志望校の募集要項をダウンロードして、選考方法の欄に「面接」の二文字だけを見つけ、そこで手が止まった――そんな方が多いはずです。「帰国子女 面接 質問 中学」で検索すれば質問例のリストはいくらでも出てきますが、その大半は出典のない寄せ集めで、しかも中学入試の面接にはほかの学校段階にない事情が2つあります。この記事は中学入試(帰国生入試)の面接だけに絞り、学校公式の募集要項で確認できることと、確認できないことを分けて整理します。中学受験そのものの条件・日程・選考型は中学受験の条件と選考型の整理へ。
中学入試の面接が、高校・大学と決定的に違う2つのこと
高校や大学の面接記事をいくら読んでも、中学の準備には半分しか使えません。理由は2つです。
- ①保護者が面接の場に入る学校がある――受験生と一緒に入る「保護者同伴」、保護者だけ別に呼ばれる形など、扱いは学校ごとに違います。高校・大学ではまず見かけない設計です。
- ②受験生が小学生である――だから質問は、志望動機のような抽象的な問いより、好きな教科、海外の学校での一日、友達のことといった生活の具体に寄ります。答える側の年齢が、聞かれ方そのものを決めています。

①の具体例を先に出します。頌栄女子学院が公表している2027年度の帰国生向け募集要項(試験日は2026年12月5日)には、選考の内容として「面接(保護者同伴)」と明記されています。慶應義塾湘南藤沢中等部は二次試験として体育実技と面接を行い、公式のよくある質問に「保護者はお一人でも結構です。そのことによる有利不利は一切ありません」と書かれています。両親そろわないと不利という不安に、公式が正面から答えている例です。
②の具体例も公式にあります。海城中学校の帰国生入試は「面接(10分程度・受験生のみ)」で、面接の中で「生活していた国や地域と日本との違い」について日本語による2分程度のスピーチを行うと公表されています。しかもメモを参照したり資料等を用いたりすることはできません。小学6年生が、初対面の大人の前で、日本語だけで2分間話し続ける。中学入試の面接が何を見ようとしているかが、この一行に出ています。
公式に書いてあるのは「形式」まで――4校の記載を並べる
ここが本記事でいちばん大事な区別です。学校が公表しているのは、原則として面接の「形式」であって「質問の中身」ではありません。4校の記載をそのまま並べます。
- 海城中学校――面接は10分程度、受験生のみ。日本語による2分程度のスピーチあり。出願時に学校所定の「面接カード」を提出します。2027年度の募集要項は10月下旬にホームページ掲載と案内されています。
- 渋谷教育学園渋谷中学校――2027年度の帰国生入試(2027年1月27日)の試験科目は「英語・国語・算数・英語面接 または、作文・国語・算数・面接」。時間表では12:30から面接開始です。英語で受ける面接と日本語の面接が、出願時に選んだ型で分かれる設計になっています。
- 聖学院中学校――英語圏の現地校出身者向けのA方式は英語の面接が約20分、日本語の面接が約10分程度。日本人学校出身者向けのB方式は国語・算数に日本語の面接が約20分程度。同じ学校の中で、出身校によって面接の言語も長さも変わります。
- 聖園女学院中学校――2027年度の帰国生入試(2026年11月28日)では面接試験は実施せず、入学後のオリエンテーション後に保護者同伴の面接を行うと案内しています。国内在住者は校内受験、海外在住者はオンライン受験です。

並べると分かるのは、「帰国生入試の面接」と一口に言っても、受験生のみ/保護者同伴/実施しない、日本語/英語、10分/20分と、まったく揃っていないということです。そして4校のうち質問の中身に踏み込んで公表しているのは海城のスピーチ課題だけでした。山脇学園・三田国際科学学園・広尾学園・同志社国際なども帰国生入試を続けていますが、面接の細目は各校の募集要項PDFの中にあり、学校サイトの説明ページからは読み取れません。公式で確認できるのはここまでです。要項が手元にあるなら、まず4点――誰が入るか・言語・所要時間・面接カードの有無――だけを抜き出してください。学校段階をまたいだ面接で聞かれることの全体像は別記事にまとめています。
保護者は何を聞かれるのか
保護者同伴と書かれていた瞬間に、受験生本人より親のほうが緊張し始めます。ただ、ここも冷静に切り分けが必要です。募集要項が保証しているのは「保護者が入るかどうか」までで、保護者への質問内容を公表している学校は、2026年8月時点でほとんど見当たりません。
そのうえで、複数の学校の説明会や要項でよく挙げられる型として整理できるのは次のあたりです。これは公式の断定ではなく、あくまで「よく挙げられる型」として読んでください。志望理由と、家庭で大切にしてきた教育方針。海外でどんな生活を送り、子どもがそこで何を得たか。帰国後の家族の居住形態――父親だけ現地に残る、母子で先に帰国するといった形は駐在家庭では珍しくなく、通学や生活の見通しとして確認されることがあります。そしてその学校の方針を理解しているか。学校の色を分かったうえで選んでいるか、という趣旨の確認です。
実務として先に決めておきたいのは、父母のどちらが出席するか、両親そろっての出席が必要かです。これは学校ごとに違い、募集要項や受験心得に書いてあります。前述の慶應義塾湘南藤沢中等部は「お一人でも結構」と明記していますが、すべての学校が同じ立場とは限りません。要項で確認できなければ学校に直接聞くのが確実です。学校の方針を自分の言葉で話せるようにするには、海外から学校説明会に参加する方法を早めに押さえておくのが結局いちばん効きます。なお、そもそも出願できるかどうかの在外年数・帰国後年数の判定は面接とは別の話で、出願資格を4つの軸で分解した記事で先に済ませてください。
面接の形式は5通りに分かれる
志望校の要項を読むときの当たりをつけるために、実際に見かける形式を5つに整理しておきます。どれに当たるかは学校ごとに違い、必ず志望校の最新の募集要項で確認してください。
- 受験生のみの個人面接――海城中学校が10分程度と公表している型です。
- 受験生と保護者の面接――頌栄女子学院の「面接(保護者同伴)」がこれにあたります。
- 保護者のみの面接――受験生の試験時間中に、保護者だけが別室で呼ばれる形。よく挙げられる型ですが、公表している学校は多くありません。
- グループ面接――複数の受験生が同時に入る形。話す量より、人の話を聞く姿勢が見えます。
- オンラインでの実施――海外在住のまま受けられる型。聖園女学院は海外在住者のオンライン受験を明示しています(同校は入試での面接は実施しません)。
学校の探し方は中学の受け入れ校の4つの入口と帰国枠のある中学校一覧の見る順番にまとめてあります。
「学校の好きなところは?」で固まる――壁の正体と、準備の考え方
ここからは制度ではなく、実際に起きることの話です。現地校で What do you like about your school? と聞かれれば、友達の名前まで出してすらすら答える子が、「学校の好きなところは?」と日本語で聞かれた瞬間に固まる。帰国生の面接準備で、いちばん多く報告される場面です。
これは日本語の語彙が足りないからではありません。日本語で自分の内面を言葉にした経験の量の問題です。海外で暮らす子にとって、日本語は家族との会話の言語であることが多く、そこで話すのは今日の予定や連絡事項です。「なぜそう思ったのか」「何がうれしかったのか」を日本語で組み立てて、家族以外の大人に説明する機会は、驚くほど少ない。加えて初対面の大人に対する敬語も、使う場面がなければ育ちません。この背景は帰国子女が日本語の話し方・敬語でつまずく理由で詳しく扱っています。

| 面接で起きること | 現地校・インターで育つ力 | 塾の面接練習 | 家庭でできること | ともだちじゃぱん |
|---|---|---|---|---|
| 日本語で自分の考えを組み立てて話す | 英語では十分に育つ。日本語で行う機会は少ない | 直前期に集中的に。回数は限られる | 最後まで聞き、途中で代弁しない | 日本語で話す時間そのものを日常的に増やす(面接対策の講座ではありません) |
| 初対面の大人に敬語で答える | 場面がほぼない | 型として教わる | 家庭内では場面を作りにくい | 日本の教室と同じ言葉づかいの先生と毎回話す |
| 海外の学校生活を日本語の語彙で説明する | 経験は豊富。日本語のラベルがついていない | 経験の棚卸しを一緒に行う | 写真を見ながら日本語で言い直す | 日本に住む同世代に自分の生活を説明する場面が自然に生まれる |
| 沈黙してしまい、止まると戻れない | 英語では起きにくい | 想定問答で補える範囲がある | 沈黙を待てるかが試される | 担任制・8人の少人数で、同じ顔ぶれの中で話し始められる |

最後に、準備の方向についてはっきり書きます。模範解答を作って暗記させる準備は、中学入試の面接ではおすすめできません。相手は毎年何十人もの小学生と話す大人で、覚えてきた文章はほぼ確実に伝わります。しかも暗記した答えは、少し角度を変えて聞き返された瞬間に崩れ、そこから沈黙が始まります。やるべきは話す材料をそろえることです。海外の学校での一日、記憶に残っている出来事、好きな教科と嫌いな教科とその理由、友達とのエピソード。これを親子で日本語で棚卸しして、言葉にしておく。材料さえ手元にあれば、質問がどう来ても自分の言葉で組み立て直せます。書く力を問う作文が課される学校もありますが、そちらは帰国子女の作文のテーマの型が担当です。
ともだちじゃぱんは株式会社NIJINが運営する、海外で育つ子のためのオンライン日本語スクールです(2026年12月開校)。学校教育法上の一条校ではなく、在籍校の代わりにはなりませんし、面接対策の講座も行っていません。できるのは、日本語で自分のことを話す時間を日常の中に置いておくことです。講師は採用合格率およそ2%の選抜を通った今の日本の教室を知る現役水準の教員で、8人の少人数クラスには日本に住む同世代の仲間がいます。料金は通い放題で月額定額。帰国後に学校になじめるかどうかの話は逆カルチャーショックと友達の力にまとめました。
よくある質問
中学の帰国生入試では、面接に保護者も出るのですか?
学校によります。頌栄女子学院は2027年度の帰国生向け募集要項に「面接(保護者同伴)」と明記していますが、海城中学校は「面接(10分程度・受験生のみ)」で保護者は入りません。同伴か否かは必ず志望校の募集要項に書いてあります。父母のどちらが出るかについては、慶應義塾湘南藤沢中等部が公式のよくある質問で「保護者はお一人でも結構です。そのことによる有利不利は一切ありません」と回答しています。
面接は日本語ですか、英語ですか?
日本語で行う学校が基本ですが、英語の面接を用意する学校もあります。渋谷教育学園渋谷中学校は2027年度の帰国生入試の科目を「英語・国語・算数・英語面接 または、作文・国語・算数・面接」としており、選んだ型で面接の言語が分かれます。聖学院中学校はA方式で英語の面接が約20分、日本語の面接が約10分程度です。
面接で聞かれる質問例は、公式に出ていますか?
ほとんど出ていません。学校が公表しているのは形式(誰が入るか・言語・時間)までで、中身に踏み込んだ例は少数です。例外的に海城中学校は「生活していた国や地域と日本との違い」について日本語で2分程度のスピーチを行うこと、メモや資料を使えないことを公表しています。塾や体験談の質問例は、公式の情報と同じ確度では扱わないでください。
海外に住んだまま、オンラインで面接を受けられますか?
学校によります。聖園女学院中学校は2027年度の帰国生入試で、国内在住者は校内受験、海外在住者はオンライン受験と案内しています(同校は入試での面接は実施していません)。オンラインの可否や時差の扱いは要項の記載が学校ごとにばらつくため、渡航して受験するかを決める前に志望校へ直接確認するのが確実です。
面接の練習は、いつから何をすればいいですか?
模範解答の暗記は早く始めるほど逆効果になりがちです。先にやるべきは材料の棚卸しで、学年に関係なく今日から始められます。海外の学校での一日、好きな教科とその理由、友達との出来事を日本語で言葉にしておくだけです。形式の確認(同伴の有無・言語・時間)は募集要項が出る時期に合わせて行えば間に合います。

