シンガポールに駐在している家庭が、子どもが中学部に上がったころに必ずぶつかる問題があります。シンガポール日本人学校に高等部はありません。小学部はクレメンティ校とチャンギ校、中学部はウエストコースト校。中学卒業でこの学校は終わりです。つまり中3の春に、全員がもう一度ゼロから進路を選び直すことになります。しかもシンガポールの場合、選択肢の中に「同じ島にいたまま日本の高校卒業資格が取れる学校」という、世界でも数えるほどしかない道が含まれます。この記事では4つの選択肢を、2026年度の公表額と出願条件で並べます。
まず前提――世界の日本人学校90校で、高等部があるのは上海だけ
シンガポール日本人学校だけが特別なわけではありません。日本人学校で高等部を設置しているのは、上海日本人学校(浦東校・2011年開設)のただ1校です。世界90校の残りはすべて小学部・中学部までで終わります。詳しい分布は日本人学校 一覧にまとめました。
一方で、日本の学校法人が海外に設置した「私立在外教育施設」という別の枠があり、こちらには高等部があります。2023年4月時点で高等部を持つのは早稲田渋谷シンガポール校・慶應義塾ニューヨーク学院・立教英国学院・帝京ロンドン学園・スイス公文学園高等部の5校。そのうち1校がシンガポールにあります。ロンドンに2校、ニューヨークに1校、スイスに1校、そしてシンガポールに1校――アジアではシンガポールだけです。これがこの街の学校選びを他都市と決定的に違うものにしています。
選択肢A 早稲田渋谷シンガポール校(日本の高校卒業資格・寮あり)
早稲田大学系属の全日制高校で、卒業すると日本の高等学校卒業資格が得られます。学費は同校が公表している2026年度の金額(すべてGST9%込み)で次のとおりです。
| 費目 | 金額(S$) | 円換算の目安 |
|---|---|---|
| 入学金(初年度のみ) | 6,354.70 | 約73万円 |
| 授業料(年) | 27,722.84 | 約319万円 |
| 施設費(年) | 3,891.15 | 約45万円 |
| 1年次の合計 | 37,968.69 | 約437万円 |
| 2・3年次の合計(年) | 31,613.99 | 約364万円 |
| 寮費(年・寮生のみ) | 17,660.48 | 約203万円 |
| 教材費(年・実費) | 約2,250 | 約26万円 |
| 修学旅行費(2年次) | 約3,800 | 約44万円 |

この学校でいちばん見落とされるのが出願区分です。同校の募集要項では、
- 「一般」=保護者が海外に居住・就労している方、または中学在籍期間を含めた連続5年以上を保護者とともに海外で居住していた方
- 「留学」=保護者が日本国内に在住し、本人が海外で就学している方、または外国籍保護者と自国に居住している方
と分けられています。シンガポール日本人学校の中学部に在籍していて、親が駐在を続けているなら「一般」。ところが親が中3の途中で帰任すると、条件によっては区分が変わります。帯同の予定と出願区分は連動しているので、会社の異動時期が読めない場合は、中2の段階で学校に確認しておくべき項目です。2026年度は第1学年に加えて第2学年2学期の編入学試験も実施されています。
そして寮があることが、駐在家庭にとって決定的に効きます。親が帰任しても子どもだけシンガポールに残って卒業できる。これは日本人学校にはない機能です。
選択肢B シンガポールのインターナショナルスクール(IB)
UWCSEA、シンガポール・アメリカン・スクール、ダリッジ・カレッジなど、シンガポールのインターは世界最高水準です。代表格のUWCSEAで、2026/2027年度のGrade 11は次のとおり。
| 費目 | 金額(S$) | 備考 |
|---|---|---|
| 授業料 Grade 11(年) | 49,926 | 約574万円 |
| Development Fee(年) | 9,537(初年度)/5,166(2年目以降) | 毎年かかる |
| Enrolment Fee(一時金) | 4,992 | 入学確定時・返金不可 |
| 出願料 | 627(単一キャンパス) | 両キャンパス出願は1,254 |
初年度は授業料49,926+Development Fee 9,537+Enrolment Fee 4,992=64,455シンガポールドル(約741万円)。IBディプロマを取って世界中の大学を狙える一方、日本の高校卒業資格にはならない点は押さえておく必要があります(日本の大学へは国際バカロレア入試や帰国生入試で出願する形になります)。相場の全体像はインターナショナルスクールの学費にまとめました。

選択肢C 日本へ帰国して高校(帰国生入試・一般入試)
親が帰任するタイミングと重なるなら、日本の高校を受けるのが自然な選択です。多くの高校に帰国生入試の枠があり、海外在留期間や現地校在籍年数などの出願資格が設定されています。ただしシンガポール日本人学校の中学部は日本語で日本のカリキュラムを学ぶ学校なので、「日本人学校在籍」を海外経験としてどう評価するかは学校によって扱いが分かれます。志望校の出願資格は中2のうちに必ず個別に確認してください。
現実的な難所は、親が先に帰任して子どもがシンガポールに残る場合や、逆に子どもだけ先に帰国する場合の住居と保護者の問題です。寮のある学校を選ぶ、親族宅から通う、といった選択が絡んできます。日本の高校の帰国枠については帰国子女の高校受験にまとめています。
選択肢D 日本の通信制・オンラインの高校
海外に住んだまま日本の高校卒業資格を取る道もあります。海外在住者を受け入れている通信制高校を選べば、シンガポールに住みながら日本の卒業資格を得られます。学費はA・Bと比べて大きく下がりますが、「毎日同じ教室に通う」という高校生活そのものは別に確保する必要があります。インターに通いながら在籍する、といった組み合わせを検討する家庭もあります。
なお、シンガポールの公立校は事実上の選択肢に入らない
シンガポールの公立学校に外国籍の子どもが入るにはAEIS(Admissions Exercise for International Students)を受ける必要があり、対象学年も限られています。高校段階(Secondary 3以上)からの編入は実質的にほとんど成立しません。日本の「現地校に入れる」という発想は、シンガポールの高校段階では機能しないと考えてください。
中学部の学費と比べると、3〜5倍になる
| 進路 | 年間の授業料等(S$) | 中学部との比 |
|---|---|---|
| シンガポール日本人学校 中学部 | 約10,726(授業料月752.10+施設費月141.70) | — |
| 早稲田渋谷シンガポール校(2・3年次) | 31,614 | 約2.9倍 |
| 早稲田渋谷シンガポール校+寮 | 49,274 | 約4.6倍 |
| UWCSEA Grade 11(授業料+Development Fee) | 55,092 | 約5.1倍 |

中学部の学費で3年間過ごしたあと、高校で一気に3〜5倍になる。これがシンガポール駐在家庭の学費のいちばん大きな段差です。会社の子女教育手当が高校まで出るのか、上限はいくらか――これは中2のうちに人事に確認しておくべき項目です。中学部の校納金の内訳はシンガポール日本人学校 中学部の学費にまとめています。
どの道を選んでも効いてくるのは「日本語の学年相当」
4つの選択肢を並べてみると、共通していることが1つあります。AとCとDは、日本語で書く力・読む力がそのまま合否と成績に直結します。早稲田渋谷シンガポール校の入学試験も、日本の高校の帰国生入試も、通信制高校のレポートも、日本語での読解と記述が土台です。Bのインターを選ぶ場合も、将来日本の大学を受けるなら同じところに戻ってきます。
中学部にいる間は日本語で授業を受けているので、この土台は自然に維持されます。問題は、中2・中3で塾や英語に時間を振り分けはじめたときに、国語だけが静かに落ちることです。漢字・読解・作文は量が要る領域で、授業を受けているだけでは伸びません。そして落ちたことに気づくのは、たいてい出願直前です。
ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の教員が8人の少人数クラスを担任し、日本にいる同世代の子どもたちと一緒に学ぶオンライン日本語スクールです。定額の通い放題なので、日本人学校の中学部に通いながらの上積みとしても、インターに移ったあとの日本語の維持としても使えます。シンガポールと日本の時差は1時間。日本の夕方のクラスがそのままシンガポールの夕方なので、部活のある平日でも組み込めます。
よくある質問(シンガポールで高校を考える方から)
シンガポール日本人学校に高等部はありますか?
ありません。小学部(クレメンティ校・チャンギ校)と中学部(ウエストコースト校)のみです。世界の日本人学校90校のうち高等部があるのは上海日本人学校だけで、シンガポールを含む他の89校は中学部までです。
シンガポールで日本の高校卒業資格は取れますか?
取れます。早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校が全日制の高校として設置されており、日本の高等学校卒業資格が得られます。高等部を持つ私立在外教育施設は世界に5校で、アジアではシンガポールのこの1校だけです。海外在住のまま日本の通信制高校に在籍する方法もあります。
早稲田渋谷シンガポール校の学費はいくらですか?
2026年度は入学金S$6,354.70、授業料が年S$27,722.84、施設費が年S$3,891.15(いずれもGST9%込み)。1年次の合計はS$37,968.69、2・3年次はS$31,613.99です。寮に入る場合は年S$17,660.48が加わります。このほか教材費が年約S$2,250、2年次の修学旅行費が約S$3,800かかります。
親が先に帰任する場合はどうなりますか?
早稲田渋谷シンガポール校には寮があるので、子どもだけ残って卒業する道があります。ただし出願区分(「一般」と「留学」)は保護者の居住地で分かれるため、帰任の時期によって出願条件が変わる可能性があります。募集要項の出願資格を、中2の段階で学校に直接確認してください。
いつから動けばいいですか?
中2の秋が目安です。早稲田渋谷シンガポール校の入試日程、日本の高校の帰国生入試の出願資格(海外在留期間の要件が学校ごとに違います)、会社の子女教育手当の上限――この3つは、中3の春に調べ始めると間に合わないことがあります。

世界の学校をまとめた日本人学校 一覧と日本人学校の学費相場、高等部の全体像は日本人学校に高校(高等部)はあるのか、シンガポールでの学校選びはシンガポール日本人学校とインターの比較もあわせてどうぞ。
中学部は1校しかないため、小学部のうちにどの校舎へ通うかも進路の前提になります。チャンギ校とクレメンティ校の学区の分かれ方もあわせてご覧ください。

