帰国便を予約する前に、この計算をしたことはないでしょうか。「八月に二週間だけ日本にいる。その二週間で、上の子を日本の小学校に通わせられるだろうか」。一時帰国 体験入学 期間と検索する家庭は確実にいます。多くの場合、滞在の日数のほうが先に決まっています。夫の休暇、航空券の値段、祖父母の予定。それらで組んだ日程がすでにあって、あとはその日数が学校の条件に届くかどうかを知りたい。制度に合わせて帰国日を決めるのではなく、帰国日に制度が入るかを確かめたい、という順序です。
結論から書きます。「体験入学」という名前で受け入れている自治体の期間は、上限がおおむね2週間か1か月のどちらかに集まっています。相模原市は「最長2週間程度」、浜松市は「概ね2週間」、熊本市は「概ね1ヶ月程度」。この幅を知っておけば、まず大きく外すことはありません。ところが、実際にご家庭の予定を壊すのは上限ではありませんでした。壊すのは次の四つです。①最低日数(下限)を課す自治体があること ②夏休みを日数に数えない自治体があること ③年度初め・年度末はそもそも受け入れない窓があること ④締切。上限だけを見て「二週間なら余裕」と判断すると、この四つのどれかに引っかかります。
この記事は、期間の話だけをします。呼び名の違いや、教科書・給食費・保険の扱いは別の記事に譲り、ここでは「何日から何日までなら通えるのか」「その日数はどう数えられるのか」だけを、自治体の公式ページ・要綱・申請様式にあたって確認できた範囲で並べます。読み終わったときに、ご自身の滞在日程がどの自治体の条件に届き、どこに届かないかを逆算できる状態を目指します。なお、以下で「確認できませんでした」と書いているものは、制度が無いという意味ではなく、公開情報からは読み取れなかったという意味です。最終確認は必ず滞在先の教育委員会か学校へお願いします。

期間の条件を調べはじめると、隣の市なのに数字がまったく違うことに戸惑います。理由ははっきりしていて、文部科学省が海外から一時帰国する家庭向けのFAQ(2020年5月1日付)で明言しています。
いわゆる「体験入学」は国の制度としては存在しておらず、正規の編入学とは違い、各教育委員会の裁量によって実施されているものです。「体験入学」を実施していない教育委員会もあれば、実施していても期間や条件が違う場合もあります。
つまり、日数の基準を決めているのは国ではなく、それぞれの教育委員会です。全国共通の「◯日以上◯日以内」は存在しません。だから「一般的には二週間くらいですよね?」という質問には、正確には答えようがないのです。答えられるのは、「実際に公開されている数字を集めると、こういう分布になります」というところまで。逆に言えば、分布さえ頭に入れておけば、自分の滞在日数がどのゾーンにいるかは判断できます。
もうひとつ、この記事を読むうえで前提にしておいてほしいことがあります。期間の条件には、性格の違う二種類があります。ひとつは「長すぎるとだめ」という上限。もうひとつは「短すぎるとだめ」という下限です。そして調べてみると、この二つはまったく別の種類の自治体が持っていました。ここを混同すると、条件表を読んでも混乱します。
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期間の上限は「2週間」か「1か月」のどちらかに集まる
まず上限から見ていきます。公式ページに期間の上限を数字で書いている自治体を集めると、驚くほどきれいに二つの山ができました。2週間の山と、1か月(4週間・30日)の山です。中間の「3週間」を上限にしている例は、今回の調査では見つかりませんでした。
2週間の山にいるのは、相模原市・浜松市・十和田市・名寄市・豊見城市です。相模原市は「受入先の学校と保護者が協議の上、校長が許可した期間(原則年1回、最長2週間程度)。」としています。浜松市は体験入学ではなく「聴講生」という名前ですが、条件は「1.受け入れの期間は概ね2週間とします。」。豊見城市も「1.体験入学期間は、原則として2週間以内となります。」と書いています。十和田市は「原則として2週間以内 ※ただし、年度始(4・5月)及び年度末(2・3月)を除く。」と、期間と時期の条件をひとつの行に並べています。
1か月の山はもう少し賑やかです。熊本市は「概ね1ヶ月程度、小・中学校において体験入学を実施しています。」。さくら市は「最大1か月程度」。甲賀市は要綱第3条で「体験入学の実施期間は、1月以内とする。」と定めています。忍野村は「体験入学期間は原則1か月以内となります。」。名前が「聴講」である大垣市と蒲郡市も、受入要件として「5 聴講期間が聴講開始日から原則1ヶ月以内であること」という同じ文言を掲げています。
同じ1か月の山でも、書き方が「4週間」になっている例と「30日」になっている例があります。舟形町は「期間は原則として4週間までとし、期間の短縮、保護者の方の付き添い等の条件を付すことがあります。」、焼津市は「体験入学の期間は、原則4週間までとし、期間の短縮や保護者の付き添い等条件を付すことがあります。」。一方、川島町は要綱第3条で「体験入学の実施期間は、原則として30日以内とする。ただし、学校行事等により学校運営上支障がある場合は、期間を短縮することができる。」としています。北本市も「30日以内」です。4週間(28日)と30日は同じではありません。ぎりぎりの日程を組むときは、この2日の差が効くことがあります。
舟形町と焼津市の文言には、もうひとつ見落とせない一文が入っています。「期間の短縮」を条件として付すことがある、という部分です。上限いっぱいで申し込んでも、学校側の事情で短くされる可能性が明記されているということです。川島町の要綱も同じ趣旨を「学校行事等により学校運営上支障がある場合は、期間を短縮することができる」と書いています。上限は「必ずそこまで通える保証」ではなく、「そこを超えては認めない線」だと読むのが正確です。
なお、期間について数字を出していない自治体もあります。千葉市は「期間は学校と相談の上、決定すること。」とだけ書いており、日数の記載はありません。加古川市・福井市・みやこ町も、期間・締切ともに数値の記載を確認できませんでした。この場合は「短くても長くても相談次第」ということなので、むしろ早めに学校へ問い合わせる価値があります。
日数の「下限」を課しているのは、体験入学ではありません
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。「二週間しかいないけれど大丈夫でしょうか」という不安は、上限ではなく下限の問題です。そして下限を課している自治体には、はっきりした共通点がありました。下限を課しているのは「体験入学」をやっている自治体ではなく、「体験入学はやらない、正式な編入学として受ける」としている自治体です。

中野区の説明が、この構造をいちばんはっきり示しています。「住民登録の有無に関わらず、学校に出席できる日数が10日以上ある方であれば、正式に編入学として受け入れを行っております。」としたうえで、「※短期間の体験入学はございません。」と付け加えています。文京区も「原則、2週間以上継続して通学すること。」と条件を書き、「受け入れは正式な編入学の扱いとなり、体験入学での受け入れはおこなっておりません。」。台東区は「体験入学という制度はありません。正式な編入学での受入れとなります。」としたうえで2週間としています。調布市は名称からして「短期編入学」で、「始業式と終業式を除く2週間以上通学が可能であれば短期編入学として受け入れを行っております。」「体験入学とは異なり、正式な編入学としての受け入れとなります」と説明しています。
つまり、これらの自治体では「短く体験する」という枠組み自体が用意されていないのです。正式な学籍を作って受け入れる以上、数日で出入りされては学級運営が成り立たない。だから最低日数を求める。理屈としては筋が通っています。小金井市は「・ 就学期間が2週間以上であること」という条件に続けて、「この制度は「体験入学」ではなく、学業を目的とした「正式な編入学」です。お子様の預け先の確保・見学・行事参加のみを目的とした受け入れはいたしかねます」とまで書いています。
下限の数字を短い順に並べると、次のようになります。町田市の「原則5日」が最短で、これは今回確認できた都内の自治体では最も短い条件でした。次が中野区の10日以上。そこから2週間の層が厚く、文京区・台東区・墨田区・北区・荒川区・調布市・小金井市が並びます。墨田区は「おおむね2週間」という書き方で、あわせて「滞在期間が極端に短い場合や語学学習を目的とした場合は、編入学をお断りさせていただく場合があります。」としています。北区も原則2週間です。
さらに長いところが続きます。港区は「3週間以上の継続した就学ができること」。同じく区の説明として「区立小・中学校は終業式までの期間、いくつかの要件のもと3週間以上継続して通学することができる児童・生徒を対象に受け入れを行っています。」とあります。品川区も「3週間以上継続して通学すること。」で、「体験入学は実施しておりません。正式な入退学の手続きが必要です。」。三鷹市は「在籍期間が21日間以上であること(夏休み等の長期休業期間は含みません。)」で、しかも「※令和8年4月より、最低在籍期間を21日間(夏休み等の長期休業期間を含まない)としています。」と、条件が最近変わったことまで明記しています。そして最も長いのが渋谷区の4週間以上です。「夏休みや冬休みなどの学校の休業期間を除いて、4週間以上継続して就学ができること」としています。
整理すると、下限の幅は町田市5日 < 中野区10日 < 文京区・台東区・墨田区・北区・荒川区・調布市・小金井市2週間 < 港区・品川区3週間 < 三鷹市21日 < 渋谷区4週間という順序になります。最短と最長で、5日と28日。5倍以上の開きです。
もうひとつ、地理的な偏りがはっきりありました。今回調べた政令指定都市(札幌市・千葉市・相模原市・浜松市・岡山市・熊本市・広島市・名古屋市ほか)には、下限日数を課している例が一件もありませんでした。上限を書く自治体と、下限を書く自治体は、ほとんど重なっていないのです。上限規制型は政令市や地方の市町村に、下限型は首都圏の区市に集まっている。ご自身の滞在先が首都圏なら、まず「最低何日必要か」から調べてください。首都圏以外なら、まず「最長何日までか」から調べる。入口が逆になります。
ちなみに、上限と下限の両方を持つ珍しい例もありました。市川市です。「1回の体験につき、原則1週間以上1か月以内とします。」と、下と上の両方を一文で示しています。1週間という下限は今回見た中でもかなり緩いほうで、しかも上限は1か月。滞在の長さがどちらに転んでも収まりやすい書き方になっています。
自治体別に見る、期間の条件と締切
ここまでの内容を、「体験入学」「聴講」として受け入れている自治体を中心に一覧にします。原文の言い回しをそのまま載せています。数字だけを抜き出すと条件を読み違えるためです。
| 自治体 | 呼称 | 期間の条件(原文) | 締切 |
|---|---|---|---|
| 相模原市 | 体験入学 | 「受入先の学校と保護者が協議の上、校長が許可した期間(原則年1回、最長2週間程度)。」 | 期限の定めはなく、学校へ直接 |
| 浜松市 | 聴講生 | 「1.受け入れの期間は概ね2週間とします。」 | 「日本に帰国してから、直接、希望される学校で申請してください。」 |
| 熊本市 | 体験入学 | 「概ね1ヶ月程度、小・中学校において体験入学を実施しています。」 | 「教育委員会でのお手続は不要です。」 |
| 十和田市 | 体験入学 | 「原則として2週間以内 ※ただし、年度始(4・5月)及び年度末(2・3月)を除く。」 | 1か月前 |
| 名寄市 | 体験入学 | 要項第3条「原則、2週間以内(土日祝日を含む)とし、同一年度内(4月1日から翌年3月31日)で1回までとする。ただし、過去に名寄市で体験入学をしたことがある児童生徒については、教育長が認めるときは、2週間を超える期間の体験入学をすることができる。」 | 1か月前(事前訪問は開始日の3日前まで) |
| 豊見城市 | 体験入学 | 「1.体験入学期間は、原則として2週間以内となります。」 | 公式ページでは確認できず |
| 北本市 | 体験入学 | 「体験入学受け入れ期間は、6月1日から翌年1月31日(夏季休業日、冬季休業日は除く)までの期間で、30日以内です。」 | 2か月前(目安) |
| 川島町 | 体験入学 | 要綱第3条「体験入学の実施期間は、原則として30日以内とする。ただし、学校行事等により学校運営上支障がある場合は、期間を短縮することができる。」 | 1か月前(要綱第4条/事前訪問は1週間前まで) |
| 舟形町 | 体験入学 | 「期間は原則として4週間までとし、期間の短縮、保護者の方の付き添い等の条件を付すことがあります。」 | 1か月前(事前訪問は3営業日前まで) |
| 焼津市 | 体験入学 | 「体験入学の期間は、原則4週間までとし、期間の短縮や保護者の付き添い等条件を付すことがあります。」 | 公式ページでは確認できず |
| 大垣市 | 聴講 | 受入要件「5 聴講期間が聴講開始日から原則1ヶ月以内であること」 | 「帰国する2ヶ月ほど前」に学校へ事前連絡 |
| 市川市 | 体験入学 | 「1回の体験につき、原則1週間以上1か月以内とします。」受入可能期は「5月から翌年の2月までの期間とします。」 | 「必ず2か月前までにはお申し込みください。」 |
この表に入れていない自治体もあります。さくら市は「最大1か月程度」、甲賀市は要綱第3条で「1月以内」、蒲郡市は大垣市と同じ「聴講期間が聴講開始日から原則1ヶ月以内であること」、忍野村は「体験入学期間は原則1か月以内となります。」。いずれも1か月の山にいます。一方、大阪市・堺市・新潟市・静岡市・名古屋市については、体験入学に関する公式の記載を今回は確認できませんでした(堺市は電子申請手続の一覧に「体験入学許可願」という様式名だけが確認できました)。記載が見つからないことと、受け入れていないことは別です。個別の問い合わせが必要になります。
「夏休みに体験入学」という前提が崩れる自治体があります
ここが、日程を組むうえでいちばん危ないところです。多くのご家庭は夏休みに帰国します。学校がある時期に子どもを日本に連れて行くのは難しいからです。ところが、その夏休みを在籍日数に数えない自治体があります。
三鷹市は「在籍期間が21日間以上であること(夏休み等の長期休業期間は含みません。)」。渋谷区は「夏休みや冬休みなどの学校の休業期間を除いて、4週間以上継続して就学ができること」。荒川区は「荒川区内に滞在し、通学期間が概ね2週間以上であること(長期休業を除く期間)」。調布市は「始業式と終業式を除く2週間以上通学が可能であれば」。北本市の受入期間は「6月1日から翌年1月31日(夏季休業日、冬季休業日は除く)までの期間で、30日以内です。」。世田谷区も「宿泊行事や長期休業中に実施される事業の参加のみを目的とした就学はできません」としています。
この一行の意味を、日程に置き換えてみます。八月一日から八月十四日まで日本にいる、という二週間の帰国を考えます。荒川区は「長期休業を除く期間」で概ね2週間以上を求めていますから、この二週間はまるごと夏季休業に入っていて、数えられる日数はゼロになります。二週間いるのに、条件を満たす日数は一日もない。渋谷区の4週間も、三鷹市の21日も同じ計算になります。「二週間も日本にいるのだから足りるはず」という感覚が、そのまま通用しないということです。
逆の数え方をしている自治体もあります。名寄市の要項は「原則、2週間以内(土日祝日を含む)」と書いており、土日も祝日も数に入れる暦日カウントであることを明示しています。同じ「2週間」でも、片方は登校日だけを数え、片方は休みも含めて数える。数え方が自治体によって正反対です。日数を比べるときは、必ず「何を数えた日数か」までセットで確認してください。
なお、長期休業を数えないという記載は、今回調べた政令指定都市では一件も見つかりませんでした。この論点も、下限と同じく首都圏の区市に集中している印象です。ただし「記載がない=夏休みも数える」と断定はできません。夏休みだけの帰国を予定しているなら、そこは口頭でも確認しておいたほうが安全です。
夏の帰国に関しては、活動の中身にも制限があります。京都市は夏季休業期間中のプール活動への参加を原則不可としており、大垣市も参加できない活動として「ウ 夏季休業期間中のプール活動」を挙げています。夏に帰国してプールを楽しみに、という絵は、自治体によっては最初から成り立ちません。
締切は「1か月前」と「2か月前」に割れている
期間が決まったら、次は締切です。ここも数字がきれいに割れました。1か月前と2か月前の二極です。
2か月前を求めているのは、市川市(「必ず2か月前までにはお申し込みください。」)、北本市(目安として2か月前)、そして大垣市・蒲郡市です。大垣市と蒲郡市は締切という書き方ではなく、「帰国する2ヶ月ほど前」に学校へ事前連絡をするよう案内しています。1か月前は十和田市・舟形町・さくら市・忍野村・名寄市、そして川島町(要綱第4条)。もっと短いところでは、小金井市が「入学予定日の2週間前までに学務課学務係へご相談ください。」としています。
申込みとは別に、事前訪問の期限を設けている自治体もあります。名寄市は「体験入学開始日の3日前(土日祝日を除く)まで」、舟形町は3営業日前まで、川島町は1週間前まで。申込みが通っても、事前訪問が間に合わなければ初日に間に合いません。到着日を基準に逆算するときは、この二段階を忘れないでください。
一方で、締切を設けていない自治体もあります。相模原市は学校へ直接。浜松市は「日本に帰国してから、直接、希望される学校で申請してください。」と、帰国後の申請を明示しています。熊本市は「教育委員会でのお手続は不要です。」。加古川市は「必ず帰国前に体験入学を希望される学校へお問い合わせください。」と、日数ではなく帰国前という形で示しています。締切がないほうが自由に見えますが、その分、学校側の受け入れ可否が読めません。数字が書いていない自治体こそ、早めに電話を入れる価値があります。
締切の理由が日数として書かれている例はごくわずかでした。今回、給食の申込期限を日数で明記していたのは忍野村だけで、「希望される場合は2週間前までに忍野村教育委員会へお申し込みください。」としています。市川市は給食を別建てにしていて、帰国後に「体験入学許可願」及び「学校給食申出書」を提出し、「※必ず体験入学開始日の前日開庁日までにご来庁ください。」という手順です。申込みの締切と、給食の締切と、来庁の締切が別々に走っていると考えておくと安全です。
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日数より上に来る条件があります
ここまで日数の話をしてきましたが、日数を計算する前に決着がついてしまう条件があります。住民票です。
豊見城市の説明が、いちばん端的です。「日本国籍を有し、一時帰国した時点で豊見城市に住民票を有する方(帰国後に手続きした方も含む)につきましては、手続き上、滞在日数にかかわらず、体験入学ではなく、校区の学校への「編入学」となります。」。滞在日数にかかわらず、と明記されています。何日いるかを計算する前に、住民票の有無で道が分かれてしまうということです。
同じ趣旨の記載は各地にあります。さくら市は「住民票をさくら市に異動する場合は、体験入学ではなく編入学となります」。焼津市は「体験入学は、住民登録を海外転出している方が対象です。」。浜松市は「住民登録をした場合は編入学となります。」としたうえで、逆方向の条件も書いています。「住民票を置いたまま海外へ出国した者が一時帰国又は一時入国し聴講を希望する場合、聴講生としての入学を許可することはできません。」。住民票を抜いていないと、聴講生にはなれないという意味です。海外赴任のときに住民票をどうしたかで、数年後の一時帰国の選択肢が変わります。
住民登録がなくても正式な就学として受ける、という自治体もあります。札幌市は「なお、札幌市では体験入学という制度は設けておりませんので、短期間であっても正式にご入学していただきます。」「帰国による一時的な滞在であっても、学校に入学することはできます。」。岡山市は「岡山市立の学校には体験入学制度はありません。正式な就学扱いになります。」(住民登録をしない場合は民生委員による滞在証明が必要とされています)。広島市は「広島市に住民登録をしていない学齢児童・生徒の市立学校への入学を許可します。」。中野区も「住民登録の有無に関わらず」10日以上で編入学として受け入れる、と書いていました。住民票の有無は「通えるかどうか」ではなく「どの枠で通うか」を決める分岐だと理解しておくのが正確です。

回数の制限もあります。相模原市は「原則年1回、最長2週間程度」と、期間と回数をひとつの括弧に入れています。名寄市の要項第3条は「同一年度内(4月1日から翌年3月31日)で1回までとする。」。ただし名寄市には続きがあって、「過去に名寄市で体験入学をしたことがある児童生徒については、教育長が認めるときは、2週間を超える期間の体験入学をすることができる。」。一度その市で体験入学をした子には、上限が緩む余地があるという書き方です。同じ市に何度も帰る予定があるなら、これは知っておく価値があります。
目的による制限も、日数と同じくらい重く効きます。名寄市は「日本滞在中の児童生徒の居場所として預ける場合は、体験入学を認めない。」と明記。小金井市は「お子様の預け先の確保・見学・行事参加のみを目的とした受け入れはいたしかねます」。墨田区は「滞在期間が極端に短い場合や語学学習を目的とした場合は、編入学をお断りさせていただく場合があります。」。日数が条件を満たしていても、申込書に書く目的の書き方で結果が変わりうる、ということです。また十和田市は対象を「小学校1年生〜中学校2年生までの児童生徒」としており、中学3年生は日数にかかわらず対象外です。
いつ帰国すれば通りやすいのか
ここまでの条件を、カレンダーの上に置き直します。すると、日数とは別に「そもそも受け付けていない時期」がはっきり見えてきました。

受入外の時期を書いている自治体を並べます。十和田市は年度始(4・5月)と年度末(2・3月)を除く。忍野村は「原則として3月、4月の体験入学は行っておりません。」。北区と荒川区は3〜4月を原則受入なし。小金井市は「年末・年度末・年度初め・学校行事期間中の受け入れはできません。」。北本市の受入期間は6月1日から翌年1月31日まで、市川市は5月から翌年2月まで。葉山町にいたっては要綱第3条で「6月1日から夏季休業前までの期間のうち学校長が認める期間」と、窓が夏休み前で閉じます。
整理すると、3月・4月はほぼ全国的に受入外です。年度末は成績処理と卒業式、年度初めはクラス編成と入学式で、学校がいちばん動けない時期だからでしょう。日本の年度が四月始まりであることを考えると、「新学期の雰囲気を体験させたい」という発想は自然なのですが、それはほぼ確実に断られる時期でもあります。
では、いつがいちばん通りやすいのか。ここまでの条件を重ね合わせると、答えは九月になります。理由は三つあります。第一に、3月・4月の受入外の窓から最も遠い。第二に、夏季休業を日数に数えない自治体(三鷹市・渋谷区・荒川区・調布市・北本市)でも、九月は登校日がそのまま日数に積み上がります。第三に、北本市の6月1日〜1月31日、市川市の5月〜翌2月という受入期間の窓にも、九月はきれいに収まります。夏休みを狙うほど条件が厳しくなり、休み明けに寄せるほど条件が緩むという、直感とは逆の構造になっているのです。
もちろん、九月に子どもを日本に連れて行けるご家庭ばかりではありません。現地校が始まっているからです。ただ、八月後半から九月上旬にかけて滞在をずらすだけでも、数えられる日数はかなり変わります。八月一日から十四日の二週間より、八月二十五日から九月七日の二週間のほうが、長期休業を除外する自治体では圧倒的に有利です。同じ二週間でも、置く場所で結果が変わります。
滞在日数から逆算する
最後に、ご自身の日程を当てはめる手順にまとめます。使うのは、ここまで出てきた条件だけです。
- 滞在が1週間以下:選択肢はかなり狭くなります。町田市の「原則5日」、市川市の「原則1週間以上1か月以内」の下限がぎりぎり届く範囲です。首都圏の2週間以上・3週間以上・4週間以上を求める区市には届きません。上限型の自治体(相模原市・浜松市・熊本市など)は下限を課していないので、日数の面では可能性が残ります。
- 滞在が2週間:いちばん多い長さです。上限型の自治体(相模原市「最長2週間程度」、浜松市「概ね2週間」、十和田市・豊見城市「原則2週間以内」、名寄市「2週間以内(土日祝日を含む)」)とちょうど噛み合います。下限型では、中野区の10日以上、町田市の5日は余裕をもって満たし、文京区・台東区・墨田区・北区・荒川区・調布市・小金井市の2週間はぎりぎり。港区・品川区の3週間以上、三鷹市の21日、渋谷区の4週間以上には届きません。
- 滞在が2週間で、まるごと夏休みに入っている:ここが要注意です。三鷹市・渋谷区・荒川区・調布市・北本市のように長期休業を数えない自治体では、数えられる日数がほぼゼロになり、条件を満たせません。この場合は、日程を休み明けにずらすか、長期休業の除外規定がない自治体を選ぶかの二択になります。
- 滞在が3〜4週間:選択肢がいちばん広がる長さです。港区・品川区の3週間以上、三鷹市の21日、渋谷区の4週間以上にも届きます。ただし上限側に当たります。相模原市・浜松市・十和田市・豊見城市・名寄市は2週間が上限なので、超えた分は通えません。舟形町・焼津市の4週間、川島町・北本市の30日、熊本市・大垣市・蒲郡市・さくら市・甲賀市・忍野村・市川市の1か月あたりが上限の目安です。
- 滞在が1か月以上:ほとんどの自治体の上限を超えます。全期間を通わせることはできず、上限までで区切ることになります。名寄市は同一年度内1回までですが、「過去に名寄市で体験入学をしたことがある児童生徒については、教育長が認めるときは、2週間を超える期間の体験入学をすることができる。」という例外を置いています。また、住民票を移して正式な編入学にするという道もありますが、豊見城市・さくら市・焼津市・浜松市が書いているとおり、その瞬間に体験入学ではなくなります。
- 滞在が3月・4月にかかる:日数がいくらあっても厳しい時期です。十和田市(4・5月と2・3月を除く)、忍野村(3月・4月は行っていない)、北区・荒川区(3〜4月は原則受入なし)、小金井市(年度末・年度初めは不可)、北本市(6月1日〜1月31日)、市川市(5月〜翌2月)。この時期は、通えるかどうかではなく受け付けているかどうかから確認してください。
そして、逆算の一番外側にもうひとつ枠があります。締切です。2か月前を求める自治体(市川市・北本市・大垣市・蒲郡市)がある以上、「行きたい時期の2か月前」が実質的な検討開始のデッドラインになります。1か月前が締切の自治体でも、事前訪問の期限(名寄市3日前、舟形町3営業日前、川島町1週間前)が別に走ります。航空券を取る前に、滞在先の市の締切だけは先に調べておくと、あとの選択肢が減りません。
日数の設計では届かないもの
ここまで、日数の話ばかりしてきました。最後に一つだけ、日数では解けないことを書かせてください。
条件をうまく満たして、二週間なり一か月なり日本の教室に座れたとします。それは間違いなく良い経験です。日本語だけで一日が流れる感覚、同じ年の子の話す速さ、掃除の時間。海外で暮らしていると得られないものが、確かにそこにあります。同時に、二週間や一か月では動かないものもあります。学年相当の読み書きです。会話は保てていても、教科書の文章を読む力だけが止まりやすい。短い体験入学は、その差を「見える化」してくれますが、埋めるのには別の時間が要ります。
私たちともだちじゃぱんは、その体験入学の代わりではなく、帰国と帰国のあいだの期間を受け持つ側にいます。日本の現役水準の教員が、8人の少人数クラスで学年相当の国語を教えます。授業の時間帯は海外の時差に合わせています。そして、日本に住む同世代の友達が毎日そこにいます。次の一時帰国が、はじめての学校見学ではなく、会いに行く再会になる。日数の条件を調べながら、その先のことも少しだけ考えていただけたらと思います。
よくある質問
体験入学は、何日あれば足りますか?
2週間あれば、上限型の自治体とはほぼ噛み合います。相模原市は「最長2週間程度」、浜松市は「概ね2週間」、十和田市・豊見城市は「原則2週間以内」で、いずれも下限を課していません。一方、首都圏には最低日数を課す区市があり、港区・品川区は「3週間以上」、三鷹市は「21日間以上」、渋谷区は「4週間以上」を求めています。最も短い条件は町田市の「原則5日」、次が中野区の10日以上でした。滞在先が首都圏かどうかで、確認すべき数字が上限か下限かに分かれます。
夏休みだけの帰国でも通えますか?
長期休業を在籍日数に数えない自治体があるため、そのままでは条件を満たせないことがあります。三鷹市は「在籍期間が21日間以上であること(夏休み等の長期休業期間は含みません。)」、渋谷区は「夏休みや冬休みなどの学校の休業期間を除いて、4週間以上継続して就学ができること」、荒川区は「(長期休業を除く期間)」、調布市は「始業式と終業式を除く2週間以上」、北本市は受入期間から「夏季休業日、冬季休業日は除く」としています。逆に名寄市は「2週間以内(土日祝日を含む)」と暦日で数えることを明示しており、数え方は自治体で正反対です。夏休みに合わせるなら、まず「何を数えた日数か」を確認してください。
いつ申し込めばいいですか?
2か月前を目安に動くと、ほとんどの自治体に間に合います。市川市は「必ず2か月前までにはお申し込みください。」、北本市も目安として2か月前、大垣市・蒲郡市は「帰国する2ヶ月ほど前」に学校へ事前連絡を求めています。1か月前は十和田市・舟形町・さくら市・忍野村・川島町・名寄市。小金井市は「入学予定日の2週間前まで」です。申込みとは別に事前訪問の期限を設けている例もあり、名寄市は開始日の3日前(土日祝日を除く)まで、舟形町は3営業日前まで、川島町は1週間前まで。相模原市・浜松市・熊本市のように締切を設けず学校へ直接という自治体もあります。
1か月以上日本にいる場合はどうなりますか?
ほとんどの自治体で上限を超えるため、全期間は通えません。上限は熊本市・大垣市・蒲郡市・さくら市・甲賀市・忍野村・市川市が1か月、舟形町・焼津市が4週間、川島町・北本市が30日、相模原市・浜松市・十和田市・豊見城市・名寄市が2週間です。名寄市には例外があり、「過去に名寄市で体験入学をしたことがある児童生徒については、教育長が認めるときは、2週間を超える期間の体験入学をすることができる。」としています。なお、住民票を日本に移すと扱いが変わります。豊見城市は住民票がある場合「滞在日数にかかわらず」体験入学ではなく編入学になると明記しています。
年度末(3月)の帰国でも受け入れてもらえますか?
3月・4月は受け入れていない自治体が多く、日数にかかわらず難しい時期です。十和田市は「年度始(4・5月)及び年度末(2・3月)を除く」、忍野村は「原則として3月、4月の体験入学は行っておりません。」、小金井市は「年末・年度末・年度初め・学校行事期間中の受け入れはできません。」としています。北区・荒川区も3〜4月は原則受入なし。受入期間そのものを区切っている例もあり、北本市は6月1日〜翌年1月31日、市川市は5月〜翌年2月、葉山町は要綱第3条で「6月1日から夏季休業前までの期間のうち学校長が認める期間」としています。
同じ年に2回、体験入学に行くことはできますか?
回数を制限している自治体があります。相模原市は「原則年1回、最長2週間程度」、名寄市は要項第3条で「同一年度内(4月1日から翌年3月31日)で1回までとする。」としています。名寄市の年度は4月1日から翌年3月31日と定義されているため、たとえば同じ暦年でも3月と8月なら別年度になります。回数の記載がない自治体もありますが、その場合も学校の受け入れ体制次第です。夏と冬の両方を考えているなら、申込みの段階でその予定を伝えて確認するのが確実です。



