現地校で数学も物理も英語で学んできた。帰国生入試を調べ始めたら、出てくるのは小論文と面接と英語資格の話ばかりで、数学や理科がどう扱われるのかがどこにも書いていない。そんな家庭が「帰国子女 大学受験 理系」と検索するとき、本当に確かめたいのは難易度でも対策でもありません。志望する理系の学部に、帰国生を対象にした入試がそもそも存在するのかです。結論から書くと、存在します。ただしあるかないかは大学ごとに違い、しかも同じ大学の中で入試の名前が違います。この記事は、2026年8月時点で各大学の公式ページと募集要項に出ている記載だけを使って、その構造を整理します。帰国生入試そのものの仕組みは大学受験の条件・時期・逆算計画が担当です。
「理系に帰国枠はない」は、公式の記載と合っていない
まず噂を事実で置き換えます。慶應義塾大学の帰国生対象入学試験は、公式ページに「対象:経済学部・法学部・医学部・理工学部」と明記されています。理工学部は対象の四学部の一つです。上智大学の海外就学経験者(帰国生)入学試験は、「国際教養学部を除く全ての学部・学科で募集します(1学科にのみ出願できます)」と書かれており、理工学部も当然この中に入ります。
つまり「理系に帰国枠がない」という話は、少なくともこの二校については公式の記載と合いません。それでもなぜ「理系は少ない」と言われるのか。ここから先が、この記事の中身です。

「帰国子女」という言葉の定義・対象になる期間・何年からあてはまるのかは、学校や制度によって違います。そこだけ先に整理したい方は帰国子女とは?定義・期間・何年からと帰国後に困ることをご覧ください。
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理系で見落としが起きるのは、入試の名前が違うから
この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。早稲田大学の入学センターは「帰国生・外国学生を対象とした入試」というページで、二つの入試を並べて案内しています。一方の「外国学生のための学部入学試験」の対象学部には「政治経済、法、教育、商、社会科学、文化構想、文、基幹理工、創造理工、先進理工、人間科学、スポーツ科学」と、理工三学部が入っています。そしてこの試験の対象は「日本の教育制度以外の課程による中等教育機関を修了した者、もしくは修了見込みの者で、『日本留学試験』もしくは『日本語能力試験』を受験する者」と書かれています。
もう一方の「帰国生入学試験」は、同ページでは教育学部の特定の学科・専修が対象として案内されています。さらに理工学術院(基幹理工・創造理工・先進理工)の入試要項ページには、「帰国生入学試験は2023年度(2023年4月入学)をもって募集停止しました」とはっきり書かれています。
ここで何が起きるか。大学のサイトを「帰国生入試」という語だけで検索した家庭は、理工三学部の入口にたどり着けません。「早稲田の理工には帰国枠がない」という結論になり、噂の一つが生まれます。実際には別の名前の入口が案内されている――ただしその入口に自分が出願できるかどうかは、国籍要件を含めて要項で確認しないと決まりません。ここを飛ばして「使える」と決めてしまうのも、同じくらい危ない読み違えです。入試名のゆれと実施学部の探し方そのものは受け入れ大学の探し方が担当なので、そちらをご覧ください。

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課される中身は、小論文一本ではない
上智大学は選考方法を「『学科試問』『面接』および『書類審査』によって総合的に判断し、合否判定を行います」と公表しています。学科試問という形で、学科の中身が直接問われる選考が実在するということです。さらに同大学は出願資格の中で、看護学科について「日本の高等学校に3年間在籍した者は、『数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C』または『化学基礎・化学』または『生物基礎・生物』を必履修科目とします」としています。外国語検定の基準に加えて、理数の履修が条件に乗る学科が実際にある、という一例です。
早稲田大学理工学術院の外国学生入試では、一次選考が日本留学試験で、「理科」(出題言語は日本語)から物理・化学・生物のうち二科目、そして「数学」(出題言語は日本語)のコース2を受験する、と公表されています。二次は面接試験で、建築学科だけは面接に加えて空間表現(筆記試験)があります。理数の試験が、日本語で出題されるという条件が公式に書かれている例です。
ここで一つ、絶対にやってはいけないことがあります。「あの大学の理工は数学と物理が出る」といった一般化です。科目名も範囲も出題言語も、大学ごと学部ごとに、募集要項にしか書かれていません。この記事も、上に挙げた以上のことは書きません。公式で確認できるのはここまでです。学科試問と面接が一体で行われる大学の見方は大学の面接と学科試問に、科目数が少ないのに難しいと言われる理由は帰国生入試の難易度にまとめてあります。
理系は、出願よりも前に締切が来ることがある
慶應義塾大学は、理工学部志願者にのみ「統一試験に関する理由書」の提出を求めており、出願資格審査を2026年6月12日(金)までに提出して受けるようにと案内しています。出願そのものより前に、理工学部だけの締切があるということです。夏休みに情報を集め始めた家庭は、この時点でもう間に合いません。同大学は統一試験についても「TOEFL iBTやIELTS Academic Module、SATをはじめとする統一試験については、有効期間など、いくつかの注意事項があります」と注記し、毎年不備が多い項目だと指摘しています。理数の準備に時間を取られて英語資格の受験を後回しにすると、有効期間の側で足をすくわれることが起こりえます。
もう一つは、入口そのものが年度で消えることです。慶應義塾大学は総合政策学部・環境情報学部の帰国生対象入学試験について、2026 2027年度以降の募集停止を公式に告知しています。早稲田の理工三学部の帰国生入学試験も、前述のとおり2023年度で募集停止です。去年の情報のまま計画を組むと、出願の直前に入口が一つ消えていることがあります。月ごとの動き方は高2秋から逆算する月別計画、帰国の時期で出願資格そのものが変わる仕組みは帰国時期と出願資格にあります。つまずき方の型は大学受験でつまずく5つの型にまとめました。

| 見るところ | 慶應義塾大学 | 上智大学 | 早稲田大学 理工3学部 | 横浜国立大学 | ともだちじゃぱん |
|---|---|---|---|---|---|
| 入試の呼び名 | 帰国生対象入学試験。対象4学部に理工学部が入る | 海外就学経験者(帰国生)入学試験 | 帰国生入学試験は募集停止。外国学生のための学部入学試験が案内されている | 帰国生徒選抜。公表されているのは経営学部と都市科学部 | 入試そのものは担当していません |
| 公表されている選考の中身 | 理工学部志願者には統一試験に関する理由書 | 学科試問・面接・書類審査で総合判断 | 一次は日本留学試験、二次は面接。建築学科は空間表現も | 都市科学部は書類審査・実技試験・小論文と面接 | 毎週の授業で日本語の読み書きを続けます |
| 早く来る日付 | 出願資格審査は2026年6月12日まで | 2027年度の要項は2026年5月22日付で公開 | 出願期間は2026年6月1日から6月18日 | 出願期間は2026年9月10日から9月17日 | 入試日程の管理は担当していません |
| 理数・語学の要件 | 統一試験には有効期間などの注意事項 | 看護学科は数学・化学・生物に履修の要件 | 理科と数学は出題言語が日本語 | 都市科学部の実技は造形に関する検査 | 日本語の学術語彙をふだんの授業で扱います |
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国公立も、まず「その学部にあるか」から
国公立の仕組みそのものは国公立の帰国生特別選抜が本丸なので、ここでは理系に効く一点だけを置きます。
横浜国立大学の令和9年度(2027年度)入学者選抜要項には、選抜の方針として「帰国生徒選抜・外国学校出身者選抜は、外国における教育事情の違いなどに鑑み、広く入学志願者の能力・適性等に応じ選抜がなされるよう学力検査の全部又は一部免除を図り、小論文や面接等を適切に組み合わせて入学志願者の能力・適性等を多面的、総合的に判定する」と書かれています。実際に都市科学部建築学科の帰国生徒選抜学生募集要項は、「従来型の筆記試験を課さない入試を実施します」とし、第1次選抜は書類審査・実技試験・小論文、第2次選抜は面接試験(口頭試問による論理的思考力・理解力・表現力の検査)だと明記しています。建築学科は学士(工学)を授与する学科で、実技は造形に関する思考力・表現力の検査です。理系でも、別の形の入口が公表されているという実例です。
同時に、この要項は厳しい現実も示します。同大学の2027年度で帰国生徒選抜・外国学校出身者選抜として要項が公表されているのは、経済学部・経営学部・都市科学部の三つで、理工学部は入っていません。さらに都市科学部の要項には「本学他学部また都市科学部他学科の帰国生徒選抜(外国学校出身者選抜を含む)との併願は認めません。また、本学都市科学部の総合型選抜との併願も認めません」と書かれ、募集人員は建築学科2名です。同じ大学の中でも、理系学部ごとに入口の有無が違い、併願が構造的に効かないことがある――文系のつもりで併願表を作ると、ここで崩れます。

調べる順番と、日本語の土台という別の課題
ここまでを実務の手順にすると、次の順です。①「帰国生入試」ではなく、志望する学部・学科の名前で大学の入試ページを引く。②その入試の対象学部一覧に自分の学部があるか。③選考方法の欄に学科試問や実技があるか。④出願資格審査や統一試験の締切が、出願より前にないか。⑤翌年度の要項がいつ公表されるか。2026年8月の時点では、翌年度の要項が未公表の大学が普通にあります。上智大学が2027年度の入学試験要項を2026年5月22日付で公開しているのは、むしろ早いほうです。塾や予備校に頼る範囲の切り分けは予備校と塾の選び方をご覧ください。
私たちの立場も正直に書きます。ともだちじゃぱんは大学受験対策を提供していません。学科試問の演習も志望理由書の添削も行いません。そこは帰国生向けの予備校や塾の領域です。株式会社NIJINが運営する海外で育つ子のためのオンライン日本語スクール(2026年12月開校)で、学校教育法上の一条校ではなく、在籍校の代わりにもなりません。
そのうえで一つだけ申し上げると、理系の帰国生が実際につまずくのは、多くの場合日本語の書き言葉と学術語彙です。理数を英語で学んできた子は、内容を理解していても日本語でその内容を書く語がないことがあります。学科試問も面接も志望理由書も、日本語で行われる場面がある以上、ここは受験の前から効いてきます。私たちが担うのはその土台で、講師は採用合格率およそ2%の選抜を通った現役水準の日本の教員、8人の少人数・担任制です。日本に住む同世代が同じクラスにいるので、日本語で話す時間が生活の中に残ります。学費や奨学金の詳細は、無料の学校案内でお届けしています。
よくある質問
理系の学部に、帰国生の枠は本当にありますか?
あります。慶應義塾大学は対象を「経済学部・法学部・医学部・理工学部」と明記し、上智大学は「国際教養学部を除く全ての学部・学科で募集します」としています。ただし有無は大学ごと学部ごとに違うので、志望校の要項で個別に確認してください。
大学のサイトで「帰国生入試」を探しても見つかりません。
名前が違う可能性があります。早稲田大学の理工三学部は公式ページで「外国学生のための学部入学試験」の対象学部に挙げられ、理工学術院のページには帰国生入学試験を2023年度で募集停止したとあります。学部名から入試ページを引くほうが確実です。
理系でも小論文と面接だけですか?
そうとは限りません。上智大学は「学科試問」「面接」「書類審査」で総合的に判断すると公表し、早稲田大学理工学術院の外国学生入試は一次が日本留学試験です。科目名や範囲は要項でしか確定しません。
高3の夏から動き出しても間に合いますか?
入試によっては間に合いません。慶應義塾大学は理工学部志願者の出願資格審査を2026年6月12日までとしており、出願より前に締切があります。逆算は月別計画で確認してください。
出願資格や英語の資格は、どこで確かめますか?
要項の出願資格欄です。在籍年数・卒業時期・検定試験の基準が大学ごとに違います。軸の分け方は受験資格の4つの軸、英語資格の扱いは英検が資格になる入試とならない入試にまとめてあります。



