シンガポールへの赴任が決まって家を探し始めると、必ずぶつかるのが「うちの子はチャンギ校とクレメンティ校のどちらになるのか」という問題です。シンガポール日本人学校の小学部は2つのキャンパスに分かれていて、しかもどちらに通うかは家庭が選べません。学校の公式サイトははっきりこう書いています――「学区を超えて通学することは認められていません」。つまり、住む場所を決めた時点で子どもの学校が決まります。この記事は、その学区の仕組みと、意外と知られていない「中学部は1校しかない」という続きの話をまとめます。
小学部は住所で学校が決まる――学区を超えた通学は認められていない
まず、学校が公表しているルールをそのまま引用します。同校の「編入学の資格・条件・学区」ページには、次のように記載されています。
- 小学部はクレメンティ校(西部)とチャンギ校(東部)の2キャンパス体制
- 居住住所により編入学先キャンパスが決まる
- 学区を超えて通学することは認められていない
ここが日本の公立小学校と決定的に違うところです。日本なら「指定校変更」の相談余地がありますが、シンガポール日本人学校の小学部にその窓口はありません。先に家を借りて、あとから学校を選ぶ、という順番が成立しないということです。
島をおおまかに東西で分ける形の区分になっており、学校は学区境界線の地図を3種類(全体図・南側詳細・北側詳細)公開しています。境界の近くに住まいの候補がある場合は、この3枚を突き合わせて確認する必要があります。「だいたい東だから」で判断すると、内見して契約したあとに想定と違うキャンパスになることがあります。

チャンギ校とクレメンティ校の違いを表で整理する
学校が公開している情報の範囲で、3つのキャンパスを並べます。
| クレメンティ校 | チャンギ校 | 中学部 | |
|---|---|---|---|
| 学部 | 小学部 | 小学部 | 中学部 |
| 位置 | 島の西部 | 島の東部 | 西部(クレメンティ校に隣接) |
| 通学の決まり方 | 学区(住所) | 学区(住所) | 学区なし・全島から1校へ |
| 学校の説明 | 交通アクセスの良いキャンパス | 広大な敷地を活かした行事・活動 | メインストリームクラスとグローバルクラスの2コース |
| 連絡先(職員室・事務室) | +65-6775-3366 | +65-6542-9600 | +65-6779-7355 |
学校自身の紹介文を読むと、クレメンティ校は「交通アクセスの良さ」、チャンギ校は「広大な敷地を活かした行事・活動の豊富さ」を特徴として挙げています。どちらが良い・悪いという話ではなく、そもそも選べないので、比較すべきは学校ではなく住まいの候補地のほうです。
見落とされがちな続き――中学部は1校しかなく、しかも西側にある
ここがこの記事でいちばんお伝えしたい点です。小学部は東西2校ですが、中学部は1校だけで、その中学部はクレメンティ校に隣接する西部にあります。
つまり、東部に住んでチャンギ校に通っていた子どもは、中学に上がるタイミングで通学先が島の反対側になります。小学校の6年間は近所だったのに、中学の3年間は毎朝西へ移動する、という生活の変化が起きるということです。
駐在期間が小学校の途中から中学にかかる家庭にとって、これは家探しの段階で織り込んでおく価値のある情報です。「小学部の学区」だけを見て家を決めると、中学部の3年間の通学時間を見落とします。逆に、赴任時点で子どもが高学年なら、最初から西側を選ぶという判断もあり得ます。
なお中学部には、日本の学習指導要領で学ぶメインストリームクラスと、英語中心の授業で構成されるグローバルクラスの2つが置かれています。グローバルクラスは編入相談を随時受け付けているとされ、編入試験の案内も学校サイトで告知されています。

通学バスは学校ではなく「協同組合」が運営している
学区とセットで確認しておきたいのが通学バスです。シンガポール日本人学校の通学バスは学校の直営ではなく、日本人学校協同組合が運営するボランティア団体によって提供されています。利用するには組合への入会が必要です。
| 項目 | 金額(2026年度) | 備考 |
|---|---|---|
| 入会金 | S$10.90 | ― |
| 家庭出資金 | S$100.00/家庭 | 退会時に返還 |
| 月額利用料 | S$305.20/人 | 小学部・中学部一律 |
注意しておきたいのは、ピックアップポイントに満席があることです。同校のページには、2026年度についてクレメンティ校のW05・W14が満席で、ウェイティングの可能性があると明記されています。家を決めるときは、学区の内側であることに加えて、その住所の最寄りポイントが埋まっていないかまで見ておくと安心です。
入会には入会申請書・通学バス利用申込書・誓約書・個人情報同意書・銀行自動引き落とし(GIRO)申請書が原本で必要とされ、これらは編入手続きの書類を受け取る際に同封される案内になっています。また、転居して住所が変わる場合は必ず「転居届」を提出することとされています。学区がある学校なので、転居は通学バスだけでなく在籍キャンパスにも関わる手続きです。

編入学の資格と条件――「日本人会の会員であること」が要る
学区の前に、そもそもの編入学資格も確認しておきます。同校が挙げているのは次の3点です。
- 日本の教育関係法規が定める年齢に該当していること
- シンガポール共和国に在住していること
- 保護者がシンガポール日本人会の会員であること
加えて、シンガポール国籍を持つ児童は原則として入学不可(政府の承認がある場合は例外)とされています。さらに編入学の条件として、日系企業や団体に勤務する保護者はその法人が所定の企業寄付金を納入していること、日系企業勤務以外(外資系・個人・外国人等)の保護者は個人寄付金を一世帯一度納入することが求められます。
つまりシンガポール日本人学校は、住所(学区)・在留資格・日本人会の会員資格・寄付金という4つの条件がそろって初めて通える学校です。日本の公立校の感覚のまま考えると、手続きの量に驚くことになります。
家探しの前に、地図とカレンダーを両方見る
ここまでを実務の順番に並べ直すと、こうなります。
- ① 住まいの候補地を出す(会社の指定エリア・通勤時間)
- ② 学校の学区境界線地図3枚で、その住所がどちらのキャンパスかを確定する
- ③ 通学バスのポイントマップで、その住所の最寄りが満席でないかを確認する
- ④ 子どもが在星中に中学生になるかを確認する(なるなら中学部は西部の1校)
- ⑤ 日本人会への入会と、寄付金の扱い(会社負担か個人負担か)を会社に確認する
④を入れているのは、繰り返しになりますが中学部が1校しかないからです。小学部の学区だけを見て東側に家を決め、2年後に中学で西へ通うことになった、という順番は避けられます。
学区は選べません。日本語で話す相手は選べます
シンガポールの学校選びを調べていくと、家庭の側で選べる部分がほとんどないことに気づきます。キャンパスは住所で決まり、中学部は1校しかなく、バスのポイントには満席がある。決められることの多くは、実は会社と大家さんの都合で先に決まっています。
それでも家庭が選べるものが1つあります。子どもが日本語で誰と、どれくらい話すかです。日本人学校に通っていても、帰国したあとにいちばん差が出るのは、日本の同世代と同じ話題・同じ速さで話せるかどうかでした。
ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の教員が8人の少人数クラスを担任し、日本にいる同世代の子どもたちと同じクラスで学ぶオンラインの日本語スクールです。学校教育法第一条に定める学校(一条校)ではありませんが、日本の教員が日本の教科を日本語で教えます。シンガポールと日本の時差は1時間。バスを降りたあとの時間が、そのまま日本のクラスの時間になります。
よくある質問(シンガポール日本人学校 チャンギ校・クレメンティ校)
チャンギ校とクレメンティ校は自分で選べますか?
選べません。同校の公式サイトは「居住住所により編入学先キャンパスが決まります」「学区を超えて通学することは認められていません」と明記しています。クレメンティ校が西部、チャンギ校が東部を受け持つ形です。
学区の境界はどこで確認できますか?
学校が小学部の学区境界線地図を3種類(全体図・南側詳細・北側詳細)公開しています。境界付近の物件を検討している場合は、全体図だけでなく南北の詳細図まで確認してください。
中学部にも学区はありますか?
ありません。中学部は1校のみで、クレメンティ校に隣接する西部にあります。そのため東部のチャンギ校に通っていた子どもは、中学進学のタイミングで通学先が島の反対側になります。家探しの段階で、在星中に中学生になるかどうかを確認しておくのがおすすめです。
通学バスの費用はいくらですか?
同校の公表値(2026年度)で、入会金S$10.90、家庭出資金S$100.00(退会時に返還)、月額利用料S$305.20/人です。月額は小学部・中学部で一律。運営は学校ではなく日本人学校協同組合で、利用には組合への入会が必要です。
通学バスは必ず乗れますか?
ポイントによっては満席があります。同校のページには2026年度についてクレメンティ校のW05・W14が満席で、ウェイティングの可能性があると記載されています。住所を決める前に、その地域のピックアップポイントの状況も確認してください。
シンガポール日本人学校に入るための条件は?
同校が挙げているのは、日本の教育関係法規が定める年齢に該当すること、シンガポール共和国に在住していること、保護者がシンガポール日本人会の会員であることの3点です。加えて、日系企業勤務の保護者はその法人が企業寄付金を納入していること、それ以外の保護者は個人寄付金を一世帯一度納入することが条件とされています。シンガポール国籍を持つ児童は原則として入学できません(政府の承認がある場合は例外)。
中学部そのものについてはシンガポール日本人学校の中学部、中学のあとの進路はシンガポール日本人学校と高校、学校選び全体はシンガポールの学校選びにまとめています。通学バスの各校比較は日本人学校のスクールバス、世界の学校は日本人学校 一覧をどうぞ。同じく2キャンパス制の香港や上海とも比べてみてください。


