帰国が決まって最初にやることは、子どもを受け入れてくれる学校を見つけること――そう思って「帰国子女 受け入れ校」で検索し、そこで手が止まった方が多いはずです。塾や情報サイトの「一覧」は出てくるのに、公式の名簿らしきものがどこにも見当たらない。これには理由があります。「受け入れ校」という言葉は、学校段階によって意味がまるごと入れ替わるからです。小学校・中学校では「受け入れてもらえるか」を心配する局面ですらなく、高校で初めて実在の区別になり、大学では学部単位の話に変わります。この記事は各段階の中身には立ち入らず、言葉の意味がどこで切り替わるのかと、どの資料をどの順に見るのかだけを、公式の一次資料から整理します。制度の全体像は帰国子女枠とは何かの整理へ。
「受け入れ校」は、3つの別々の意味で使われている
検索する人は1つの言葉を使いますが、返ってくるべき答えは3つに分かれます。ここを混ぜたまま探すから、いつまでも「一覧」が見つかりません。
- 小学校・中学校=受け入れ「体制」――義務教育なので、席そのものは制度として用意されています。差がつくのは受け入れの可否ではなく、日本語指導や帰国児童生徒教育の実績と体制です。
- 高校=受け入れ「校」――義務教育ではないため、ここで初めて募集している学校と、していない学校が実在します。言葉が文字どおりの意味になる唯一の段階です。
- 大学=受け入れ「学部」――帰国生入試(外国の学校出身者を対象とする入試)を実施しているかどうかで決まり、しかも大学単位ではなく学部単位で分かれます。

小学校・中学校――探すのは「可否」ではなく「体制」
まず、いちばん多い誤解から外します。公立の小中学校について「受け入れ校を探す」という発想は、半分間違いです。
文部科学省の「就学事務Q&A」は、外国から帰国した学齢児童生徒の就学手続について、帰国した日本国民である学齢児童生徒の保護者にはその時点から就学義務が発生し、住所地の市区町村教育委員会が住民基本台帳に基づいて学齢簿を編製して就学すべき学校を通知する、と整理しています。編入学の学年は原則として年齢に応じた相当学年です。つまり、席は制度として用意されている。「受け入れてもらえなかったらどうしよう」と眠れなくなる場面ではありません。
同じQ&Aには例外的な取扱いも書かれています。学校生活に適応するまで一時的に下級の学年に編入する措置や、特別な理由がある場合に継続して下級学年で学ぶ扱いです。本当の論点は「入れるか」ではなく、どの学年に、どんな支援つきで入るかなのです。

では体制の差はどこに出るのか。文部科学省が2026年5月25日に公表した「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」(令和7年度・調査時点は令和7年5月1日)では、公立学校に在籍する日本語指導が必要な児童生徒は84,759人と過去最高で、うち日本国籍が11,446人でした。ただしこの11,446人には重国籍の子や保護者が外国籍の子も含まれ、帰国子女だけの数ではありません。
体制の話として効くのはむしろ次の数字です。同調査によれば、日本語指導が必要な児童生徒が1人以上在籍する公立学校は12,668校で、公立学校32,122校に対する割合は39%。5人以上在籍する学校は4,329校にとどまります。裏を返せば6割の学校には、その対象となる子が1人もいない。制度上は誰でも就学できるのに、実際に何が用意されているかが学校ごとにこれだけ違う理由が、この一行に出ています。
体制の中身をどう見分けるかは小学校の受け入れ体制を確認する記事に、公立で受けられる支援とその限界は公立の日本語指導の中身と限界にまとめました。なお国立大学附属には帰国児童生徒のための学級を置く学校があり、文部科学省は「国立大学附属学校帰国児童生徒教育学級一覧(21大学45校)」を掲載していますが、時点は平成27年5月現在のままです。最新の状況は各校に直接確認してください。国立の国際学級は都内の編入と国立の国際学級の整理が近い話です。
高校――ここで初めて「受け入れている学校」が実在する
高校は義務教育ではありません。だから「海外帰国生徒を対象に募集している学校」と「していない学校」が本当に分かれます。そして、その分かれ方が都道府県ごとにまったく揃っていません。公表資料を3つ並べるだけで、全国一覧が作れない理由が見えます。
神奈川県は「海外帰国生徒特別募集」という名称で、令和8年度は県立神奈川総合・県立横浜国際・県立新城・県立西湘・県立鶴嶺・県立相模原弥栄・県立伊志田・横浜市立東の8校を県のページに掲げています。志願資格は保護者の勤務等の関係で継続して2年以上外国に在住し、帰国した日が令和5年4月1日以降の人です。東京都は名称が「海外帰国生徒対象」で、4月入学の入学者選抜を実施する都立高校は令和8年度で4校。さらに9月入学生徒募集(海外帰国生徒・在京外国人生徒等対象)という別ルートが並走します。同じ「帰国」でも入口が複数あるわけです。
いちばん構造が違うのが大阪府です。令和8年度入学者選抜実施要項の第4「海外から帰国した生徒の入学者選抜」では、実施校が学校ではなく学科に紐づいて指定されており、別表3には総合科学科・国際文化科・英語科・グローバル科・グローバル探究科といった学科名の下に高校名が並びます。しかも大阪にはこれとは別に、別表4「日本語指導が必要な帰国生徒・外国人生徒入学者選抜」というもう一つの選抜があります。同じ府内で「帰国」の入口が二重になっているのです。
名称も、校数も、指定の単位(学校か学科か)も違う。これが「全国の受け入れ高校一覧」がどこにも存在しない直接の理由です。私立はさらに学校ごとの判断になります。高校の受け入れ校がどんな型に分かれ、どう探すかは高校の受け入れ校を型から探す記事で扱います。
大学――「受け入れ校」ではなく「受け入れ学部」で見る
大学まで来ると、言葉はもう一段ずれます。ここでの「受け入れ校」は帰国生入試を実施している大学のことですが、実施・不実施は大学単位ではなく学部単位で分かれます。「◯◯大学は帰国生を受け入れている」という言い方自体が、しばしば不正確になります。
名称も統一されていません。東京大学は「外国学校卒業学生特別選考」と呼び、第1種を私費留学生、第2種を帰国生徒と種別で分けています。「帰国生入試」で検索しても引っかからない設計です。さらに制度は年ごとに動きます。早稲田大学教育学部は2025年12月23日に「2027年度 帰国生入学試験における変更について」を公表しており、去年の情報がそのまま使えません。大学段階で信頼できる一次資料は、各大学が毎年出す学生募集要項だけです。仕組みと時期の全体像は大学受験の帰国生入試の仕組みにまとめてあります。

| 段階 | 「受け入れ校」の意味 | 学校を選べるか | 一次資料の在りか | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|---|
| 小学校・中学校(公立) | 受け入れの可否ではなく、日本語指導などの体制の有無 | 原則は住所地で決まる。選ぶのは住まいの側 | 住所地の市区町村教育委員会(学齢簿・就学通知) | 「探す」ことに時間を使い、学年と支援の相談が後手に回る |
| 小学校・中学校(国立・私立) | 帰国児童生徒学級・国際学級・帰国生入試を置く学校 | 選べる。ただし数は限られる | 文部科学省の国立大学附属一覧と、各校の募集要項 | 公表資料の時点が古く、結局は各校に直接確認が必要 |
| 高校(公立) | 海外帰国生徒を対象とする募集を実施している学校・学科 | 選べる。都道府県が実施校を指定する | 都道府県教育委員会の入学者選抜実施要項と別表 | 名称が県ごとに違う。大阪のように学科単位・複数選抜の例もある |
| 高校(私立) | 帰国生入試や編入試験を行う学校 | 選べる | 各校の入試要項と、私立中学高等学校協会の実施校一覧 | 転・編入の一覧は学期ごとの発表で、見る時期を外すと載っていない |
| 大学 | 帰国生入試(外国学校出身者対象)を実施している学部 | 学部単位で選ぶ | 各大学が毎年発行する学生募集要項 | 学部で実施・不実施が割れ、年度によって制度が動く |
「全国の受け入れ校一覧」は存在しない――代わりに見る5つの窓口
ここがこの記事のいちばんの結論です。全国の帰国子女受け入れ校を1枚にまとめた公式の名簿は、2026年8月時点で存在しません。探しても見つからないのは調べ方が悪いからではなく、そもそも作られていないからです。代わりに情報は5か所に分散しています。見る順番で並べます。
- ①文部科学省――全国名簿は公表していません。在外教育・帰国児童生徒教育の総合ページ「CLARINET」と、多言語の学校文書や教材を探せる「かすたねっと」が入口です。学校名簿としては前述の国立大学附属の一覧がありますが、時点は平成27年5月現在です。
- ②海外子女教育振興財団(JOES)――長年刊行してきた冊子「帰国子女のための学校便覧」の内容を移し、2024年11月に「全国学校情報検索サイト」を開設しました。帰国生入試の有無や編入学への対応実績といった、帰国受入校ならではの条件で絞り込めるのが特徴です。ただし利用にはJOESマイポータルへのログインが前提で、掲載内容は各校からの情報提供に基づきます。
- ③都道府県教育委員会――公立高校はここが唯一の一次資料です。名称が揃っていないので「海外帰国生徒」「帰国生徒選抜」「特別募集」など複数の語で当たってください。
- ④私立中学高等学校協会――たとえば東京私立中学高等学校協会は転・編入試験の実施校一覧を公表し、応募資格の区分に「②=海外帰国」を置いています。2学期末の転・編入試験は令和8年11月中旬頃に発表予定と案内されています。発表の時期を外すと載っていないのがこの資料の癖です。
- ⑤各校・各大学の公式サイト――最後は必ずここに戻ります。まとめサイトの一覧は当たりをつけるためのものです。

順番を間違えないでください。①どの段階の話かを決める→②その段階の一次資料に当たる→③候補校を絞る→④締切を先に押さえる。そして忘れがちですが、受け入れ校を見つけることと、出願資格を満たすことはまったく別の問題です。在外年数や帰国後の経過年数といった条件で外れることがあるので、資格の判定は出願資格を4つの軸で分解した記事で先に済ませておくと二度手間になりません。中学受験の受入校リストの読み方は帰国枠のある中学校一覧の見る順番、どの窓口に何を聞くかは誰に何を相談するかの整理へ。
最後に一つだけ。受け入れ校が決まっても決まらなくても、学年相当の日本語と国語は効き続けます。体制のある学校に入れても日本語指導はいずれ終わり、その後は全教科が日本語で進むからです。ともだちじゃぱんは株式会社NIJINが母体のオンライン日本語スクールで、学校教育法上の一条校ではなく、在籍校の代わりにはなりません。できるのは帰国前後に足りなくなる部分を埋めることです。講師は採用合格率およそ2%の選抜を通った今の日本の教室を知る現役水準の教員。8人の少人数クラスには日本に住む同世代の仲間がいて、1対1の指導と違い「友達と話したいから続く」のが特徴です。料金は通い放題で月額定額。
よくある質問
帰国したら、公立の小中学校は必ず受け入れてもらえますか?
文部科学省の「就学事務Q&A」は、帰国した日本国民である学齢児童生徒の保護者にはその時点から就学義務が発生し、住所地の教育委員会が住民基本台帳に基づいて学齢簿を編製して就学すべき学校を通知する、と整理しています。編入学は原則として年齢に応じた相当学年です。したがって「受け入れてもらえるか」を心配する局面ではありません。心配すべきは受け入れの可否ではなく、その学校に日本語指導などの体制があるかどうかです。用語の整理は帰国子女という言葉の定義もあわせてどうぞ。
「帰国子女受け入れ校」の全国一覧はどこで手に入りますか?
2026年8月時点で、全国を1枚にまとめた公式の名簿はありません。もっとも網羅的なのは海外子女教育振興財団(JOES)が2024年11月に開設した「全国学校情報検索サイト」で、冊子「帰国子女のための学校便覧」の内容を引き継いだものです。ただし利用にはJOESマイポータルへのログインが必要です。文部科学省の「CLARINET」は情報の入口であって名簿ではありません。
高校の受け入れ校はどこを見れば分かりますか?
公立は必ず都道府県教育委員会です。名称が統一されていないのが最大の落とし穴で、神奈川県は「海外帰国生徒特別募集」(令和8年度は8校)、東京都は「海外帰国生徒対象」(4月入学は4校のほか、9月入学の募集が別に存在)、大阪府は「海外から帰国した生徒の入学者選抜」で学科ごとに実施校が指定されるうえ、「日本語指導が必要な帰国生徒・外国人生徒入学者選抜」という別の選抜も並びます。転居先の都道府県名と「帰国」を組み合わせて教育委員会のサイトを直接見るのが確実です。
大学の「受け入れ校」はどう調べればよいですか?
大学名ではなく学部名で調べてください。帰国生入試は学部単位で実施・不実施が分かれ、名称も大学ごとに違います。東京大学は「外国学校卒業学生特別選考」で第1種が私費留学生、第2種が帰国生徒という区分です。制度が動く点も要注意で、早稲田大学教育学部は2025年12月に2027年度の帰国生入学試験の変更を公表しています。前年度の要項や個人ブログの情報は使わず、志望学部が今年出した学生募集要項で確認してください。
受け入れ校探しは、いつから始めればいいですか?
段階で違います。公立小中学校は帰国日が決まった時点で住所地の教育委員会に問い合わせるのが基本で、これは早すぎることがありません。高校と大学は資料の公表時期に縛られ、私立の転・編入試験の一覧は学期ごとの発表です。出願期間の3か月前には一次資料に当たり始めるのが安全圏。資格認定や事前登録の締切が出願より前に置かれている学校もあるので、締切から逆算してください。
学校段階ごとの入口はそれぞれ事情が違います。中学は受験・編入・公立の転入で窓口そのものが変わるため中学の4通りの入口を、大学は入試の名称が大学ごとにばらけるため実施している大学・学部の特定のしかたを先にご覧ください。候補が数校まで絞れたあとの決め方は見学で聞く12の質問に分けてまとめています。

