帰国子女 国語力と検索してこのページにたどり着いた方は、たいてい次のどれかの状況にいます。日本語で普通に話しているのに、日本の教科書を読ませると急に止まる。補習校の宿題は一応やっているけれど、身についている実感がない。来年あたり帰国かもしれない、でも日本の教室でついていけるのか見当がつかない。共通しているのは「不安がある」ことではなく、何を見れば分かるのかが分からないことです。
先に結論を書きます。国語力は感覚では測れませんが、家庭で見られる4つの動作に分解すれば、今の位置はかなり正確に分かります。(1)音読、(2)語彙、(3)読解、(4)記述の4つです。特別な教材はいりません。日本の学年相当の教科書か、それに近い読み物が1冊あれば、合計10分ほどで一通り見られます。
この記事は「測る」ことだけに徹します。何をどう学ばせるかは学年ごとに変わるので、末尾の関連記事に譲ります。順番が逆になると、たいてい要らない教材を買うことになります。
「国語力がある・ない」は、家庭で見える4つの動作に分解できる

海外で子育てをしていると、日本語の国語力だけが「点数の出ない教科」になります。現地校の成績表にはのっていない。補習校の通知も学校ごとにばらばらで、学年相当かどうかまでは読み取れない。だから多くのご家庭が、日常会話の印象で判断することになります。
参考になるのは国の測り方です。文部科学省は、日本語指導が必要な子どもの「ことばの力」を捉えるために、紙のテストではなく1対1の対話でおこなう対話型アセスメントDLA(令和7年4月改訂版)を公開しています。専門家の道具でも、一斉テストの点数だけでは足りないという前提に立っている。保護者が横について見るやり方は、素人の代用品ではなく本筋に近いのです。以下の4つも、どこで止まるかを見ます。止まった場所が、次に手を入れる場所です。
「帰国子女」という言葉の定義・対象になる期間・何年からあてはまるのかは、学校や制度によって違います。そこだけ先に整理したい方は帰国子女とは?定義・期間・何年からと帰国後に困ることをご覧ください。
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なぜ「日本語はペラペラなのに国語ができない」が起きるのか
言語教育では、カナダの言語学者ジム・カミンズが示した区別が広く使われています。BICS(生活言語能力)=その場の文脈に支えられた会話の力と、CALP(学習言語能力)=教科の内容を理解し抽象的な概念を言葉で扱う力です。第二言語の環境では、BICSはおおむね2〜3年で身につくのに対し、CALPは5〜7年、あるいはそれ以上かかるとされています。
この差が、海外で育つ子の国語をわかりにくくします。家庭で日本語を使っていればBICSはまず落ちないので、親からは「日本語は問題ない」ように見える。けれど教科書が要求しているのはCALPのほうです。「筆者の主張」「根拠」「一方で」は夕食の会話には出てきません。会話が流暢なほど、遅れは見えにくくなる。帰国して初めて気づくご家庭が多いのは、このためです。
もうひとつ重なるのが「9歳の壁」です。日本の小学校では小3から小4にかけて学習内容が具体から抽象へ移り、国語では説明文・論説文の比重が上がって語彙が一気に抽象化します。海外にいる子はちょうどこの時期に現地校の学習が本格化し、日本語に割ける時間が減る。壁が二重になりやすい学年です。加えて教育漢字は6年間で1,026字。学年配当があるので、学年が上がるほど未習の漢字が積み上がります。漢字が読めないと本文が読めず、本文が読めないと語彙も増えない。国語のつまずきは連鎖します。
なお、2つの言語のどちらも年齢相応まで届かない状態は「ダブルリミテッド」と呼ばれます。どちらの言語にも十分な時間と使う機会が確保されなかったときに起こりうる状態を指す言葉で、脅すためのものではありません。測る目的も同じで、順位をつけるためではなく、次の一手を決めるためです。
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家庭でできる4つの確認――何を見れば「できている」と判断できるか
確認1/音読――初見の文章を、詰まらずに読めるか
用意するのは学年相当の教科書や読み物のうち、まだ一度も読んでいないページです。読み慣れた絵本では測れません。1ページを声に出して読んでもらいます。見るのは速さではなく、なめらかさ。できているサインは、一文を息継ぎまで一気に読める、句読点で自然に切れる、読み終わったあと「どんな話だった?」に答えられる、の3つです。
逆に、1文字ずつ拾うように読む、同じ行を二度読む、読めたのに内容を覚えていない――このどれかが出たら、読みがまだ自動化していません。文字を音に変える作業に頭の容量を使い切り、意味を考える余力が残っていない状態です。ここで読解の問題集を買っても効きません。
確認2/語彙――「学校の言葉」と抽象語が分かるか
語彙は数ではなく種類を見ます。海外で育つ子は、生活語彙が豊かで学習語彙が薄いという偏り方をするのが典型です。次の3種類を分けて確かめてください。
- 接続表現:「たとえば」「つまり」「一方」「ただし」。「『一方』のあとには、前と同じことが来る? 違うことが来る?」と聞けば1問で分かります。
- 教科の言葉:「筆者」「段落」「要約」「根拠」。説明できなくても「どれが段落?」と指させれば十分。
- 抽象語:「環境」「役割」「変化」「立場」。「役割ってどういう意味? 例をひとつ言ってみて」と聞き、具体例が出せればOKです。
接続表現と抽象語だけが落ちて生活語彙は豊か、という結果はよく出ます。これは国語力が低いのではなく、使う場面がなかっただけです。原因が分かれば手の打ちようがあります。
確認3/読解――「筆者が言いたいこと」を一文で言えるか
物語文ではなく、必ず説明文で試してください。物語文は気持ちを想像して答えられてしまうので、力が過大に見えます。説明文を1つ読んで「この人がいちばん言いたかったことを、一文で言うと?」と聞く。それだけです。できているサインは、本文を丸写しせず少し自分の言葉に置き換えていて、しかも内容がずれていないこと。
つまずきは3パターン。最初の一文をそのまま言う(どこが大事か判断できていない)、事実を全部並べる(重要度の差がついていない)、話がずれる(本文が読めていないので確認1に戻る)。どれかで次の一手が変わります。
確認4/記述――自分の考えを、日本語で3文書けるか
テーマは「今日いちばん楽しかったこと」でも何でもかまいません。条件は3文で書くことだけ。日本の国語で求められる記述は、たいてい「自分の考え+理由+まとめ」の3文構造でできています。
見るポイントは4つ。主語と述語がねじれていないか、「なぜなら」「だから」で理由がつながっているか、習っているはずの漢字を使って書いているか、話し言葉のまま終わっていないか。ここは会話が流暢な子ほど差が出ます。書くことは、頭の中の言葉を「学校の日本語」に翻訳する作業だからです。
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4つの確認と、つまずいていたら次に何をするか
| 確認すること | やり方(所要時間) | 「できている」と判断できるサイン | つまずいていたら、次に何をするか |
|---|---|---|---|
| 1. 音読 (読みの自動化) | 初見の学年相当の文章を1ページ音読(2〜3分) | 文の切れ目で自然に区切れる/読み終わったあと内容を言える | 読解教材より先に、既習漢字の読みと毎日5分の音読へ。難易度は学年より下げてよい |
| 2. 語彙 (学習語彙) | 接続表現・教科の言葉・抽象語を各3語ずつ聞く(3分) | 「一方」で話が逆になると分かる/抽象語に具体例を出せる | リストの暗記ではなく、その語を使って話す場面をつくる。説明文の音読と併走させる |
| 3. 読解 (要旨をつかむ) | 説明文を1つ読み「筆者が言いたいことを一文で」(3分) | 自分の言葉に置き換えられ、内容がずれていない | 段落ごとに一文で言う練習へ分解。話がずれるなら確認1に戻る |
| 4. 記述 (考えを書く) | テーマ自由で3文書く(5分) | 主語と述語が対応し、理由が接続語でつながっている | 「考え・理由・まとめ」の型を渡し、量を求めない。書いたものに毎回反応が返る相手を用意する |
1と2が落ちているなら土台の問題です。3と4だけが落ちているなら、土台はできていて経験が足りないだけなので回復は早い。この見分けがつくだけでも、次の一手の精度はかなり上がります。
帰国が決まっている家庭は、いつ・何を測るか

- 帰国の12か月前:4つすべてを一度通す。基準点づくりが目的なので、結果に一喜一憂せず記録だけ残します。
- 6か月前:音読と語彙を再確認。土台が動いていないなら学習の総量が足りていない可能性が高く、方法を変えるならここです。
- 3か月前:読解と記述に軸を移す。あわせて転入先の学年で未習の漢字がどれだけ残るかを、学年別漢字配当表で棚卸しします。
- 帰国後1か月:もう一度4つを通す。友だちと話せているかと、教科の日本語を追えているかは別々に見てください。
帰国生入試を視野に入れているなら、逆算はもう少し早くなります。中学受験の帰国生入試は11月下旬から12月に実施する学校が多く、出願資格も学校ごとに違います。たとえば三田国際科学学園中学校の2026年度 帰国生入試 募集要項では、出願資格が「保護者の転勤等に伴い、海外に継続して1年以上在住し、帰国後3年以内の者」、入試日が第1回11月21日・第2回12月10日でした。「海外1年以上・帰国後2〜3年以内」が相場ですが、年数も日程も学校差が大きく年度で変わります。必ず志望校の公式ページで最新の募集要項をご確認ください。
測ったあと、結果を変えるのは「使う相手」がいるかどうか
4つの確認をやってみると、多くのご家庭で似た結果が出ます。音読はそこそこ、生活語彙は豊か、けれど抽象語と記述が弱い。ここを埋める教材はすでにたくさんあります。Z会や進研ゼミは学年相当の内容を体系立てて届けてくれますし、公文は読みの自動化を積み上げる仕組みとしてよくできている。帰国子女アカデミーやEDUBALのように帰国生入試の事情に詳しいサービスもあります。まず教材を1本決めて回すのは、正しい選択です。
そのうえで、測ったあとに残りやすい空白がひとつあります。読み書きは教材で積めますが、積んだ言葉を使う相手は教材からは出てきません。「一方」「したがって」は、誰かに向かって使い、通じたり通じなかったりする経験を通してしか自分の言葉になりません。海外だと、この相手だけが構造的に手に入りにくい。補習校が近くにない、時差が合わない、クラスに同学年の子が数人しかいない。よく聞く話です。
ともだちじゃぱんは、その空白を埋めるところに立っています。武器は3つ。日本の同世代の子どもたちと毎日話せること、日本の現役水準の先生が見ること、8人の少人数クラスであること(2026年12月開校のパイロットです)。人数が少ないほど、一人あたりの発話量が増えます。教材で読み書きを積み、こちらで使う相手を得る。併用でかまいませんし、そのほうがうまくいきます。料金は通い放題の月額定額制で、詳細は資料でご案内しています。まずは今日、4つの確認をやってみてください。
よくある質問
日本語で友だちと普通に話せています。それでも測る必要がありますか。
はい。会話の力(生活言語)は2〜3年で身につく一方、教科の内容を扱う力(学習言語)は5〜7年かかるとされています。別物なので、流暢さは国語力の証拠になりません。確認2の抽象語と確認4の記述で差が出やすいはずです。
測った結果、学年よりかなり下でした。どう受け止めればいいですか。
海外で日本語に触れる総量は、日本にいる子と比べればどうしても少なくなります。学年相当より下に出るのは、能力ではなく時間の問題であることがほとんどです。子どもの前で「できていない」と言わず、止まった場所だけ記録してください。数か月後に同じ文章で測ると、伸びが見えます。
何年生の教材で測ればいいですか。
最初は学年相当で試し、音読が明らかに止まるなら1学年ずつ下げて、なめらかに読める学年を見つけてください。その学年が今の目安です。確認3と確認4は読める学年の文章でかまいません。
補習校に通っていれば、測らなくても大丈夫でしょうか。
補習授業校は世界に246校あり、通えるご家庭には大きな支えです。ただ週1回という時間の制約は残ります。宿題をこなせていることと、学年相当の読解・記述ができることは必ずしも一致しません。年に1〜2回、家庭で4つの確認を通しておくと、授業だけでは見えない穴に気づけます。なお、止まった場所ごとの具体的な進め方は下の関連記事にまとめています。
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