赴任先の夜、子どもが寝たあとに「帰国子女 高校受験 塾」と検索する――そんなご相談が増える季節です。ところが調べ始めると手が止まります。どの塾も「帰国生入試に強い」としか書いておらず、「うちの子に、何を、いつから頼むのか」が出てこない。帰国生入試は学校ごとに試験科目そのものが違うため、志望校が決まるまで発注内容が決まらないからです。この記事は高校受験の一点で「塾はどこまで要るのか・いつから・何を頼むのか」だけを整理します。
「塾が要るか」は、志望校が決まるまで決まらない
帰国生入試(帰国枠)は一般入試と違い、全国で科目が揃っていません。学校が独自に決めます。公表要項を並べると振れ幅が分かります。

- 東京都立国際高等学校(海外帰国生徒対象)――過去問題は出身校の種別ごとに分かれて掲載され、現地校・インターナショナルスクール出身者向けの「作文」は4月入学は令和7年度までと注記されています。同じ1校でも出身校の種別や年度で課されるものが変わり得ます。
- 広尾学園高等学校(帰国生入試)――高校の帰国生入試は12月に実施。出願資格は「海外在住経験が1年以上あり、帰国後3年以内」、さらにインターナショナルコース希望者は英検2級以上または同等の英語力と明記されています。
- 関西学院千里国際中等部・高等部――帰国生・海外生入試の選考は作文(日本語または英語)と、生徒面接・保護者面接。学力試験で点を取る形式とは、準備の中身が違います。
「3教科の学力検査」「英語の外部資格」「作文と面接」――同じ帰国枠でも要求はこれだけ違います。「塾に入れば帰国枠に受かる」は成立しません。塾に何を頼むかは志望校が決まって初めて確定し、決まる前にできるのは①出願資格の確認と、②どの科目が来ても効く土台づくりの2つだけです。制度そのものは帰国子女枠の仕組みと帰国子女の高校受験にまとめてあります。
もったいないのは、志望校が見えない段階で年間契約の対策講座に申し込むケースです。順番は「資格確認 → 志望校の絞り込み → その学校の傾向を持つ塾」。守るだけで金額も負担も変わります。
いつから探すか――秋に始まる入試から逆算する
「日本の高校受験は2月」のイメージのまま海外で過ごすと間に合いません。帰国生入試は、それより早く動き出します。
私立では、広尾学園高等学校の帰国生入試が12月実施。関西学院千里国際は海外在住者向けの入試を11月下旬にオンラインで実施し、出願受付は10月下旬、急な帰国に備えた別枠を8月・11月・3月にも置いています。公立の代表例、東京都立高校の海外帰国生徒対象(4月入学)は令和8年度の場合、都立国際高校の書類提出が1月30日から2月5日、学力検査2月16日、合格発表2月18日。東京都には9月入学の生徒募集もあり、海外帰国生徒対象は三田・竹早・日野台・国際の4校、出願7月1日から2日、選抜7月8日、検査は日本語または英語による作文および面接と公表されています。

逆算します。試験が11月なら出願はその1か月前、証明書の取り寄せはさらに前。海外の学校は発行に時間がかかります。つまり「塾を探す」のは試験の半年前、中学3年の春から初夏。ただし探す時期と入る時期は別物で、春から夏は資格確認と候補校のリストアップ、専門塾に入るのは志望校が見えてからで間に合います。逆算の全体像は帰国生入試のカレンダー、海外でしか取れない書類は必要書類の取り寄せ手順へ。
帰国の時期でも選択肢は変わります。まだ海外にいるならオンラインに限られ、帰国直後なら通塾も直前講習も選べます。日程や検査内容は年度で変わるため、日付は各校の最新の募集要項でご確認ください。
海外にいる間は、制約のほうが先に選択肢を削る
海外在住のまま塾を選ぶとき、候補を削るのは「実績」ではなく生活の制約のほうです。
- 時差――日本時間の夕方以降のクラスは欧州・北米では深夜や早朝です。「オンライン対応」でも現地時間で何時かを確認します。
- 現地校の宿題との両立――課題が多い時期に週3コマ足すと睡眠が削られます。拘束は予習復習を含めた総時間で見ます。
- 通塾できない地域――日本人向けの塾がある都市は限られ、選択肢はオンラインに絞られます。
- 体験授業――時差で時間帯が合わないことも。その場合は担当講師本人と話せるかを条件に。
- 教材の郵送――紙のテキスト前提の講座は到着に数週間かかり関税がつく場合も。PDF配布の可否を早めに確認を。
いずれも問い合わせ1回で確認できます。時差早見表は海外からのオンライン塾の選び方へ。
タイプ別に「高校受験で何を頼めるか」
塾を「良い・悪い」で並べても意味がありません。高校受験でどこに何を発注できるかで分けます。
(a) 帰国生入試の専門塾。志望校別の傾向と出題、面接や志望理由書の作法を蓄積しています。JOBA(運営=株式会社アイウエア)は国内教室に加えロンドン・上海・ソウルなどに拠点を持ち、講習会、入試直前講習、志望校判定テスト、日本語作文や英語エッセイの対策を公表しています。志望校が決まった後の「的を絞った対策」はこの層が最も強い。逆に、決まる前に入っても中身が定まりません。
(b) オンライン家庭教師。TCK WorkshopやEDUBALのように海外・帰国生に特化して1対1で指導する事業者です。EDUBALは講師を帰国生・IBやインター出身の現役大学生に限定していると公表し、TCK Workshopは小1から高3まで帰国生の中学・高校・大学受験や編入試験のコースを持ちます。頼めるのは「弱点の一点集中」――この単元、この作文の型、この面接の質問。時間単価のため、範囲が広いと費用が伸びます。

(c) 日本の一般的な進学塾。指導力も教材も洗練されていますが、設計は一般入試(5教科の学力検査+内申点)向けです。帰国枠は科目が違い内申点の扱いも別のことが多く、そのままでは的がずれます。帰国生コースの有無を先に確認を。内申は帰国子女の内申点はどう見られるかに。
(d) 現地の日本人向け学習塾は、同じ時間帯・通学圏で通えるのが利点で、現地の受験情報が集まる場でもあります。一方、志望校の情報量は教室ごとに差が出ます。(e) 通信教材は学習量の維持には有効ですが、志望校別対策や面接練習は範囲外です。
| タイプ | 高校受験で頼めること | 頼めない・弱いところ | 効く時期 |
|---|---|---|---|
| 帰国生入試の専門塾 | 志望校別の傾向対策、面接・作文・志望理由書の型、出願実務の相談 | 志望校が未定だと講座が定まらない。費用は講座数で積み上がる | 志望校が決まった後 |
| オンライン家庭教師 | 弱点の一点集中。時差に合わせた時間設定。科目を絞った短期依頼 | 時間単価のため範囲が広いと費用が伸びる。集団で話す訓練にならない | 直前期/穴が特定できている時 |
| 日本の一般的な進学塾 | 5教科の学力の底上げ。一般入試と併願する場合の主軸 | 設計が一般入試向け。帰国枠の科目や内申の扱いとずれることがある | 帰国後、一般入試も視野に入る時 |
| 現地の日本人向け学習塾 | 同じ時間帯で通える。現地の受験情報と同じ立場の家庭とのつながり | 志望校の情報量は教室ごとに差。通える都市が限られる | 海外滞在中、通える範囲にある場合 |
| 通信教材 | 学年相当の学習量の維持。費用が読みやすい | 志望校別対策・面接練習は範囲外。続ける動機を家庭で作る必要 | 受験が視野に入る前の期間 |
塾では埋まらないもの――面接と作文に出る「学年相当の日本語」
帰国生入試の多くは作文と面接を含みます。都立の9月入学募集は検査そのものが「日本語または英語による作文および面接」、千里国際も作文と面接です。ここで見られているのは対策の量ではありません。初対面の大人に日本語で筋道立てて考えを話せるか。主張を立てられるか。試験3か月前の講座で作れる力ではないのです。
海外で育つ子の日本語は、会話は流暢でも書く・説明する段で学年から離れることがあります。原因は語彙でも漢字でもなく、日本語で考えを組み立てた経験の総量です。この「できない」を4つの層に分けたのが帰国子女の国語・「できない」の正体です。

ともだちじゃぱんが担うのは、この土台のほうです。私たちは帰国生入試の対策塾ではありません。志望校別の出題対策も面接練習も志望理由書の添削も行いません。そこは専門塾やオンライン家庭教師の領域で、志望校が決まったら迷わずそちらを使ってください。私たちが用意しているのは日本の現役水準の教員が担任として見る8人の少人数クラスと、クラスに日本に住む同世代の仲間がいる環境です。1対1と違い、日本語で人に伝えないと会話が進まない場が毎回あります。塾との併用が前提です。
費用は「月いくら」ではなく、積み上がり方で比べる
帰国生向けの塾は料金を公表していないところが少なくありません。志望校の数や残り期間で内容が変わり、標準コースを作りにくいためです。実際JOBAは対策メニューは公表していますが単価は非公表です。公表されていない料金を推測して書くことはしません。比べるべきは「積み上がり方」です。
ひとつは入会金+講座数で積み上がる型。専門塾の対策講座はこの形が多く、志望校を2校に増やせば講座も増えます。もうひとつが回数×単価の型で、オンライン家庭教師がこれです。TCK Workshopは入会金22,000円(税込・一世帯一口)、授業料が発生した月に運営維持管理費4,400円(税込)、授業料は講師のランク別に1時間あたり9,900円(税込)からと掲載し、海外在住での受講は消費税が非課税になる旨も明記しています。単価が分かれば時間数から総額を読めるのが利点です。
三つ目が定額型。ともだちじゃぱんは月額定額で通い放題――講座数でも回数でも増えません。受験期は費用が読めないので、土台だけでも固定だと計画が立ちます。どの型でも「合格までの総額」「志望校を1校増やしたときの増分」「面接と出願書類の添削が含まれるか」の3点は必ず聞いてください。タイプ全体の比較は「帰国子女の塾」オンラインの選び方にあります。
よくある質問
帰国子女の高校受験に、塾は必ず必要ですか?
必ずではありません。分かれ目は志望校の検査内容です。学力検査3教科の学校なら傾向を持つ塾の価値は大きい。作文と面接だけの入試では、短期講座より日本語で考えを組み立てる日常が効きます。まず募集要項で検査内容を確認し、何が足りないかを特定してから発注を。制度は帰国子女の高校受験に。
いつから塾を探し始めればいいですか?
探すのは中学3年の春から初夏、入るのは志望校が見えてからが目安です。私立の帰国生入試は秋から冬に集中し、11月の入試なら出願は10月、証明書の取り寄せはさらに前。夏に慌てると書類が間に合いません。志望校が未定のまま長期契約をしても費用だけ先に出ます。逆算は帰国生入試の日程へ。
海外にいながら受けられる高校受験対策はありますか?
あります。海外・帰国生に特化したオンライン家庭教師や、海外拠点を持つ専門塾があります。入試自体をオンラインで行う学校もあり、関西学院千里国際は海外在住者向けの入試をオンライン実施と公表しています。選ぶ際は現地時間で何時のクラスかと志望校の傾向を持つかで絞ってください。詳細は海外からのオンライン塾の選び方に。
塾の費用の相場はどれくらいですか?
対策に絞った相場は、公表している事業者が少なく一概には言えません。公表例としてTCK Workshopは入会金22,000円、運営維持管理費4,400円、授業料は講師ランク別に1時間9,900円(いずれも税込)からと掲載しています。専門塾は入会金と講座数で積み上がる形が多く、「月いくら」では比較できません。
日本の一般的な進学塾に入れても大丈夫ですか?
一般入試も併願するなら合理的です。ただし進学塾のカリキュラムは5教科の学力検査と内申点が前提で、帰国枠は科目も評価も別に定められることが多く、そのままでは的がずれます。帰国生向けコースの有無を先に確認し、帰国枠固有の作文・面接は別に手当てを。地域差は関東1都6県の帰国枠と東京都の帰国枠に整理しています。

