「そろそろ志望校の過去問をやらせよう」と思って探し始めたのに、どこにも見当たらない。現地に日本の書店はなく、通販は届くまでに時間がかかり、学校のサイトを開いても入試問題らしきものが出てこない。そうして「帰国子女 中学受験 過去問」と検索した先で「帰国生入試の過去問は非公開」という記述に行き当たり、手が止まる。海外にお住まいのご家庭から、この順番でのご相談をよくいただきます。結論から書くと、非公開だから手に入らない、というのは正しくありません。公式サイトで丸ごと公開している学校が実在します。本当の問題は別のところに二つあって、探す順番を間違えていることと、手に入った過去問が完全とは限らないことです。この記事はその二つを、2026年8月時点で学校と出版社の公式が公表している記載だけを使って整理します。条件・日程・選考型の全体像は中学受験の条件と選考型の整理が担当です。
「帰国生入試だから非公開」ではありません
海城中学高等学校は、公式サイトで入試問題をダウンロード公開しています。区分は「一般①」「一般②」「帰国生」の三つに分かれており、帰国生の科目は国語・算数・英語(一般は国語・算数・社会・理科)。ページには「2018年~2025年に実施した入試問題(問題用紙・解答用紙・解答例)がダウンロードできます」と記載があり、実際には2026年に実施した回も並んでいます。問題用紙だけでなく解答用紙と解答例まで揃っているのは、家庭で解かせて丸を付ける立場からすると相当に大きい違いです。
山脇学園も、帰国生入試の入試問題を公式サイトで公開しています。2025年度・2026年度の問題に加えて、2027年度入試に向けたサンプル問題(問題用紙・解答用紙・要約例と解答例)が出ています。同校の帰国生入試は、Ⅰ期が国語と算数、Ⅱ期が「エッセイA・エッセイB」で英語と日本語のどちらかを選べる形です。前年度の問題と翌年度のサンプルが並ぶので、形式の変化もそのまま読み取れます。
つまり「帰国生入試だから非公開」なのではなく、公開している学校と、していない学校があるというだけのことです。志望校がたまたま後者だったのを、帰国生入試全体の性質だと受け取ってしまうと、探せば出てくるものまで探さなくなります。候補校そのものの集め方は受入校の探し方と見る順番にまとめてあります。

「帰国子女」という言葉の定義・対象になる期間・何年からあてはまるのかは、学校や制度によって違います。そこだけ先に整理したい方は帰国子女とは?定義・期間・何年からと帰国後に困ることをご覧ください。
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探す順番――学校の公式サイトから始める
多くのご家庭が、いきなり書店や通販から入ります。順番が逆です。次の順に当たると、無駄な待ち時間が減ります。
- ①志望校の公式サイトの入試情報・過去問ダウンロードを見る――帰国生の区分が一般入試と別建てで並んでいることがあります。海城のように区分ごとにファイルが分かれている場合、一般入試の欄だけ見て「帰国生の分はない」と判断してしまう取り違えが起きます。
- ②公式の窓口販売を確認する――海城は入試問題の実物も扱っており、B4サイズ(2つ折り)で、事務室窓口(日曜・祝日は警備員室)にて、8時~16時(夏休み・冬休み中は~15時)、数に限りあり、と公表しています。海外にいると見落としがちですが、これは一時帰国のときに立ち寄れば実物が手に入るということです。本番と同じ体裁で解かせたい場合、この選択肢は覚えておく価値があります。
- ③学校説明会で配布があるかを確認する――「説明会で配られるのは直近1年分だけ」といった話はよく挙げられますが、これは学校公式で確認できた事実ではありません。配布の有無も範囲も、その学校の案内で確かめてください。海外から説明会に参加する方法そのものは海外から説明会に参加する3つの型が担当です。
- ④市販の過去問集を見る――ここで初めて書店・通販です。収録の範囲には後述の限界があります。
- ⑤学校に直接問い合わせる――①~④で出てこなければ、入試広報の窓口に聞くのがいちばん早い。過去問の扱いは学校が決めていることなので、答えは学校しか持っていません。

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手に入っても、中身が全部そろっているとは限らない
ここが二つ目の落とし穴で、しかもほとんど知られていません。声の教育社の「カコ過去問」は、学校別過去問題集の巻頭「収録内容一覧」に記載されたユーザー名とパスワードを入力して、過去問題集に掲載されていない回をダウンロードするサービスです。つまり過去問題集を購入した人が使う仕組みで、それ単体で手に入るものではありません。
そして同社は注記で、「著作権の都合により、国語と一部の問題を削除しております」と明記しています。これは出版社の手抜きではなく、入試の国語で使われた文章は他人の著作物であり、その転載の許諾が常に得られるとは限らないという構造の話です。学校が自校のサイトで公開する場合も同じ制約は働きます。どのみち、市販の過去問集にも付属のダウンロードにも、最初から入っていない部分がありうると考えておくのが正確です。
これを知らないと何が起きるか。国語の本文が抜けた過去問を解かせて、「うちの子は国語ができない」と判定してしまうことです。本文がなければ設問だけが残り、点は当然に伸びません。子どもの側も理由がわからないまま自信を失います。手元の過去問で国語の出来を測る前に、その版に国語が入っているかを先に確かめてください。国語の力そのものをどう見るかは帰国子女の国語の伸ばし方にまとめてあり、この記事では踏み込みません。
過去問から読み取るのは点数ではなく「何が課されるか」
帰国生入試は、選考の型が学校ごとにまったく違います。だから過去問の第一の用途は正答率の測定ではなく、この学校は何を課してくるのかを知ることです。
洗足学園の帰国生入試を例にします。同校が公表している比率は、A方式が英語の筆記50%と面接50%、B方式が英語筆記・国語・算数・面接それぞれ25%で、各100点・合計400点で合否を決めるという形です。面接は受験生1名に対してネイティブの教員と日本人の英語科教員が各1名と示されています。ここで気づいてほしいのは、同じ学校の同じ入試でも、A方式とB方式では過去問の使い道がまるで違うということです。A方式で出願するつもりの子が国語の過去問を積んでも、配点のある場所に届きません。まずどの方式で出願するのかを決め、それから過去問に入る。順番はこちらです。英語だけで受けられる型の見分け方は英語のみの入試を3つの型に分けた記事、面接そのものの準備は中学の面接で聞かれることが担当です。
もうひとつ、押さえておきたい事実があります。過去問を勧めているのは学校の側です。洗足学園はQ&Aで「本校の入試問題は独自の形式を採用しているため、市販の問題集での対策よりも、過去の入試問題を何度も解くような学習をしていただければと思います」と明記しています。市販教材より過去問、という順番は当社の意見ではなく、学校が公表している方針です。同校のQ&Aには「海外在住経験がなくても、入学後帰国生クラスの授業についていけるだけの英語力があれば合格することは可能です」という記載もあり、募集の考え方まで読み取れます。なお広尾学園のように募集要項をPDFで公開している学校もありますが、要項は過去問ではありません。

| 見るところ | 学校公式のダウンロード | 学校窓口での実物販売 | 市販の過去問集と付属DL | 学校への問い合わせ | ともだちじゃぱん |
|---|---|---|---|---|---|
| 帰国生の区分 | 海城は一般①・一般②と帰国生が別に並ぶ | 海城は帰国生の回も窓口で扱う | 収録される回は本ごとに違う | 扱いの有無を学校に直接確かめられる | 過去問の提供も添削も行っていません |
| 海外からの入手 | その場でダウンロードできる | 一時帰国のときに立ち寄る形になる | 配送に時間がかかる | 時差の中でのやりとりになる | 海外の自宅から毎週の授業に参加できる |
| 国語の本文 | 学校が公開したものがそのまま入る | 実物と同じ体裁で解ける | 著作権の都合で国語と一部が削除される場合がある | 入手方法そのものを確かめる場 | 学年相当の読み書きを毎週積み上げる |
| 先に確かめること | どの年度・どの区分が出ているか | 販売の時間と在庫(数に限りあり) | どの回が収録されているか | 出願する方式を先に決めておく | 入試対策ではなく日本語の土台が担当 |
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海外から解くときの制約と、やってはいけない三つの使い方
海外にいるという条件そのものが、過去問の扱いを難しくします。ダウンロードはPDFなので紙で解けない。時差で説明会に出られない。窓口販売に行けない。通販は配送を待つ。どれも気合いでは解決しません。実務としては、PDFを実寸で印刷して本番の紙の大きさに近づける、時間を計って一気に解く、解答用紙も一緒に印刷して記入欄の狭さごと体験させるといった工夫をしているご家庭が多い、という程度にお伝えしておきます。特定の印刷や配送のサービスをお勧めすることはしません。渡航と日程の組み方は海外会場と日程の組み方、残り月数から見た時間配分は勉強時間の配分にあります。
そのうえで、失敗の型として三つだけ挙げます。
- (a)過去問の点数で志望校を決める。帰国生入試は募集人数が少なく、選考の型が年度で変わります。高輪中学校は公式のお知らせで、2027年度入試より、これまで1月に実施していた帰国生入試を廃止し、一般入試の中で帰国生を対象とした優遇措置を実施すると発表しました(所定の書類の提出でA・B・C日程の4科目試験の合計得点に10点を加点、算数午後入試は対象外)。前年の過去問がそのまま来年に対応するとは限らない実例です。点数の読み方の落とし穴は一般入試の偏差値表が使えない理由にもあります。
- (b)国語が削除された過去問で国語力を判定する。前述のとおりです。判定する前に、その版に何が入っているかを見てください。
- (c)方式を決める前に解き始める。洗足学園の例のとおり、方式が違えば配点が違い、積むべきものが違います。出願する方式を決めるのが先です。

ともだちじゃぱんは株式会社NIJINが運営する、海外で育つ子のためのオンライン日本語スクールです(2026年12月開校)。学校教育法上の一条校ではなく、在籍校の代わりにはなりません。そして中学受験の教科指導も、過去問の添削も行っていません。志望校別の詰めは帰国生向けの塾や家庭教師の領域で、その価値は本物です。私たちが担っているのは、過去問を解ける前提になる日本語の読み書きの土台――学年相当の語彙・漢字・書き言葉を、毎週の授業として止めずに続けることです。講師は採用合格率およそ2%の選抜を通った現役水準の日本の教員、8人の少人数・担任制で、日本に住む同世代が同じクラスにいるので日本語で話す時間が生活の中に残ります。学費や奨学金の詳細は、無料の学校案内でお届けしています。
よくある質問
帰国生入試の過去問は、本当に手に入りますか?
学校によります。海城中学高等学校は帰国生の区分を含めて公式サイトでダウンロード公開しており、山脇学園も帰国生入試の問題とサンプル問題を公開しています。「帰国生入試だから非公開」ではありません。まず志望校の公式サイトを確認してください。
市販の過去問集を買えば、それで足りますか?
足りるとは限りません。声の教育社は注記で「著作権の都合により、国語と一部の問題を削除しております」と明記しています。入っていない部分がありうる前提で使ってください。学校公式の公開分と併せて見るのが安全です。
過去問は何年分やればいいですか?
年数より先に決めることがあります。どの方式で出願するかです。洗足学園のようにA方式とB方式で配点が違う学校では、方式が変われば解くべき科目が変わります。方式を決めてから、手に入る範囲で古い年度にさかのぼる、という順番が現実的です。
過去問の点数で志望校を決めてもいいですか?
お勧めしません。帰国生入試は募集人数が少なく、選考の型が年度で変わります。高輪中学校は2027年度入試から帰国生入試を廃止し、一般入試での加点に切り替えると公表しました。過去問は傾向を知る道具で、合否の予測器ではありません。判定の見方は海外からの模試の受け方もご覧ください。
まだ翌年度の要項が出ていません。過去問だけ先に進めていいですか?
2026年8月の時点では翌年度の要項が未公表の学校が普通にあります(郁文館中学校は正式版の募集要項を10月上旬に公開予定と案内しています)。前年度の型は「予定」として扱い、確定扱いにしないこと。動き方の時期は2027年入試の月別カレンダーにまとめてあります。



