「英語には不自由していない。家では日本語も話す。それなのに、日本の高校の現代文の問題を見せた瞬間、手が止まった」――「帰国子女 日本語できない 高校」で検索してこのページに来た方の多くは、高校生の年齢で日本に帰るお子さんの保護者だと思います。小中で帰る場合と何が違うのか。結論から言うと、①支援制度が薄い ②評定と単位がそのまま進路に響く ③やり直す時間が3年しかない――この3点です。文部科学省の最新調査と法令で確認できる範囲だけを使って整理します。
高校の「日本語ができない」は、小中とは別の問題になる
まず言葉を定義します。文部科学省の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」は、対象を「日本語で日常会話が十分にできない児童生徒」または「日常会話ができても学年相当の学習言語が不足し、学習活動への参加に支障が生じている児童生徒」としています。帰国生の多くは後半です。友達とはすぐ打ち解ける。それでも評論文が読めず、記述が書けない。会話ができることは、この問題が無いことの証明にはなりません。
この状態は珍しくありません。令和8年5月に公表された令和7年度調査(令和7年5月1日現在)では、公立学校で日本語指導が必要な児童生徒は84,759人。うち日本国籍が11,446人で、その子たちが使う言語は日本語が27.7%、次いで英語が18.4%です。日本語を使いながら学習言語が足りない子が、統計にも表れています。
そして高校段階の数字は厳しい。同じ調査で、日本語指導が必要な高校生等の大学等への進学率は41.2%(全高校生等は75.0%)、進学も就職もしていない者は13.0%(同6.8%)でした。外国籍を多く含む数字で帰国生だけの実態ではありませんが、学習言語が足りないまま高校3年間を走ると、しわ寄せがどこに出るかの目安にはなります。「できない」の中身を層に分ける話は帰国子女の国語「できない」を4つの層に分けるにまとめています。

違い① 制度はできた。ただし実施しているのは103校
小学校・中学校では平成26年度から「特別の教育課程」による日本語指導が動いています(公立で受けられる日本語支援とその限界)。高等学校に同じ仕組みが入ったのは令和5年度(2023年4月)からで、9年遅れです。制度そのものは新しく、しかも「置いてよい」であって「置かねばならない」ではありません。
実際どれだけ使われているか。令和7年度調査によると、特別な配慮に基づく指導を受けている生徒のうち「特別の教育課程」による日本語指導を受けているのは、義務教育段階では52,725人(76.4%)。これに対して高等学校段階は947人(15.6%)、実施校は103校(13.1%)にとどまります。前回(令和5年度)の245人・46校からは倍増しましたが、水準はまるで違います。
- やるかどうかは学校と設置者の判断。「高校でも制度がある」ことと「入学した高校で受けられる」ことは別です。出願前に志望校へ直接聞くのが最初の一手になります。
- 実施校の全国一覧は見当たりません。2026年8月時点で、実施校103校を学校名で示した公表資料は確認できませんでした。個別に問い合わせるしかありません。
- 受けられても、必修は減りません。日本語指導で修得した単位は21単位を超えない範囲で卒業単位に加えられますが、必履修教科・科目、総合的な探究の時間、特別活動を日本語指導に替えることはできません。免除ではなく上乗せです。
- 校外を最初から設計に入れる。校内支援を当てにしきらず、外で学習言語を補う前提で計画したほうが安全です。
では、どの学校に籍を置くのが現実的か。選択肢は大きく4つあります。優劣ではなく、何を優先するかで答えが変わるので、下の表で条件を並べます。

| 日本の全日制(帰国枠あり) | 日本の全日制(一般枠) | 通信制・単位制 | インター・IB校 | |
|---|---|---|---|---|
| 日本語の負荷 | 入学時は配慮されても、授業と考査は日本語。古文・漢文も必修 | 最も高い。入試も授業も同じ土俵 | 同じ日本語だが、進む速さを本人に合わせやすい | 授業言語は英語等が中心。日本語は選択科目の範囲 |
| 日本語支援の有無 | 帰国生を継続受入する学校は取り出しや補習を置く例がある。要確認 | 「特別の教育課程」を実施しているのは全国103校(令和7年度) | 個別指導やレポート添削で補える学校がある | 日本語支援ではなく、外国語としての日本語や継承語の枠 |
| 単位と評定の扱い | 74単位以上・3年在学が必要。評定は他生徒と同じ基準 | 同じ。科目の未修得や欠課が進級・卒業に直結 | 単位制なら未修得科目を次年度以降に積み直しやすい | 一条校でない学校は日本の高校卒業資格にはならない |
| 大学進学の道筋 | 帰国生入試・一般選抜・学校推薦型選抜のいずれも視野に入る | 同じだが、評定が伸びないと推薦系は使いにくい | 一般選抜・総合型が中心。調査書の作られ方は学校に確認を | IB資格や国際的評価団体認定校の12年課程修了で大学入学資格が認められる |
| 向いている状況 | 日本の進路に戻す前提で、帰国が高1〜高2前半 | 日本語の土台がすでにあり、内申・評定で勝負できる | 単位の立て直しや通学負担の軽減を優先したい | 英語で積み上げた学びを切らしたくない |
違い② 日本語は「国語だけ」の問題ではない
保護者からいちばんよく聞くのが「国語だけ苦手なんです」という言葉です。ところが高校では、日本語の弱さはほぼ全教科に染み出します。現代文では「抽象/具体」「相対化」「二項対立」といった評論用語が説明なしで前提になります。古文・漢文は、日本で育った生徒にとっても初見の言語ですが、帰国生はそこに現代日本語の負荷が上乗せされる。文語文法の説明そのものが読めない、という二重の壁になります。
日本史・地理では、資料や史料原文を読んで答える設問が主流で、知識ではなく読解速度で点が落ちます。理科・数学も同じで、計算力があっても文章題の条件が拾えない、記述が採点者の期待とずれる、という形で失点する。つまり「国語だけ補習」では足りず、読んで書く日本語そのものを鍛え直すしかありません。漢字の積み残しがどこから効くかは帰国子女の漢字で扱っています。
そして高校では、これが数字になって残ります。卒業要件は74単位以上の修得と3年以上の在学。各科目の評定は調査書に記録され、学校推薦型選抜では調査書が出願書類として必ず使われ、多くの大学が評定平均値の基準を出願要件に置いています(基準は大学・学部で異なるため要項の確認が必要です)。指定校推薦にいたっては校内選考が評定順になるのが一般的です。高1の1学期の評定が、3年後の選択肢を静かに削る――これが小中との決定的な差です。大学受験でどう効くかは帰国子女は大学受験で有利かと帰国子女の大学受験でつまずく型にまとめました。
違い③ 3年しかない。だから順番を決める
小学校で帰るなら、追いつくのに数年かけられます。高校はそうはいきません。入学から卒業まで3年、大学受験の準備はその途中から始まる。「まず日本語を1年やってから受験勉強」という順番が、そもそも取れないのが高校段階です。だから最初にやるべきは学習ではなく設計――どの入口から入り、どの出口を狙うかを先に決めることです。
入口は主に2つ。学年の途中から入る高校編入(都内の実施校と考査は都立高校の転学・編入学、大阪は府立の転入学考査)と、4月入学で入り直す高校受験の帰国枠(東京)・関西の帰国枠です。編入は募集の時期・回数が限られ、応募資格も募集ごとに定められています。枠と情報量では受験のほうが多いのが率直なところです。内申の扱いは帰国子女と内申点で整理しました。出口の側では、大学の帰国生入試に「海外の高校に最終学年を含め2年以上」といった在籍年数の条件を置く例があり、早く日本に戻すほど出願資格を失う可能性があるという逆向きの力も働きます(帰国時期と出願資格)。
最後に一点だけ。教室で手を挙げられない、雑談の輪に入れない、クラスが笑ったタイミングだけ分からない――高校生はこの負荷を保護者に言いません。発言が減れば「積極性」の評価にも響きます。話し方の話は別稿に譲りますが、教科の遅れと孤立は同じ根から出ていることが多いとだけ書いておきます。

私たちが担わないこと、担うこと
先に正直に書きます。ともだちじゃぱんは、定期考査の対策塾でも大学受験の予備校でもありません。志望校別の小論文添削や英語資格対策は帰国生を長く見てきた塾・予備校の領域ですし、編入の書類作成や学校交渉も私たちの仕事ではありません。高校段階でそれらが必要なら、専門のところに任せるのが確実です。
私たちが担うのはその手前――学年相当の国語/日本語、つまり「読んで、考えて、書く」土台です。運営母体は国内最大級のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」を運営する株式会社NIJIN。講師は採用合格率およそ2%の選抜を通った今の日本の教室を知る現役水準の教員で、8人の少人数クラスには日本に住む同世代の仲間がいます。続かない理由はたいてい「勉強だから」ですが、話したい相手がいる場所なら続きます。料金は通い放題で月額定額です。海外にいる間の選び方は帰国子女の国語をオンラインで学ぶときの選び方もあわせてどうぞ。
まずは今の学年とのギャップを確認したい方へ。1分でできる学年相当・国語力チェック(無料)で、お子さんの「学年の穴」の目安がわかります。海外での国語・日本語の続け方は海外駐在×子どもの国語・日本語 完全ガイドにまとめています。

よくある質問
会話はふつうにできます。それでも「日本語ができない」に当たりますか?
当たり得ます。文部科学省の調査は対象を「日本語で日常会話が十分にできない児童生徒」だけでなく、「日常会話ができても学年相当の学習言語が不足し、学習活動への参加に支障が生じている児童生徒」も含むと定義しています。会話が流暢でも、評論文が読めない・記述が書けない状態は後半にあてはまります。会話ができることを理由に相談をためらう必要はありません。まず担任と学年主任に現状を具体的に伝えてください。
高校でも「取り出し」の日本語指導は受けられますか?
制度上は可能です。高等学校でも令和5年度から「特別の教育課程」による日本語指導ができるようになりました。ただし令和7年度調査で実際に実施していたのは103校(該当校の13.1%)・947人で、義務教育段階の76.4%とは水準が違います。実施校の全国一覧は確認できませんでした。志望校に「日本語指導が必要な生徒への特別の教育課程を編成していますか」と直接聞くのが唯一確実な方法です。
日本語指導の時間は、卒業に必要な74単位に入りますか?
入ります。特別の教育課程による日本語指導で修得した単位は、21単位を超えない範囲で、その学校が定めた全課程の修了に必要な単位数に加えることができます。ただし必履修教科・科目、総合的な探究の時間、特別活動を日本語指導に替えることはできません。日本語指導は必修を免除する仕組みではなく、必修の上に乗る支援です。卒業要件(74単位以上・3年以上の在学)は帰国生でも変わりません。
日本語が不安なら、通信制や単位制のほうがいいでしょうか?
選択肢としては十分に成立します。修業年限は全日制が3年、定時制・通信制は3年以上で、時間の使い方に幅を持たせやすい設計です。単位制なら、修得できなかった科目を次年度以降に積み直す組み方も取りやすい。一方で、レポートを日本語で書き切る負荷は小さくなく、通学が減るぶん日本語で話す機会も減ります。「単位を守れるか」と「日本語に触れる量を確保できるか」を別々に検討してください。
海外の高校で取った単位は、日本の高校に持ち込めますか?
ケースによります。日本の高校に在籍したまま海外に留学した場合は、学校教育法施行規則にもとづき、外国の高校での履修を自校の履修とみなして36単位を超えない範囲で単位修得を認定できる仕組みがあります(学校外での他の学修と合わせた上限です)。一方、海外の学校から編入・転入する場合、既修得単位をどこまで読み替えるかは学校ごとの判断です。相当学年の決定も含め、募集要項と個別相談で確認するしかありません。手続き全般は帰国子女の高校編入にまとめています。
帰国後にどの高校を受けられるかは、海外で通っていた学校の種別にも左右されます。一条校とは|インターとの違いを先に読んでおくと、出願条件の読み方が変わります。

