「帰国子女入試が廃止される」という見出しを見て、手が止まる。志望校の名前が出ているわけでもないのに、うちの子の受験そのものが無くなるのではないかと不安になる。海外にお住まいのご家庭から、この順番でのご相談をよくいただきます。「帰国子女 入試 廃止」で検索すると大学名や学校名が並んだ記事がいくつも出てきますが、そこに書かれていないのは「それがうちの子に関係あるのかどうか」です。先に結論を書きます。2026年8月時点で、帰国生を対象とした入試が制度として一律に廃止される、という事実は公式には確認できません。確認できるのは、特定の学部・特定の学校で募集が止まった例と、専用の入試が一般入試の中の優遇措置に置き換わった例です。この記事では、学校・大学の公式サイトに実際に書かれていた記載だけを並べ、最後に志望校の入口が去年と同じかを確かめる手順に落とします。
「制度全体の廃止」は、公式には確認できませんでした
はじめに線を引いておきます。文部科学省や大学・学校の公式が「帰国生入試を一律に取りやめる」と告知した資料は、今回探した範囲では見つかりませんでした。当社でも過去に何度かこの裏取りを試みていますが、根拠になる一次資料に行き当たったことは一度もありません。無いものは無い、と正直に書きます。以下に挙げるのはすべて学校・大学の公式サイトに書かれていた記載だけで、塾や家庭教師会社のまとめ記事は根拠に使っていません。
一方で、個別の学部・個別の学校で募集が止まっている例は、確かに公式に書かれています。だから「全部が噂」でもありません。不安が広がるのは、この二つが混ざって「帰国枠がなくなる」という一言に丸められるからです。大学受験に絞った噂の出どころの検証は「なくなる」という噂を調べた記事が担当しているので、ここでは中学・高校・大学を横断して、入試が年度で消えたり形を変えたりする現象そのものを扱います。

「帰国子女」という言葉の定義・対象になる期間・何年からあてはまるのかは、学校や制度によって違います。そこだけ先に整理したい方は帰国子女とは?定義・期間・何年からと帰国後に困ることをご覧ください。
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公式サイトで確認できた「消えた」実例を三つ
一つ目。早稲田大学 理工学術院の学部入試のページには、「帰国生入学試験は2023年度(2023年4月入学)をもって募集停止しました。」と明記されています。伝聞ではなく、大学が自分のサイトに書いている一文です。ただし、同じページに並んでいる入試を見ると、一般選抜、総合型選抜(建築AO・特別選抜)、外国学生入試、推薦入試、高等専門学校対象編入学試験、3年編入学試験、学士入学試験、英語学位プログラム入試などが掲載されています。「帰国生入試」という名前の入口は消えていますが、その学部に外国での学びを持つ人が出願できる入口が全く無くなったわけではありません。理工系で入試の名前が学部ごとに違うことは理工の帰国枠は名前が違うという話にまとめてあります。
二つ目。慶應義塾大学の「帰国生対象入学試験」は、公式ページの冒頭に「対象:経済学部・法学部・医学部・理工学部」と書かれ、同じサイトに総合政策学部・環境情報学部(SFC)の「帰国生対象入学試験」の募集停止の告知が置かれています。ここで見てほしいのは、その告知と同じ場所に「こちらへどうぞ」が書いてあることです。SFCのページは、入学時期や出願言語の選択が可能な春AO・夏秋AOの出願を検討してほしい、条件が合う場合には冬AO(GIGA)や一般選抜による出願も検討してほしい、と案内しています。さらに以前の帰国生入試の提出書類(統一試験の試験成績評価証明書、TOEFL iBTもしくはIELTS Academic Moduleの結果)を、AO入試の出願資料として提出することが可能とまで書かれています。廃止=道が消えた、ではありません。入口の名前と選考の型が変わったのです。
三つ目。同じことは中学でも起きています。高輪中学高等学校は中学募集要項で、「2027年度入試より、これまで1月に実施していた帰国生入試は廃止し、一般入試の中で帰国生を対象とした優遇措置を実施いたします。」と公表しました。中身は、所定の書類を提出するとA・B・C日程の4科目試験の合計得点に10点を加点するというもので、算数午後入試は優遇措置の対象外です。対象は「1年を超える期間、海外に在留し、帰国後3年以内の日本国籍の方(2024年4月1日以降に帰国した方)」または「1年を超えて海外に在留中の日本国籍の方(2027年4月1日までに12歳になる方)」。専用入試が無くなった代わりに、一般入試の中の加点に置き換わった——これがこの学校の「廃止」の中身でした。中学の選考型そのものの整理は条件・日程・選考型の記事にあります。

年度の書き方は、大学の公式サイトの中でも揺れています
ここが本記事のもう一つの核です。上の慶應SFCについて、公式サイトには二つの書き方が並んでいます。SFCの入試情報ページには「帰国生対象入学試験および外国人留学生対象入試は2025年度の実施をもって終了しました。」という一文があり、一方で告知の見出しは「2026 2027年度以降 総合政策学部・環境情報学部『帰国生対象入学試験』の募集停止について」となっています(外国人留学生対象入試のほうは「2027年度以降」)。どちらが正しいのかを、私たちの側で断定することはできません。言えるのは事実の構造だけです。大学の公式ページですら年度の書き方に幅があるのだから、塾サイトの要約や、去年撮ったスクリーンショットを根拠に受験計画を立ててはいけない。読み取れなければ大学・学校に直接問い合わせるのが唯一の正解です。誰に何を聞くかは相談先の使い分けにまとめました。
「廃止」に見えて、中身が違う四つのもの
検索して出てくる「廃止」には、少なくとも四つの別のものが混ざっています。分けて見ると、自分の子に関係あるかどうかを判断できるようになります。募集停止はその入試そのものを行わなくなること(早稲田理工、慶應SFC)。切り替えは専用入試をやめて一般入試の加点などに移すこと(高輪)。三つ目の未公表は、まだ翌年度の要項が出ていないだけ、という状態です。郁文館中学校は入試情報のページに「※正式版となる募集要項は10月上旬に公開予定です」と書いていますし、大阪大学の帰国生徒特別入試のページにも、詳細が記載された学生募集要項と出願書類は2026年9月下旬ごろの公表を予定と記載があります。8月に「載っていない=廃止」と読むのは早すぎます。四つ目は周辺制度の終了で、入試ではなく奨学金などが終わる場合です。慶應のページには「医学部『合格時保証型:慶應義塾大学医学部人材育成特別事業奨学金』は、2026年度入学者をもって終了いたしました。」という注記があります。入試は続いているのに別の制度が終わっている——これも「廃止」と受け取られやすい形です。

| 見るところ | 募集停止 | 一般入試への切り替え | まだ未公表 | 周辺制度の終了 | ともだちじゃぱん |
|---|---|---|---|---|---|
| 何が起きているか | その入試そのものを行わなくなる | 専用入試をやめ一般入試の加点などに移す | 翌年度の要項がまだ出ていないだけ | 入試ではなく奨学金などが終わる | 入試対策は提供していません |
| どこに書かれているか | 入試ページの注記や変更点の欄 | 募集要項の本文 | 公表予定時期の案内 | 入試ページの末尾の注記 | 授業は毎週の日本語の土台づくり |
| 実例(2026年8月時点) | 早稲田大学理工学術院、慶應義塾大学SFC | 高輪中学高等学校(2027年度入試より) | 郁文館中学校、大阪大学 | 慶應義塾大学医学部の合格時保証型の奨学金 | 2026年12月開校のオンラインスクール |
| 家庭がすること | 他の入口が並んでいないか同じページで見る | 加点の条件と対象外の日程を要項で確かめる | 公表予定の時期まで待つ | 入試本体と混同していないか確かめる | 入口が変わっても要る読み書きを続ける |
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志望校の入口を確かめる五つの手順
不安を消す方法は一つしかありません。自分の志望校について、自分で確かめることです。順番があります。
- ①志望校の公式サイトの入試情報ページを開く。塾のまとめ記事から入らない。学校名で検索して、公式のドメインに直接入ります。
- ②入試の名前で探さない。「帰国生入試」という名前が無くても、学部・学科・日程の一覧を上から見て、自分が出願できる入口があるかを確かめます。名前が変わっているだけのことがあります。入試名のゆれと実施学部の探し方は大学の受け入れの調べ方、中学の入口の並びは四つの入口の整理が担当です。
- ③お知らせ・変更点の欄を見る。募集停止の告知はトップページではなく、入試ページの注記や「入試の変更点」に置かれていることが多いです。
- ④要項の公表時期を確認する。未公表なら待つ。郁文館や大阪大学のように公表予定の時期まで書いてあることがよくあります。動く時期の目安は月別カレンダーをご覧ください。
- ⑤それでも読み取れなければ、学校・大学に直接問い合わせる。出願資格の条件は学校ごとに別物なので(四つの軸の整理)、確かめた内容を日付つきで記録しておくと、あとで家族で判断するときに効きます。
なお、この記事では今後どこが廃止されるかという予測は書きません。公式に告知されていない未来を書くことが、いちばん読者を迷わせるからです。大学受験の全体像は帰国生入試の仕組み、高校受験は高校の帰国枠の記事にあります。

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よくある質問
帰国子女入試は、制度としてなくなるのですか?
2026年8月時点で、そう告知した公的な資料は確認できませんでした。確認できるのは、特定の学部・特定の学校で募集が止まった例と、一般入試の優遇措置に置き換わった例です。制度全体の話ではなく、志望校ごとの話として確かめてください。
志望校のページに帰国生入試が載っていません。廃止でしょうか?
8月の時点では、まだ翌年度の要項が出ていないだけということが普通にあります。郁文館中学校は正式版の募集要項を10月上旬に公開予定と案内し、大阪大学は帰国生徒特別入試の要項を2026年9月下旬ごろ公表予定としています。公表予定時期の記載を先に探してください。
募集停止と書かれていたら、その学校はもう受けられませんか?
その入試は受けられませんが、学部や学校が閉じたわけではありません。早稲田大学理工学術院のページには他の入試が並んでいますし、慶應義塾大学SFCは春AO・夏秋AO、条件が合えば冬AO(GIGA)や一般選抜を検討するよう案内しています。同じページの他の入口を必ず見てください。
公式サイトの中で年度の書き方が違っていて、判断できません。
実際に起きています。慶應義塾大学SFCの場合、「2025年度の実施をもって終了しました」という記載と、「2026 2027年度以降の募集停止」という告知の見出しが並んでいます。この状況では、大学・学校に直接問い合わせる以外に確定させる方法はありません。塾サイトの要約で代用しないでください。
専用入試が加点に変わると、帰国生には不利になりますか?
有利・不利を一般化して言うことはできません。分かっているのは条件です。高輪中学高等学校の場合、加点の対象はA・B・C日程の4科目試験で、算数午後入試は対象外、対象者の在留期間と帰国時期の条件も要項に書かれています。まず自分が条件に当てはまるかを要項で確かめるのが先です。



