本帰国 準備と検索すると、出てくるのは住民票、船便、免税、住民税、家探しといった言葉です。どれも必要な情報ですが、この記事はそこには触れません。子どもの教育まわりの準備だけを、帰国日から逆算して並べます。荷物は最悪あとから送れますが、学校と国語の準備は、あとから取り戻すのに何倍も時間がかかるからです。
駐在の内示は、たいてい急に出ます。3か月後と言われることもあれば、1年後と言われることもある。どちらの場合でも、やる順番は同じです。順番さえ間違えなければ、時間が短くても打つ手はあります。

最初に決めるのは「いつ帰るか」ではなく「どの学年で帰るか」
帰国の日程は会社が決めるもので、家庭に選択の余地がないことも多いはずです。それでも最初に確認してほしいのは、その帰国日が、子どもにとってどの学年・どの時期の帰国になるのかです。ここが後の選択肢をほとんど決めてしまいます。
理由は二つあります。ひとつは、帰国枠(帰国生入試)には在外年数と帰国後年数の条件があること。学校ごとに違いますが、「海外在留◯年以上」「帰国後◯年以内」という形で線が引かれているのが一般的です。帰国が数か月ずれるだけで、使えるはずだった枠が使えなくなる、あるいは逆に使えるようになる、ということが起こります。
もうひとつは、日本の学校が4月始まりで、海外の多くの学校が8月・9月始まりだということです。現地で学年の途中まで進んでいた内容と、日本で入る学年の進度がずれます。とくに国語は積み上げの教科なので、ずれた分がそのまま「わからない」として残ります。
だから最初の作業は、荷物のことでも手続きのことでもなく、紙に「帰国日」「そのとき子どもは何歳・何年生」「日本で入る学年」「帰国枠を使うのか使わないのか」を書き出すことです。これが決まらないと、あとの準備はすべて宙に浮きます。
本帰国が決まってからの、12か月逆算スケジュール

12か月前|学年と、受験の選択肢を確定する
帰国枠を使うのか、一般入試なのか、公立に編入するだけなのか。ここを決めます。受験を考えるなら、この時期に志望校の募集要項に書かれた在外年数・帰国後年数の条件を、学校のサイトで直接読むことをおすすめします。まとめサイトの一覧は便利ですが、条件は年度ごとに変わります。
もうひとつ、この時期にやっておくと後が楽なのが一時帰国の計画です。学校見学や説明会、模試の受験は、実際に日本にいないとできないことが多い。帰国そのものより前に、一度日本の学校の空気に触れておくと、子どもの心の準備もずいぶん違います。
6か月前|国語の現在地を、家庭の主観ではない基準で測る
ここが、この記事でいちばん強調したいところです。海外で日本語を続けてきた家庭のほとんどは、自分の子が学年相当からどれだけ離れているかを知りません。補習校の宿題はやっている。家では日本語で話している。だから大丈夫だろう、と思ってしまう。
けれど日本の教室で使われる日本語は、家庭の会話とは別ものです。漢字は小学校6年間で1,026字が学年ごとに割り当てられており、そのペースが海外で止まっていれば、その分がそのまま空白になります。「1年ぶんの遅れ」なのか「3年ぶんの遅れ」なのかで、打つべき手はまったく変わります。
測り方は難しくありません。学年別漢字配当表を使って学年ごとの漢字を書かせてみる、あるいは漢検の級を受けてみる。級は学年に対応しているので、「小5だけれど7級(小4修了程度)がやっと」という現在地が数字で出ます。ここで初めて、残り6か月で何をすべきかが決まります。
3か月前|学年相当の国語を、毎週の予定に入れる
遅れの大きさがわかったら、そこを埋める時間を生活に組み込みます。ポイントは「帰国してから始めればいい」と考えないことです。帰国直後の数か月は、家探し、荷ほどき、手続き、新しい学校への適応で、家庭がいちばん忙しい時期です。そのタイミングで国語の遅れに向き合うのは、現実的ではありません。
もうひとつ、漢字だけを詰め込まないでください。教室で困るのは書き取りではなく、教科書の説明文が読めない、考えを文章で書けないほうです。漢字は〔知識及び技能〕、読む・書くは〔思考力、判断力、表現力等〕として、学習指導要領でも別の領域に置かれています。ドリルを何冊やっても、読解と記述は自然には育ちません。
1か月前|在籍校でしかもらえない書類をそろえる
ここは事務作業ですが、取りこぼすと帰国後に取り寄せるのが本当に面倒な部分です。とくに日本人学校や補習校を離れると、担当者との連絡が取りづらくなります。出国前に、まとめて受け取ってください。

日本人学校に在籍していた場合は、在学証明書・指導要録の写し・健康診断票・教科書給与証明書が基本のセットです。教科書給与証明書は、帰国後に教科書を無償で受け取るために使います。現地校やインターに通っていた場合は、在学証明書と成績証明書(トランスクリプト)を、可能であれば英文と和訳の両方でもらっておくと安心です。
帰国枠での受験を考えているなら、海外に住んでいたことを証明する書類も必要になります。在外公館が発行する在留証明や、パスポートの出入国記録がこれにあたります。パスポートは更新すると古い記録が手元から消えることがあるので、出国前にページを撮影しておくと安全です。手続きの全体像は帰国の編入手続きと学年の記事にもまとめています。
帰国後すぐ|転入届 → 教育委員会 → 就学通知 → 編入学
公立の小中学校に入る場合、順番は制度で決まっています。文部科学省の説明によれば、住所地の教育委員会は住民基本台帳に基づいて学齢簿を編製し、保護者に対して就学すべき学校の指定・編入学期日を通知することになっています。つまり、まず住民登録をしないと話が始まりません。
そして学年は、原則として、その年齢に応じた相当学年に編入学します。日本語の力が学年相当かどうかは、原則を変える理由になりません。ここが多くの家庭にとって想定外です。「日本語が追いついていないから1学年下げてもらおう」と考えていても、そうはならないのが原則だ、ということです。
結局、帰国前にしか埋められないものは何か
ここまでの準備を並べると、ひとつの事実が浮かびます。書類も手続きも家探しも、帰国してからでもなんとかなります。手間はかかりますが、取り返しがつく。取り返しがつきにくいのは、学年相当の国語だけです。しかも帰国後は原則として相当学年に入るので、遅れたまま日本の教室に座ることになります。
では帰国前に、海外にいながら学年相当の国語を続ける方法にはどんなものがあるか。正直に並べます。
| 補習授業校 | 大手の帰国生塾 | オンライン家庭教師 | ともだちじゃぱん | |
|---|---|---|---|---|
| 主な役割 | 土曜に学年集団で学ぶ | 志望校別の受験対策 | 1対1で個別に補う | 学年相当の国語を毎週続ける |
| 通える条件 | 近くにある地域に限る | 教室か対面が中心 | 時間が合えば世界中から | オンラインで世界中から |
| 読解・記述 | 扱う | 受験の形式で扱う | 講師により差が大きい | 教科書と同じ水準で扱う |
| 教える人 | 現地の日本人講師など | 受験指導の専任講師 | 大学生講師が主流 | 日本の現役水準の教員 |
| 同世代とのつながり | 同じ立場の友だちができる | 受験仲間ができる | 基本は1対1 | 日本に住む同世代と8人まで |
| 費用の目安 | 地域により差が大きい | 要問い合わせ | 時間あたりで課金 | 月額定額(通い放題) |
並べてわかるのは、それぞれ役割が違って、代わりにならないということです。補習校には学年集団と同じ立場の友だちがあり、帰国生塾には志望校別のノウハウがあります。私たちが引き受けたいのはそこではなく、「帰国前に、海外にいながら、学年相当の国語を止めない」という一点です。併用していただいて構いません。

ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の教員が、学年相当の国語を8人までの少人数で教えるオンラインスクールです。授業には日本に住む同世代の子どもたちがいます。帰国したときに、教室に知っている顔があること。これは学力とは別の意味で効きます。帰国してからなじめないという悩みは、準備の段階ではあまり想像されませんが、実際にはかなり多い相談です。
あわせて、帰国前の日本語の準備、帰国子女の国語「できない」の正体、漢字が読めない・書けない理由、公立校の日本語指導(特別の教育課程)もご覧ください。
よくある質問
帰国まであと3か月しかありません。何から手をつけるべきですか?
順番は変わりません。①日本で入る学年を確定する ②国語の現在地を測る ③在籍校の書類をそろえるの3つを、この順で片づけてください。3か月で学年相当まで追いつくのは難しいですが、遅れの大きさを把握して帰国するのと、知らずに帰国するのとでは、その後の1年がまったく違います。学校に相談するときも、数字があるほうが話が早く進みます。
日本語が学年相当でないので、1学年下げて編入させたいのですが
原則としては、年齢に応じた相当学年への編入学になります。ただし文部科学省の説明では、日本語能力が著しく欠如しているなど特別の事情がある場合に、一時的に下級の学年に編入する措置をとることも可能とされています。あくまで例外的な扱いで、保護者と本人の意向の確認が前提です。希望がある場合は、居住予定地の教育委員会に早めに相談してください。
教科書給与証明書は、もらわないとどうなりますか?
帰国後に転入先で教科書を無償で受け取るための書類です。なくても最終的には対応してもらえることが多いのですが、確認や再発行の手間が発生します。出国前に在籍校でもらえるものなので、他の書類とまとめて受け取っておくのが確実です。日本人学校に在籍していた場合は、卒業・転出の手続きの中で案内されるのが一般的です。
帰国枠を使うかどうかは、いつまでに決めればよいですか?
受験を考えるなら1年前には方針を決めておきたいところです。帰国生入試は一般入試より早く、11月下旬から12月に始まる学校があります。つまり「4月に帰国して、それから受験を考える」では間に合わない学年が出てきます。志望校が決まっていなくても、帰国枠を使う可能性があるかどうかだけは早めに確認してください。在外年数の条件を満たしているかは、帰国日で決まってしまいます。
上の子と下の子で、優先順位をどうつければいいですか?
受験の学年に近い子(小6・中3・高3)の準備が、日程の制約が最も強いので先に固めます。ただし国語の遅れという意味では、下の子のほうが深刻になりやすい点に注意してください。海外滞在が長いほど、日本語で学んだ期間が短くなります。上の子の受験に家庭のリソースが集中して、下の子の日本語が数年止まっていた、というのは実際によくある形です。
帰ってからでは間に合わないほうを、帰る前に。
ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の教員が学年相当の国語を8人までの少人数で教えるオンラインスクールです。月額定額(通い放題)、2026年12月開校予定。事前登録いただくと、開校情報と体験会のご案内をいちばんにお届けします。
逆算リストの最後に来るのが、帰国後いつから登校させるかという判断です。小学校はいつから通えるのかもあわせてご覧ください。

