かれ道です。日本語を母語としない人が日本で生活・進学するための日本語(制度上の日本語学校が扱う領域)と、日本の小中学校で学年ごとに積み上がる国語は、別の科目だと考えてください。帰国後の授業や帰国枠の受験に必要なのは、ほとんどの場合は後者の国語です。日常会話に不自由がないお子さんほど、この取り違えが起きます。
質問3|物理的に通えますか。補習授業校は土曜日や放課後の開講が中心で、都市によっては片道1時間以上、定員や待機の問題もあります。通えるなら強力な選択肢ですが、「通えるかどうか」は最後ではなく最初に確かめるほうが遠回りになりません。

| 日本語学校(認定・告示の日本語教育機関) | 海外の補習授業校 | 国内の日本語教室・学校の日本語指導 | オンラインの日本語スクール | |
|---|---|---|---|---|
| 主な対象 | 日本語を学ぶ外国人。留学の在留資格で通う人が中心 | 現地校やインター等に通う、海外在留の日本人の子ども | 日本で暮らす外国人。学校の指導は日本語の支援が必要な児童生徒 | 運営者により異なる(海外在住の子ども向けが多い) |
| 教える内容 | 留学・就労・生活のための日本語(課程は3区分) | 国内の小学校・中学校の一部の教科を日本語で | 生活・学校生活に必要な日本語が中心 | 会話中心から教科書準拠の国語まで幅がある |
| 通う場所と時間 | 日本国内の機関に平日通学。在籍は通常最長2年間 | 海外の設置校へ土曜日や放課後に通学 | 地域の教室、または在籍校の中での指導 | 自宅から。時間帯は運営者と時差による |
| 費用のかたち | 入学金・授業料など機関ごとの学費 | 入学金・年会費・授業料など学校ごと | 無償や実費のものから有償までさまざま | 月額や回数制の受講料 |
| おもな出どころ | 文部科学省(認定制度)/出入国在留管理庁(告示) | 文部科学省の在外教育施設の区分 | 文化庁の施策、各自治体・在籍校 | 各運営者の公表情報 |
表を横に読むと分かるのは、4つの選択肢は競合しているのではなく、そもそも守備範囲が違うということです。「どれが一番いいか」ではなく「うちの子はどの列の話なのか」を先に決める。それが遠回りを減らします。
費用は「形」が違うので、単純な比較ができない
金額を並べる前に、費用の単位が違うことを押さえてください。補習授業校は入学金・年会費・授業料という構成で、学校ごとに幅があります。地域の日本語教室には無償や実費程度のものもあります。オンラインは月額や回数制。同じ「月いくら」に換算しても、含まれる時間数と内容が違うので、数字だけの比較は成立しません。相場感は補習校・塾・オンラインの費用相場にまとめました。
もうひとつ、金額に表れないコストがあります。送迎の時間、土曜日がまるごと消えること、宿題の量、続かなかったときの家族の消耗です。費用よりもここで折れるご家庭のほうが多い、というのが正直な実感です。組み替え方は代わりを選ぶ6つのチェックポイントを参考にしてください。

名前ではなく「何を教わるか」で選ぶ
ここまでを一文にすると、こうなります。「日本語学校」という看板を探すのをやめて、「学年相当の国語を、誰と、どのくらいの頻度で積むか」を探す。制度の名前は中身を保証してくれませんし、名前が違っても中身が合っていれば目的は達せられます。受験まで視野に入れるなら役割分担も要ります。塾のタイプ別の違いはオンライン塾の5タイプ比較に、国語をオンラインで積む場合の見分け方は家庭教師・補習校との違いに書きました。
正直に申し上げると、ともだちじゃぱんは制度上の日本語学校ではありません。留学ビザの発行も、日本語教育機関としての認定もしていません。私たちがやっているのは、海外で育つ子どもが学年相当の日本語を、日本の同世代と一緒に続けることです。母体は国内最大級のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」を運営する株式会社NIJIN。講師は採用合格率およそ2%の選抜を通った、今の日本の教室を知る現役水準の教員です。8人の少人数クラスに担任がつき、そこには日本に住む同世代の仲間がいます。9歳前後で会話と読み書きの差が開き始める、学年と実力のずれにも、担任がいるから気づけます。料金は通い放題で月額定額。「勉強だから」ではなく「友達と話したいから」続く設計にしているのは、続くかどうかを最後に決めるのが動機だからです。
よくある質問
帰国子女の子どもを「日本語学校」に入れることはできますか?
制度上の日本語学校、つまり認定日本語教育機関や告示校は、日本語を学ぶ外国人のための機関として設計されています。文部科学省が示す課程は「留学」「就労」「生活」の3区分で、令和7年度2回目の認定結果では認定32機関すべてが「留学」でした。子どもの受け入れ可否は機関ごとの判断なので一律には言えませんが、日本の小中学校の国語を学年相当で積む場としては設計されていません。補習授業校・国内の日本語指導・オンラインのどれが目的に合うかを先に確かめるほうが早道です。
「認定日本語教育機関」と「告示校」は何が違いますか?
認めているところが違います。認定日本語教育機関は、2024年(令和6年)4月1日に施行された日本語教育機関認定法にもとづき、文部科学大臣が教育の質を審査して認定するものです。告示校は法務省が告示をもって定める日本語教育機関で、出入国在留管理庁の案内では、在留資格「留学」で日本語教育機関に通うにはこのどちらかに入学する必要があるとされています。いまは新制度への移行期にあたるため、両方の名称が並んで使われています。最新の一覧は文部科学省と出入国在留管理庁の公式ページでご確認ください。
海外にいます。近くに補習授業校がない場合はどうすればいいですか?
補習授業校は2026年8月時点で世界51か国・1地域に246校ですが、設置は都市に偏っており、近くにない・定員で入れない・距離が遠すぎるという地域のほうが多いのが実情です。その場合は継承語教室、オンライン、家庭学習の組み合わせで学年相当を維持する形になります。どの都市に何があるかは日本人学校の一覧もご覧ください。大事なのは頻度で、週1回でも切らさないほうが、まとめて詰め込むより負担は軽くなります。
帰国後、学校で受けられる日本語指導だけで足りますか?
お子さんの状態と自治体の体制によります。学校の日本語指導は、まず学校生活を送るための日本語に重点が置かれることが多く、教科の学習に必要な語彙や、記述で書ききる力までを担うとは限りません。会話に不自由がないお子さんは、そもそも支援の対象になりにくいこともあります。範囲と限界は帰国子女の日本語指導で整理しました。どこまで受けられるかは転入先の学校と教育委員会にご確認ください。
継承語教室とオンラインの日本語スクールは、どう使い分けますか?
目的で分けるのが分かりやすいです。継承語教室は、現地の日本語コミュニティとのつながりや、日本語を好きでい続けることに強みがあります。一方、日本の学年に沿って読み書きを積み上げたい、帰国後の授業や受験を見据えたい場合は、学齢相当のカリキュラムを持つオンラインのほうが設計しやすくなります。併用しているご家庭も珍しくありません。目的別の選び方を先に決めてから、通える形を探す順番をおすすめします。

