世界に90校ある日本人学校のうち、高等部があるのは上海の1校だけです。上海日本人学校高等部は2011年4月に開校し、2026年4月現在の在籍は119名(高1が43名、高2が39名、高3が37名。各学年2学級)、教員は講師を含めて28名。日本の高等学校と同等の課程として文部科学省の認定を受けており、卒業すれば日本の高校卒業資格が得られます。この記事では、校納金・進路実績・入試の3ルート・1日の流れまで、学校の公表資料からそのまま整理します。
上海日本人学校高等部とは――「二重の認可」で成り立っている学校
この学校の成り立ちは、日本人学校としてはかなり特殊です。学校の沿革によると、2009年に高等部設置に関する意識調査から始まり、日本の大学が集まった「協力予定大学会議」が発足。2010年12月に文部科学省から「日本国内の高等学校と同等の課程を有する在外教育施設」として認可(文部科学省告示第百七十六号)され、2011年2月には中華人民共和国 教育部から「外籍人員子女学校」として認可、上海市教育委員会から開校が認可されました。
そして2011年4月、当時世界に88校あった日本人学校の中で初の高等学校として開校しています。2014年に浦東校3期校舎が竣工し、2017年に完全移転。現在は上海市浦東新区錦康路277号、上海日本人学校浦東校と同じ敷地にあります。
| 学年 | 生徒数 | 学級数 | 1学級あたり |
|---|---|---|---|
| 高校1年 | 43人 | 2学級 | 約22人 |
| 高校2年 | 39人 | 2学級 | 約20人 |
| 高校3年 | 37人 | 2学級 | 約19人 |
| 合計 | 119人 | 6学級 | 教員28名(講師含む) |

校納金は月9,725人民元――中国銀行アプリで3か月に1回
学校の「校納金」ページには、内訳がそのまま掲載されています。
| 費目 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 授業料 | 9,700人民元 | 116,400人民元 |
| PTA会費 | 25人民元 | 300人民元 |
| 計 | 9,725人民元 | 116,700人民元 |
注目したいのは入学金という費目が掲載されていないことと、教科書・模試・校外学習の費用が授業料に含まれていることです。日本の私立高校では模試代や教材費が積み上がりますが、ここでは月額に織り込まれています。なお2025年11月に「校納金改定のお知らせ」が出ているため、最新の金額は必ず学校の掲示で確認してください。
支払い方法も独特です。学校は「生徒に高額な金銭授受を行わせないため、また事務の合理化を図るため」として、中国銀行アプリの「生活缴费→学费」から3か月に1回支払うシステムを採用しています。そのため上海市内の中国銀行に保護者名義の口座(活期一本通)を開設し、「中国銀行における口座開設報告」を提出することが前提になります。口座開設にはパスポートが必要で、校納金は人民元のみ受け付けです。中国全体の学費事情は中国の日本人学校の学費にまとめています。
2026年度入試の進路実績――現役40名で延べ43名の合格
進路指導部が2026年4月18日付で公表した「2026年度入試 大学・学部別合格者数」によると、現役卒業生は40名、大学・専門学校の合格者は延べ43名。内訳は国立が筑波大学(人文・文化学群 比較文化学類)1名で、残りは私立大学と専門学校です。
合格先には上智大学、法政大学、立教大学、同志社大学、関西学院大学、芝浦工業大学、東京理科大学、千葉工業大学、中央大学、青山学院大学、関西大学、玉川大学、東京工芸大学、神奈川大学、東海大学(医学部医学科)、実践女子大学、武蔵野大学、帝京大学、東洋大学、拓殖大学、桜美林大学、愛知大学、関東学院大学、大阪経済法科大学、文化学園大学などが並びます。学部も文学部・法学部・経済学部から理工学部・薬学部・医学部・芸術学部まで広く、特定の分野に偏っていないのがこの学校の実績の特徴です。
強さの正体は「協力大学コンソーシアム」の指定校推薦枠
合格先に見覚えのある大学が繰り返し出てくるのには理由があります。この学校は設立準備段階から、日本の大学が集まって設置した「協力大学コンソーシアム」の支援を受けており、現在12大学が参加しています。
| 協力大学コンソーシアム 参加12大学(50音順) | ||
|---|---|---|
| 関西学院大学 | 実践女子大学 | 芝浦工業大学 |
| 上智大学 | 千葉工業大学 | 中京大学 |
| 東京理科大学 | 同志社大学 | 南山大学 |
| 日本体育大学 | 法政大学 | 立教大学 |
つまり生徒119名という規模に対して、12大学の指定校推薦枠が用意されているということです。日本の高校で同規模の学校がこれだけの枠を持つのは簡単ではありません。加えて毎年夏休み前に「協力大学説明会」が開かれ、各大学のプレゼンテーションと個別相談が受けられます。保護者の参加も多いとされ、中国にいながら日本の最新の入試情報に触れられる設計になっています。海外にいると情報が届かない、という駐在家庭の最大の不安に対する答えがここにあります。

入試は3ルート――内部推薦・一般・転編入
入学の経路は3つあり、それぞれ出願時期が違います。
| 区分 | 対象 | 出願期間(公表分) |
|---|---|---|
| 内部推薦入学試験 | 上海日本人学校中学部に在籍する生徒のみ | 2027年度=2026年10月20日(火)〜10月30日(金) |
| 一般入学試験 | 上海日本人学校中学部の生徒/それ以外の生徒 | 2026年度=2025年11月26日(水)〜12月3日(水)必着 |
| 転編入学試験 | 在学中の生徒(高1〜) | 2026年度 第1回=2026年6月12日(金)〜25日(木) |

実務上いちばん重要なのは、上海日本人学校中学部に在籍していない生徒が一般入試を受ける場合、出願期間より前に必ず学校へ問い合わせが必要という点です。転編入学試験も同様に、出願期間より前の問い合わせが求められています。他都市の日本人学校から、あるいは日本から受験する場合、「11月に願書を出せばいい」と考えていると間に合いません。
学校説明会は中国国内の日本人学校に通う小学5年生〜中学3年生の保護者が対象で、2026年度は5月7日(木)14:00〜15:00に上海日本人学校浦東校 武道場で開催されました。オンライン配信や動画公開はないと明記されているので、現地で参加するしかありません。日本人学校に在籍していない場合は、入試担当への個別問い合わせになります。
高等部の1日――実質8時間授業、下校は夏18:15
学校が公開している「高等部の一日」には、日本の高校生とは違う生活が描かれています。
- 登校:全員が保護者の送迎を要しない個人通学。地下鉄などの公共交通機関のほか、同じマンションの数名でハイヤーを定期契約して通う生徒もいる。小中学部より少し遅い8時35分までに登校
- 授業:午前は4コマ。特別教室の利用の都合で小中学部と時程を揃えるため1コマ45分。数学・英語・中国語は習熟度別少人数編成
- 昼食:弁当持参。登校途中に日系スーパーで惣菜弁当を買う生徒も。各フロアにウォーターサーバが2台ずつあり、即席みそ汁を作る生徒もいる
- 午後:時間割は7校時までだが、昼食後にクリオ・レクティオという時間があり実質8時間授業。選択科目が多いのが特色で、体育と芸術は学年合同
- 放課後:最終下校時刻は夏季18:15/冬季17:45。部活動、空き教室での自習、教員に苦手科目を教わる生徒も多い
中国語が習熟度別の正規科目として入っている点は、上海ならではです。3年間で日本の高校卒業資格と中国語、そして中国での生活経験が同時に手に入る——これがこの学校の商品性です。
上海以外の駐在家庭にとって、この1校が持つ意味
バンコクにもシンガポールにもロンドンにも高等部はありません。日本人学校の中学部を卒業した子は、世界中どこにいても中3で必ず進路を選び直します。選択肢は、日本の高校(受験して単身または家族で帰国)、現地のインターへ転校、私立の在外教育施設、そして上海日本人学校高等部。
上海駐在の家庭にとっては「高校で家族が離れなくていい」という、他都市にはない選択肢が手元にあることになります。逆に言えば、上海以外の都市では中3の1年間が受験と引っ越しに重なります。日本人学校の高等部事情は日本人学校に高校(高等部)はあるのか、私立の在外教育施設を含めた選び方はシンガポール日本人学校に高等部はないにまとめました。
高等部に進むとしても、決め手は中学部までの日本語
上海日本人学校高等部の入試は、内部推薦であれ一般であれ選抜がある入試です。そして進路の主軸である指定校推薦は、高校3年間の評定平均で決まります。国語・小論文・面接がついてまわる以上、土台になるのは中学部までに積んだ日本語です。
海外で育つ子の日本語は、会話は落ちにくく、読解・作文・語彙が静かに落ちていくという形で差が出ます。日本にいる同世代と同じ量の日本語を浴びていないので当然です。中学部に上がってから慌てても、漢字と読解は量が要る領域なので取り返しに時間がかかります。
ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の教員が8人の少人数クラスを担任し、日本にいる同世代の子どもたちと一緒に学ぶオンライン日本語スクールです。定額の通い放題なので、日本人学校に通いながらの補完としても使えます。中国と日本の時差は1時間。日本の夕方のクラスが、上海の夕方にそのまま入ります。「日本の友達と話すために日本語を使う」状態を保てるかどうかが、高校3年間の評定にも効いてきます。
よくある質問(上海日本人学校 高等部)
上海日本人学校高等部は日本の高校卒業資格が取れますか?
取れます。2010年12月に文部科学省から「日本国内の高等学校と同等の課程を有する在外教育施設」として認可されています(文部科学省告示第百七十六号)。あわせて中華人民共和国 教育部から「外籍人員子女学校」としての認可も受けています。
生徒数は何人ですか?
2026年4月現在で119名。高1が43名、高2が39名、高3が37名で、各学年2学級です。教員は講師を含めて28名。1学級あたり20人前後の規模になります。
学費(校納金)はいくらですか?
授業料が月9,700人民元・年116,400人民元、PTA会費が月25人民元・年300人民元で、合計は月9,725人民元・年116,700人民元です。授業料には教科書・模試・校外学習・体験学習の費用が含まれます。支払いは中国銀行アプリから3か月に1回。2025年11月に校納金改定のお知らせが出ているため、最新額は学校の掲示でご確認ください。
進学実績はどうですか?
2026年度入試では現役卒業生40名に対して延べ43名が合格。国立は筑波大学1名、ほかは上智・法政・立教・同志社・関西学院・芝浦工業・東京理科・中央・青山学院・東海(医学部医学科)など私立中心です。協力大学コンソーシアム12大学からの指定校推薦枠が進路の主軸になっています。
上海日本人学校の中学部以外からでも受験できますか?
できます。一般入学試験に「上海日本人学校中学部以外の方」の要項が用意されています。ただし出願期間より前に入試担当への事前問い合わせが必須(2026年度入試では2025年11月14日まで)です。高1以降の転編入学試験も、出願期間前の問い合わせが求められています。
寮はありますか?
学校の公表資料に寮の案内はなく、生徒は全員が公共交通機関やハイヤーで個人通学しています。保護者が上海に居住していることが前提の学校です。親の帰任後も残れる寮のある高校を探す場合は、私立の在外教育施設(英国の立教英国学院・帝京ロンドン学園、シンガポールの早稲田渋谷シンガポール校など)が選択肢になります。

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