現地校のエッセイは英語ですらすら書くのに、日本語の漢字ドリルは開くまでに一時間かかる。そんな家庭が「帰国子女 中学受験 英語のみ」と検索するとき、知りたいことは二つに絞られます。英語だけで受けられる中学入試は本当にあるのか。そして、それに賭けてよいのか。結論から書くと、そういう入試は実在します。ただし読者が「英語のみ」と呼んでいるものは、実際には三つの別の型に分かれていて、その多くは英語だけでは終わりません。この記事は三つの型の見分け方を、2026年8月時点で学校公式が公表している募集要項の記載だけを使って整理します。条件・日程・選考型の全体像は中学受験の条件と選考型の整理が担当です。
「英語のみ」には、まったく別の二つの意味がある
混乱の原因は単純で、「英語で受けられる」という一言が二つの別々のことを指しているからです。
- 出願資格としての英語――英検やTOEFLのスコアが、そもそも出願できるかどうかの線引きに使われる。試験用紙とは関係がありません。
- 選考科目としての英語――当日の試験に英語がある。何と組み合わされるかで、難易度も準備も丸ごと変わります。
一つの学校の要項に、この二つが同時に書かれていることもあります。広尾学園は帰国生を「海外在住経験が1年以上あり、帰国後3年以内の帰国生」と定義したうえで、インターナショナルコースのアドバンストグループを希望する場合にだけ「英検2級以上、または同等の英語力を有する者」という条件を加えると公表しています。ここで英検は受験科目ではなく、入口の鍵です。鍵を持っていても、当日に何を解くかは別の欄に書かれています。
この記事が扱うのは後者、当日の試験としての英語だけです。英検が出願資格になる入試とならない入試の区別は英検の扱いを整理した記事、資格そのものの軸の分け方は受験資格の4つの軸にまとめてあります。ここから先は、要項の「試験科目」「選考方法」の欄だけを見ていきます。

選考科目としての英語は、三つの型に分かれる
以下は、いずれも2026年8月時点で各校の公式ページに出ている記載です。学校名を出すのは、2027年4月入学の選考について公式が公表しているものに限ります。
型(a) 英語1科目と面接で完結する型。聖学院中学校の中学帰国生入試は、A方式(英語圏の現地校向け)とB方式(日本人学校向け)に分かれています。同校公式によれば、A方式の筆記は「英語」の1科目で、面接が英語で約20分、さらに日本語で約10分程度。B方式は「国語」「算数」の2科目に日本語の面接が約20分程度です。試験日は2026年12月5日(土)、募集人員は10名(男子)と示されています。日本語の筆記がない型は確かに存在する――ただしA方式でも日本語の面接は残っていることに注目してください。「英語のみ」と呼べる型でも、日本語をまったく使わずに終わるわけではありません。

型(b) 英語に、国語や算数が必ず付く型。「英語のみ」と聞いて思い描いたものが、要項を開いたら実はこの型だった――という取り違えが起きるのがここです。海城中学校の2027年度帰国生入試は、選考方法がA方式「国語・算数、面接」とB方式「国語・算数・英語、面接」の二本立て。英語を使えるB方式でも、国語と算数は外れません。さらに面接では「生活していた国や地域と日本との違い」について日本語による2分程度のスピーチがあると明記されています。試験日は2027年1月7日(木)、出願は2026年12月1日0時から12月15日24時、募集人員は男子30名です。
渋谷教育学園渋谷中学校の2027年度帰国生入学試験も同じ構造です。公表されている時間割は、8時50分から9時50分が「英語または作文」、10時10分から11時が国語、11時20分から12時10分が算数、12時30分から面接。英語は作文との選択にすぎず、国語と算数はどちらを選んでも課されます。試験日は2027年1月27日(水)、募集人員は12名。応募資格は「試験日までに海外在留2年以上、帰国後2年以内」で、事前の応募資格確認審査を経てからでないと出願できない仕組みです。
型(c) 帰国生であることや英語資格で優遇されるが、当日の試験は日本語。高輪中学校は公式のお知らせで、2027年度入試より、これまで1月に実施していた帰国生入試を廃止し、一般入試の中で帰国生を対象とした優遇措置を実施すると発表しました。所定の書類を提出するとA・B・C日程の4科目試験の合計得点に10点を加点(算数午後入試は対象外)という形です。この型では、英語や海外経験は入口を少し広げるだけで、当日に解くのは日本語の4科目です。「帰国生を受け入れている学校」という一言でくくると、(a)と(c)が同じ棚に並んでしまいます。
募集要項のどの欄を見れば、型が判別できるか
学校名を一つずつ調べるより、要項の読み方を覚えるほうが早いです。見るのは次の四か所だけで足ります。
- 「出願資格」欄――ここに英検やTOEFLが出てきたら、それは入口の条件です。当日の科目とは無関係なので、混ぜて読まない。広尾学園のように、コースや群によって条件が付いたり付かなかったりします。
- 「試験科目」「選考方法」欄――ここが型を決めます。英語が単独で置かれていれば(a)、「国語・算数・英語」のように並んでいれば(b)、英語が一つも出てこなければ(c)。海城のように方式ごとに科目が違う学校では、方式の名前ではなく方式ごとの科目の並びを見ます。
- 時間割――いちばん正直です。渋谷教育学園渋谷のように試験時間が分単位で公表されていれば、英語が選択なのか必須なのか、日本語の科目が何時間あるのかが一目で分かります。
- 面接の欄――言語が別に書かれていることが多いのがここです。聖学院は英語と日本語の両方、海城は日本語のスピーチ。面接の中身と準備は帰国生の面接で聞かれることが担当です。
もう一つ、入試の名称で判断しないこと。「英語入試」「グローバル入試」「国際生入試」といった呼び名は各校が自由に付けており、中身は学校ごとに違います。名前ではなく欄で読む。候補校をどう集めるかは受入校の探し方と見る順番にまとめてあります。

| 見るところ | (a)英語1科目+面接 | (b)英語+国語や算数 | (c)加点・優遇のみ | ともだちじゃぱん |
|---|---|---|---|---|
| 当日の筆記 | 英語だけで完結する | 英語に国語・算数が加わる | 日本語の教科のみ。英語の筆記はない | 入試の科目対策は担当していません |
| 面接の言語 | 英語と日本語の両方という例がある | 日本語のスピーチを課す例がある | 面接のない日程もある | 毎回の授業が日本語で話す時間になる |
| 準備で重くなる教科 | 英語と、日本語での受け答え | 英語に加えて国語・算数 | 日本語の4科すべて | 学年相当の国語を止めずに続ける |
| 入学後に問われる日本語 | 型に関係なく授業は日本語で進む | 合格時点の国語がそのまま土台になる | 一般入試の生徒と同じ集団で進む | 日本に住む同世代と日本語で話し続ける |
去年あった型が、今年もあるとは限らない
英語型に賭ける計画で、いちばん危ないのがここです。高輪中学校の例が示すとおり、帰国生入試そのものが年度をまたいで消えることがあります。前年度の情報でリストを作っていた家庭は、要項が出た時点で志望校が一つ減ります。しかも英語型を実施する学校はもともと数が限られるので、一校の変更が計画全体に響きます。
加えて、2026年8月の時点では、翌年度の要項がまだ出ていない学校が普通にあります。郁文館中学校は生徒募集概要を先に公開したうえで「正式版となる募集要項は10月上旬に公開予定です」と案内しています。概要と正式版で科目や日程が変わることもあるため、夏に見た情報のまま秋を過ごさないことが必要です。中学だけの話でもなく、大学段階でも慶應義塾大学の総合政策学部・環境情報学部が帰国生対象の入試を2025年度実施をもって終了しています。
実務としては三つで足ります。志望校の入試情報ページを、要項の公開時期に合わせてもう一度見る。公開されたら「試験科目」欄と「試験日」欄だけを先に読む。英語型が消えた場合の代替を、消える前に一つ決めておく。帰国の時期そのものが出願できる学校の集合を動かす仕組みは帰国時期で受けられる学校が変わる話、日程と渡航の組み方は海外会場と日程の組み方にあります。

「英語のみで入れる」と「英語のみでやっていける」は別
ここが本記事でいちばん申し上げたい点です。仮に型(a)の学校に英語1科目で合格したとしても、入学後の授業は日本語で進みます。国語はもちろん、社会も理科も日本語の教科書で、用語も日本語です。英語で行う授業を置いている学校もありますが、どの教科をどの言語で行うかは学校ごと、コースごと、さらにその中の群ごとに違います。「英語で入れる学校=英語で学べる学校」ではありません。
だから学校を絞る段階で確認するのは、入試の科目よりむしろ入学後の三点です。入学後に日本語のフォロー(取り出し授業や補習)があるか。対象と期間はどうなっているか。帰国生が学年に何人いるか。いずれも説明会や個別相談で聞ける範囲で、聞き方は学校選びで聞く12の質問にまとめました。入学後に何が重くなるかは教科ごとに正体が違い、その分解は「勉強の遅れ」を三つに分ける記事が担当です。インター校で日本語が離れていく仕組みはインターで日本語が遅れる理由にあります。
そのうえで、英語型に賭けてよい家庭の条件を正直に書きます。英語型が合理的なのは、英語が学校の求める水準に届いていて、志望校の候補が数校に絞れており、その数校が英語型を今年度も実施することを要項で確認できていて、なおかつ入学後の日本語を家庭で支える算段が付いている場合です。逆に、日本語の教科をやる時間がないから英語型に逃げる、という動機だけで選ぶと二つの負債が残ります。選択肢が狭まること――実施校が限られるので、一校の制度変更や不合格が全体を止めます。そして合格後の生活が日本語で進むこと――入試で回避した日本語は、入学式の翌日から毎日戻ってきます。
ともだちじゃぱんは株式会社NIJINが運営する、海外で育つ子のためのオンライン日本語スクールです(2026年12月開校)。学校教育法上の一条校ではなく、在籍校の代わりにはなりませんし、志望校別の受験対策も行っていません。英語型の過去問や面接の詰めは帰国生向けの塾の領域で、その価値は本物です。私たちが担うのは英語を手放さないまま、学年相当の国語を止めずに続けることで、講師は採用合格率およそ2%の選抜を通った現役水準の日本の教員、8人の少人数・担任制です。日本に住む同世代が同じクラスにいるので、日本語で話す時間が生活の中に残ります。学費や奨学金の詳細は無料の学校案内でお届けしています。
よくある質問
英語だけで受けられる中学入試は、本当にありますか?
筆記が英語1科目で完結する型はあります。聖学院中学校の中学帰国生入試A方式は、公表されている科目が「英語」のみで、面接が英語と日本語の両方です。ただし実施している学校の数は限られ、面接は日本語でも行われます。「日本語をまったく使わない入試」ではない、と考えておくのが安全です。
「英語入試」と書いてあれば、英語だけで受けられますか?
いいえ。名称は各校が自由に付けています。海城中学校のB方式は英語を使いますが科目は「国語・算数・英語」、渋谷教育学園渋谷は英語が作文との選択で国語・算数は必須です。判定は名称ではなく「試験科目」「選考方法」欄と時間割で行ってください。
英検を持っていれば、当日の英語の試験は免除されますか?
免除とは限りません。英検が出てくるのは多くの場合「出願資格」欄で、広尾学園のようにコースを希望する場合の条件として書かれます。出願できることと、当日の科目が減ることは別です。英検が入試でどう扱われるかは英検の扱いを整理した記事をご覧ください。
英語型で入学したあと、国語はどうすればいいですか?
入学後に取り出し授業や補習を置く学校もありますが、対象も期間も学校ごとに違い、公表していない学校もあります。公式で確認できるのはここまでです。確実なのは、受験の前後で国語を止めないこと。合格時点の国語力が、そのまま入学後の土台になります。
志望校の翌年度の要項が、まだ出ていません。
珍しくありません。郁文館中学校は正式版の募集要項を10月上旬に公開予定と案内しています。公開までは前年度の型を「予定」として扱い、確定扱いにしないこと。高輪中学校のように、前年度まであった帰国生入試が廃止される例もあります。

