夏や年末の一時帰国にあわせて、実家のある横浜で子どもを学校に通わせたい。そう考えて「横浜市 一時帰国 体験入学」と検索した方が最初にぶつかるのが、横浜市の公式サイトに「体験入学」という申込ページが見つからない、という壁です。
見つからないのには理由があります。横浜市は、この仕組みを「体験入学」と呼んでいません。公式の呼び名は「一時受入れ」です。しかも申請の書式が市として存在せず、受け入れるかどうかを決めるのは教育委員会でも区役所でもなく、学校長です。この記事は、横浜市が公開している文書にあたって、その全体像を整理したものです。

横浜市の公式な呼び名は「一時受入れ」
根拠になるのは、横浜市教育委員会が発行している『横浜市帰国児童生徒教育ガイド』(令和5年12月版)です。一時帰国の項に、こう書かれています。
一時帰国時に体験入学を希望する場合は、滞在場所の最寄りの学校に相談して「一時受入れ」の許可を受けてください。ただし、「一時受入れ」は学校の状況等を勘案して学校長が判断しますので、許可がおりない場合もあることを承知しておいてください。
横浜市教育委員会『横浜市帰国児童生徒教育ガイド』令和5年12月版
読み取れることが三つあります。ひとつ、最初に連絡するのは教育委員会ではなく「滞在場所の最寄りの学校」であること。ふたつ、判断するのは学校長であること。みっつ、許可がおりないことがあると市が先に明示していること。
そして、この仕組みのいちばん独特なところが次の一文です。
許可申請の書式は特に定められていませんが、主な確認事項を掲載します。
同ガイド
市として申請書がありません。ダウンロードして記入して提出する紙が存在しないので、市のサイトをどれだけ探しても申込フォームは出てきません。全部、学校への電話から始まります。
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市が決めているのは「主な確認事項」の5項目だけ
では市は何を決めているのか。ガイドが挙げている「一時受入れ許可に関する主な確認事項」は次の5項目です。
- 受け入れ期間——「児童生徒が入学可能な期間のうち、学校が受け入れ可能な期間を学校長が決定する」
- 安全の責任——「学校管理下における、児童生徒の事故・災害に対する処置については、学校及び設置者の処置に一任すること」
- 学校の決まりを守ること
- 諸経費の負担——「保護者は、受入れ期間中の諸費用を負担すること」
- その他
注目したいのは、期間の上限が市として決められていない点です。茅ヶ崎市の「原則2週間まで」、仙台市の「2か月間が限度」のような数字は、横浜市には出てきません。学校長が決めます。
ただし学校の側で数字を出している例はあります。横浜市立中川西小学校は、海外からの体験入学について「一時帰国時の住居が本校学区内にあること」「受け入れ期間:2週間以内」と公表しています。市の上限がないということは、学校ごとに条件が違うということでもあります。そのため「横浜市はどうか」ではなく「滞在先の学区の学校はどうか」を聞くしかありません。

住民登録を入れるかどうかで、制度がまるごと切り替わる
横浜市のガイドには、見落とすと全部が変わってしまう一行があります。
※ ただし、住民登録をした場合は、Ⅱ-1の編入学になります。
同ガイド
つまり横浜市では、住民登録をした瞬間に「一時受入れ」ではなくなり、正式な編入学になります。両取りはできません。この二つは手続きも結果もまるごと別物です。
編入学のルートはこうです。区役所で住民登録をすると、その住所によって通う学校が指定され、区役所から入学通知書が交付されます。それを指定校に持参して、年齢相当の学年に編入学します。学校長の裁量ではなく、住所で自動的に決まります。
転入届の実務も押さえておきましょう。国外からの転入届は「新しい住所に住み始めた日から14日以内」。日本国籍の方は帰国日が確認できるパスポートまたは航空券の控え(転入者全員分)が必要です。そして届出先は「新しい住所の区の区役所戸籍課登録担当」に限られ、市役所や行政サービスコーナー、他の区では受け付けてもらえません。
なお、この「住民登録するかどうか」の線引きは、近隣の自治体が反対側から同じ線を引いています。藤沢市は、住民登録が藤沢市に残ったままなら「主たる居住地を藤沢としているため、海外からの一時的な帰国とみなすことはできない」として体験入学を認めません。川崎市にいたっては「一時的に帰国した場合で、再び海外の居住地に戻るような場合は、住所は海外の居住地にあるものとして扱います。したがいまして、このような場合には、転入の届出があっても住民登録を受付することができません」としています。住民票を入れるか入れないかは、家庭が自由に選べる話ではありません。

18区で手続きは統一されている。ただし窓口の名前が独特
横浜市は18区あるので「区によって違うのでは」と心配になりますが、就学の窓口は18区すべて「〇〇区役所 戸籍課登録担当」で統一されています。業務概要も全区共通で「住民登録(転出入)手続/義務教育諸学校への就学手続」。電話番号の一覧も市の「小・中学校の入学手続き案内」に公開されています。
ここが横浜の分かりにくいところで、就学の手続きが「学務課」でも「学校教育担当」でもなく、戸籍係のカウンターにあります。藤沢市・茅ヶ崎市・鎌倉市は「学務課」、世田谷区は「学務課就学係」。横浜市だけ、住民票と就学が同じ窓口に置かれているのです。「一時受入れ」と「編入学」が住民登録で切り替わる仕組みを思えば、これは理にかなった配置とも言えます。
区の上位には4つの学校教育事務所(東部=鶴見・神奈川・西・中・南/西部=保土ケ谷・旭・泉・瀬谷/南部=港南・磯子・金沢・戸塚・栄/北部=港北・緑・青葉・都筑)があります。帰国児童生徒教育についての相談先は、教育委員会の小中学校企画課(045-671-3588)です。
2026年度の横浜は、給食がかなり変わった
費用の話をします。ここは今年、大きく動きました。
横浜市の学校給食費のページ(2026年6月15日更新)によれば、令和8年度の小学校段階(小学校・義務教育学校前期課程・特別支援学校小学部)の保護者負担額は「0円」です。国の「学校給食費の抜本的な負担軽減」にもとづく措置で、制度上の給食費(年額50,600円、5月から3月の11回払いで月額4,600円、年188回を標準)は、保護者の負担としては消えています。
一方、中学校段階は1食330円。そして2026年4月から中学校は全員給食に移行しました。1日あたり一般食3献立にアレルギー代替食2献立の計5献立、ごはんは大・中・小の3サイズから選べます。健康上・宗教上の理由がある場合は「給食の提供を停止し、家庭から弁当を持参する。この場合、給食費は徴収しません」と明記されています。
ただし短期滞在には注意点があります。給食費の減額は「14日以上連続して欠席等する場合」に「学校給食費減額連絡票」を提出して対象になる仕組みです。2週間前後の短い受け入れは、そもそもこの減額制度の想定外にあります。
そして正直に書いておきます。「一時受入れ」の子が給食を利用できるのか、申込方法と締切がどうなっているのかは、横浜市の公式ページでは確認できませんでした。ガイドにあるのは「保護者は、受入れ期間中の諸費用を負担すること」という一行だけです。学校ごとの運用と思われますが、公式に確認できない以上、学校に直接聞いてください、としか書けません。
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日本語支援の「ひまわり」は、一時受入れの子には使えない
横浜市には日本語支援拠点施設「ひまわり」が3か所(中区山田町の本体、鶴見小学校内の「鶴見ひまわり」、都筑小学校内の「都筑ひまわり」)あります。内容は充実していて、プレクラスは「外国から、新たに転・編入学してきた児童生徒を対象に、1か月間、週3日の集中的な初期日本語指導及び学校生活体験」。学校ガイダンスは英語・中国語・タガログ語・スペイン語・ポルトガル語・やさしい日本語の6言語で毎週火曜午後3時。参加費は無料です。
ただし対象は「新たに転・編入学してきた」子であり、申込も「編入学先の学校に相談してください。学校を通して申し込みます」となっています。横浜市日本語教室のほうも、対象は「横浜市立の小学校・中学校・義務教育学校に在籍している児童生徒」です。
つまり横浜市の手厚い日本語支援は、編入学した子に向けて設計されていて、一時受入れの子には制度的な受け皿がありません。これは横浜市が不親切なのではなく、支援の設計が「これから横浜で暮らす子」を前提にしているからです。数週間で戻る子は、その前提の外にいます。

近隣の自治体と並べてみると、横浜の位置がわかる
| 自治体 | 呼び名 | 期間の条件 | 最初に連絡する先 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 横浜市 | 一時受入れ | 市としての上限なし(学校長が決定) | 滞在場所の最寄りの学校 | 市の申請書式が存在しない/住民登録をすると編入学に切り替わる |
| 川崎市 | 仮入学(体験入学) | 概ね2か月を限度 | 通学区域の市立小中学校へ直接電話 | 一時帰国では転入届を受付できないと明記 |
| 相模原市 | 体験入学 | 明示なし | 一時滞在先の通学区域の学校 | 教科書は無償給与の対象外/事故は保護者責任 |
| 藤沢市 | 体験入学 | 明示なし | 教育委員会 学務保健課 | 住民登録が藤沢に残っていると体験入学できない |
| 鎌倉市 | 体験入学 | 「学校との条件が合えば」 | 学びみらい部 学務課 | 正式な就学ではないため在籍とならない |
| 茅ヶ崎市 | 体験入学 | 原則2週間まで/年度内1回/中3不可 | 教育総務部 学務課 | 災害共済に加入できず医療費は自己負担/4〜5月・2〜3月は不可 |
| 世田谷区 | 体験入学ではなく正式な編入学 | 帰国後に申請(帰国前は不可) | 教育委員会 学務課 就学係 | 給食費は喫食の有無にかかわらず用意した日で請求 |
こうして並べると、横浜市の特徴がはっきりします。期間の上限を市が決めない代わりに、判断も書式も学校に委ねている。柔軟とも言えますし、家庭から見れば「電話するまで何も分からない」とも言えます。だからこそ、早めに動く価値があります。
横浜は「毎年400人以上が帰ってくる街」です
数字も見ておきます。横浜市の市立学校は、令和7年5月1日現在で小学校334校(児童165,703人)、中学校143校(生徒74,966人)、義務教育学校3校(2,428人)。合計502校、252,291人という規模です。
帰国児童生徒については、ガイドが「本市においても、2022年度 400人を超える帰国児童生徒が市立学校に編入学しています」と書いています。令和5年5月1日現在の数字は小学校347人・中学校68人・義務教育学校6人の計421人。注記に「各年度の前年度一年間に帰国した児童生徒数」とあるので、これは在籍しているストックではなく、毎年入ってくるフローの数字です。毎年400人以上が海外から戻ってくる街、という理解が正確です。
逆方向も見ておくと、令和6年中の日本人の動きは、国外からの転入6,515人に対し国外への転出6,924人で409人の転出超過。横浜は、日本人が海外へ出ていく側の街でもあります。駐在に出る家庭と、戻ってくる家庭が、毎年数千人規模ですれ違っている——それが横浜の実像です。
2週間の受け入れのあと、何が残るか
一時受入れは、うまくいけばとても良い経験になります。日本の教室で日本語だけで一日を過ごし、同じ年の子と休み時間に走り回る。海外の生活では手に入らない時間です。
ただ、横浜市の資料を読んでいて気づくのは、制度そのものが「短期で戻る子」を支える設計になっていないということです。日本語支援の「ひまわり」は編入学した子向け。給食費の減額は14日以上の連続欠席が前提。教科書も、成績も、在籍を前提に組まれています。2週間の子は、どの制度からも少しずつ外れています。
そして帰国便に乗った翌週から、日本語を使う相手がまたいなくなります。次に日本の教室に入るのは、早くて半年後、たいていは一年後です。その空白のあいだに、学年相当の国語は静かに離れていきます。
ともだちじゃぱんは、その空白を埋めるためのオンラインスクールです。日本の現役水準の教員が、8人の少人数クラスで学年相当の国語を教えます。同じクラスにいるのは、同じように海外で育っている日本の同世代です。年に一度会う友達ではなく、毎週会って話す相手がいること。一時受入れで「日本語で話すのは楽しい」と分かった子ほど、その先が続きます。
東京での手続きは東京23区に「体験入学」は無い。それでも15区は通えるに、受け入れの可否が自治体でどう違うかは一時帰国の小学校の受け入れ、市でこんなに違うにまとめています。手続き全体の流れは一時帰国の「体験入学」完全ガイドをどうぞ。
よくある質問
横浜市に「体験入学」の申込フォームはありますか
ありません。横浜市の呼び名は「一時受入れ」で、ガイドに「許可申請の書式は特に定められていません」と明記されています。滞在場所の最寄りの市立学校に電話で相談するところから始まります。
教育委員会と区役所、どちらに連絡すればいいですか
一時受入れを希望する場合は、まず学校です。判断するのは学校長です。住民登録をして編入学する場合は、住む区の区役所戸籍課登録担当が窓口になります。18区すべて同じ課名で、電話番号は市の「小・中学校の入学手続き案内」に一覧があります。
受け入れ期間に上限はありますか
横浜市として上限は定めていません。「学校が受け入れ可能な期間を学校長が決定する」とされています。ただし学校側が独自に定めている場合があり、たとえば市立中川西小学校は「受け入れ期間:2週間以内」「一時帰国時の住居が本校学区内にあること」と公表しています。
住民票を入れたほうが有利ですか
有利・不利ではなく、別の制度になります。住民登録をすると一時受入れではなく正式な編入学になり、住所によって学校が指定され、年齢相当の学年に入ります。転入届は住み始めた日から14日以内、帰国日が確認できるパスポートまたは航空券の控えが必要で、届出先は住む区の区役所戸籍課登録担当に限られます。なお再び海外に戻る前提の短期滞在では、そもそも転入届が受理されない自治体(川崎市など)もあります。横浜市の国外転出入について期間の目安は公式には確認できませんでしたので、区役所に直接ご相談ください。
給食は食べられますか。費用はいくらですか
一時受入れの子が給食を利用できるかは、横浜市の公式ページでは確認できませんでした。学校に直接お尋ねください。在籍児童生徒の令和8年度の負担額は、小学校段階が0円(国の負担軽減による)、中学校段階が1食330円です。中学校は2026年4月から全員給食に移行し、アレルギー代替食やごはんのサイズ選択もあります。
日本語支援の「ひまわり」は利用できますか
対象が「新たに転・編入学してきた児童生徒」で、申込も編入学先の学校を通すことになっているため、一時受入れの子は対象外と読めます。プレクラス(1か月・週3日)も横浜市日本語教室も、市立学校に在籍していることが前提です。



