現地校から帰るのが夕方、宿題が終わるころにはもう夜。そこから日本の勉強を、と思って受験ブログを開くと「小6は平日三時間・休日八時間」と書いてある。そんな時間は家の中のどこにも落ちていません。「帰国子女 中学受験 勉強時間」と検索する家庭が本当に困っているのは、時間が足りないことより、足りない前提でどう配ればいいのかが、どこにも書かれていないことです。結論から書きます。この問いの答えは「何時間」ではなく、残りの月数と、その時間を何に使うかです。一般入試向けに作られた時間の目安は、帰国枠には構造的に当てはまりません。この記事はその理由と、配分の決め方を整理します。選考の型そのものの全体像は中学受験の条件・日程・選考型の整理が担当です。
一般入試の「時間の目安」が、帰国枠で使えない三つの理由
出回っている数字が嘘なのではなく、前提が違うだけです。その前提は三つあります。
- 選考科目がそもそも違う。一般入試の目安は四科目を前提に組まれた総量です。帰国枠は学校ごとにまったく別物で、海城中学校の2027年度帰国生入試は公式によればA方式が「国語・算数、面接」、B方式が「国語・算数・英語、面接」。頌栄女子学院の同年度は英語入試と三教科入試に分かれています。四科目の総量を前提にした時間割は、受ける試験の形と噛み合っていません。
- その数字は通塾を前提にした所要時間。教室での授業時間と、そこで出た宿題を家で終える時間が合算されています。家庭学習だけの家にはそのまま持ち込めません。塾を使うかどうかの判断は帰国生向けの塾の選び方にあります。
- 現地校の学業を削れない。国内の受験生は、学校の勉強を軽く回して受験に寄せる選択が一応できます。帰国枠の受験生にはそれが取れません。理由は後の見出しで書きます。
つまり「平日三時間」は、四科目・通塾・現地校の負荷なしという三重の前提の上の数字です。前提が三つとも違う家庭が結果だけを持ち帰ると、守れない計画表と自己嫌悪が残ります。

「帰国子女」という言葉の定義・対象になる期間・何年からあてはまるのかは、学校や制度によって違います。そこだけ先に整理したい方は帰国子女とは?定義・期間・何年からと帰国後に困ることをご覧ください。
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時間を割る先は、三つしかない
計画が複雑になるのは割り先を細かく数えすぎるからで、実際には三つしかありません。
①志望校の選考科目の準備。これは学校が決めるもので、家庭には決められません。要項を読むまで、この枠に何時間必要かを見積もることさえできないのが正しい状態です。作文や小論文が課される学校なら準備は書く練習になりますし(→小論文で落ちる型と対策の順番)、二科目型か三科目型かでも重さが変わります。候補校の集め方は受入校の探し方と見る順番にあります。この枠を空欄のまま「とりあえず四科目」を回すのが、いちばん時間を溶かします。
②日本語の土台。漢字・語彙・読む速さ・書き言葉。①と違って、これは試験の形が何であっても効きますし、合格した後もそのまま使われます。そして①と決定的に違うのは、時間ではなく日数で積み上がる点です。離れていた期間がそのまま量になるので、一日三時間まとめてやっても、三十分を六日やったときほどには定着しません。文部科学省が2026年5月に公表した「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」(令和7年度)では、公立学校で日本語指導が必要な児童生徒は84,759人。うち日本国籍の児童生徒を言語別に見ると、最も多いのが「日本語」で27.7%です。母語が日本語なのに日本語の指導が必要になるという状態は、統計の上にも現れています。国語をいつから始めるかは中学受験の国語をいつから始めるか、「できない」の中身の分解は国語の「できない」を四つの層に分ける記事が担当です。

③現地校の学業。宿題、課題、プロジェクト、定期の評価。受験勉強を足すとき、多くの家庭が真っ先に削ろうとするのがここです。そしてここを削るのが、帰国枠ではいちばん高くつきます。
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現地校の成績が、そのまま出願書類になる学校がある
理由は精神論ではありません。帰国生入試では、在籍校が出す書類が出願書類に含まれることがあるからです。以下はすべて2026年8月時点で各校の公式ページに出ている記載です。
頌栄女子学院中学校の2027年度帰国生入試は、出願時提出書類として「現地校/現地インターナショナルスクール・日本人学校等の成績表のコピー(最新のもの1年分)」と、本校指定用紙の海外在留証明書(または海外在留申告書)を挙げています。試験日は12月5日(土)、出願資格は海外に1年以上在住して海外の学校に1年以上在学し、原則として帰国後3年以内。「最新のもの1年分」とは、直近の現地校での学びがそのまま提出物になるということです。
洗足学園中学校は帰国生入試のQ&Aで、「最終学校の成績証明書は改まった形式の証明書を取り寄せる必要はありません。帰国時点での成績表のコピーで大丈夫です」と案内し、複数校に在学した場合は「海外在学最終学年の成績表コピーをご提出ください」としています。国内の学校の成績表は不要とも明記され、求められているのが海外での在学期間の成績だと読み取れます。
一方で、同じ帰国生入試でも書類の中身は学校ごとに違います。海城中学校が2027年度帰国生入試のページで提出書類として挙げているのは「海外生活証明書・面接カード」で(2026年12月16日必着)、成績表はこの欄に出てきません。広尾学園中学校が配布しているのは「履歴データ(Education History)」と海外在留証明書です。
言えることは二つ。現地校の成績表が出願書類になる学校は実在し、それは全校共通ではない。だから志望校の要項の「出願書類」「提出書類」欄を、時間の配分を決める前に読んでください。受験勉強のために現地校の課題を捨てる判断は、学校によっては自分の出願書類を自分で削ることになりかねません。
線は正直に引きます。提出された成績表が合否の判定にどう使われるかまで公表する学校は、確認した範囲ではほとんどありません。公式で確認できるのは「出願書類として提出を求める学校がある」ところまでです。ただ重みが分からないからこそ、審査の場に届く提出物を悪くする理由はありません。なお2026年8月時点では翌年度の要項が未公表の学校も普通にあります(郁文館中学校は正式版を10月上旬に公開予定と案内)。夏に見た書類欄を確定として扱わないこと。
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残り月数が変われば、三つの比率が変わる
①②③のどれをやめるかではなく、比率をどう動かすかが計画です。比率を決めるのは能力でも意欲でもなく残っている月数です。
残り12か月以上。ここが唯一、②に厚く張れる時期です。②は毎日の積み上げでしか動かず、後から一気に取り返せないから。逆に①は要項が出るまで中身が確定せず、この時期に作り込んでも作り直しになります。やることは、②を毎日の生活に固定し、③を通常どおり回すこと。①は候補校を集めて要項の公開時期を確かめるまでで十分です。帰国の時期が出願できる学校の集合を変える仕組みは帰国時期で出願できる学校が変わる話に、赴任前から帰国後までの順番は駐在中の小学生の勉強の順番にまとめてあります。
残り6〜12か月。要項が出そろい、①の中身が確定する時期です。ここで①と②が並走し、②を落とさずに①を足すので、いちばん苦しい区間になります。この時期に③を削り始める家庭が多いのですが、そこは削り先ではありません。削るなら②の「量」ではなく「新しく増やす部分」です。到達度の測り方は海外からの模試の受け方と判定の読み方を、志望校の絞り方は一般入試の偏差値表が使えない理由をご覧ください。
残り3か月。比率は①に大きく寄せます。この段階で②に全振りしないのは、②が三か月では動かないからです。ここでの②は志望校の科目に出る範囲に絞って維持するだけでよく、新しい範囲を広げません。③は最後まで通常どおり。教科ごとに何がどう遅れているかの分解は「勉強の遅れ」を三つに分けて優先順位を決める記事が担当なので、そちらを先に読んでから、この配分に当てはめてください。

| 見るところ | 残り12か月以上 | 残り6〜12か月 | 残り3か月 | ともだちじゃぱん |
|---|---|---|---|---|
| 選考科目の準備 | 候補校集めと要項の公開時期の確認 | 要項が出たら確定させて着手 | ここに大きく寄せる | 受験対策は担当していません |
| 日本語の土台 | 厚く張れる唯一の時期 | 落とさず維持しながら並走 | 科目に出る範囲に絞る | 毎週の授業として固定する |
| 現地校の学業 | 通常どおり回す | 通常どおり。削り先ではない | 最後まで通常どおり | 在籍校の代わりにはなりません |
| 週の配り方 | 平日は短く毎日、週末に量 | 平日を固定し週末を厚く | 選考科目を中心に | 曜日と時刻が先に決まる |
| 測る対象 | 漢字や読書の量を記録 | 量に加えて過去問の手ごたえ | 解いた本数と直した箇所 | 担任が毎週の様子を伝える |

まず一週間、実際に残っている時間を数える
比率が決まっても、入れ物の大きさを知らなければ計画は立ちません。そして入れ物は家庭ごとに驚くほど違います。現地校の下校時刻、宿題の量、通学、習い事、家族の生活時間、睡眠。これを引くと平日に残るのは三十分から一時間という家庭が少なくありません。数字を先に信じず、まず一週間、実際に何分残ったかを毎日メモしてください。やる前に測る。これだけで計画の寿命が変わります。
配り方のコツは二つです。平日は短く、必ず毎日。②は日数で積み上がるので、二十分でも毎日置いたほうが効きます。そしてまとまった量は週末に寄せる。過去問や書く練習のように途中で切れない作業は週末側です。平日に「三時間の枠」を書き込んだ計画表はたいてい最初の一週間で壊れ、壊れたこと自体が子どもの自信を削ります。壊れない計画のほうが、立派な計画より強い。
もう一つ、測る対象を時間から量に変えてください。「今日は三時間やった」は、疲労とは比例しますが成果とは比例しません。記録するなら「漢字を何字」「音読を何回」「作文を何本」「過去問を何年分」のように数えられる単位にする。ノートの端に日付と数だけを書く方式で十分です。量で記録すると、増えていないことが早く分かります。時間で記録すると、努力の実感だけが積み上がり、動いていないことに気づくのが遅れます。
最後にもう一点。家庭の裁量に任せると最初に削られるのは必ず②です。①には締切があり③には翌日の提出があるのに、②だけが「明日でもいい」から。だから②は意志ではなく予定として固定するのが確実です。ともだちじゃぱんは株式会社NIJINが運営する、海外で育つ子のためのオンライン日本語スクールです(2026年12月開校)。学校教育法上の一条校ではなく、在籍校の代わりにはなりませんし、志望校別の受験対策も行っていません。私たちが担うのは②で、日本の現役水準の教員が8人の少人数・担任制で学年相当の国語を止めずに続けます。日本に住む同世代が同じクラスにいるので、日本語で話す時間が生活の中に残ります。学費や奨学金の詳細は、無料の学校案内でお届けしています。
よくある質問
結局、一日何時間やればいいですか?
公表された基準はありません。目安を先に決めず、一週間記録して実際に残る時間を出し、そこから配るのが順番です。残り月数が長ければ日本語の土台に厚く、短ければ選考科目に寄せます。時間数を目標にすると、達成できなかった日が積み重なって続きません。
現地校の宿題と日本の勉強、どちらを優先すべきですか?
現地校を削らない前提で組んでください。頌栄女子学院は出願時提出書類に現地校等の成績表のコピー(最新1年分)を挙げ、洗足学園も海外在学最終学年の成績表コピーを案内しています。ただし書類は学校ごとに違いますので、志望校の要項の提出書類欄を必ず確認してください。
残り三か月です。日本語の土台に全部かけるべきですか?
おすすめしません。土台は毎日の積み上げでしか動かず、三か月では伸びが見えにくいうえ、そのあいだ選考科目の準備が止まります。土台は科目に出る範囲に絞って維持し、比率は選考科目に寄せるのが現実的です。
平日に時間が取れません。週末にまとめてでも大丈夫ですか?
作業の種類で分けてください。過去問や作文のように途中で切れない作業は週末向きです。一方、漢字や語彙は日数で積み上がるので、平日に二十分でも毎日置いたほうが残ります。週末だけに寄せると伸びにくくなります。
時間は確保しているのに、成果が見えません。
記録の単位を時間から量に変えてみてください。漢字の字数、音読の回数、作文の本数、過去問の年数。時間は疲労と比例しますが、成果とは比例しません。量で記録すると、増えていない箇所が早く見つかります。



