帰国して数か月、子どもが朝になるとお腹を痛がる。行きたくないと言い出す。そんなとき保護者は「帰国子女 不登校 小学生」「帰国後 学校 行きたくない」「帰国 子供 行き渋り」と検索します。出てくるのは一般的な不登校の解説ばかりで、「海外から帰ってきた子ならではの理由」に触れたものは多くありません。この記事では、帰国した小学生が学校に行けなくなるときに何が起きているのか、親がまず動くべき順番、そして「学校に戻る」以外も含めた居場所の選択肢を、実務の視点で整理します。
帰国してしばらく経ってから来る、というのが特徴です
まず知っておいていただきたいのは、これが特別な出来事ではないということです。文部科学省の調査では、小中学生の不登校は増加が続き30万人を超える規模になっています。帰国生に限った統計はありませんが、現場の実感としても、海外から帰ってきた子の行き渋りは決して珍しくありません。

そしてもうひとつの特徴がタイミングです。逆カルチャーショックは、ハネムーン期→逆カルチャーショック期→再適応期という段階をたどるとされ、帰国直後ではなく数か月経ってから表面化することがよくあります。最初の数週間は「久しぶりの日本」で気分も高く、周囲も「帰国したばかりだから」と大目に見てくれる。ところが2〜3か月経つと、周りは「もう慣れたはず」という前提で接し始め、子ども自身も「まだ慣れない自分」を責め始めます。ここで一気に崩れるのです。「最初は元気に通っていたのに」という保護者の戸惑いは、この時間差から来ています。
帰国した小学生に起きている4つのこと
行けなくなる理由は一つではなく、たいてい次の4つが重なっています。どれが主なのかを見極めると、打つ手が変わります。
- 言葉(教科の日本語):会話はできるのに、教科書が読めない。漢字が読めないと算数の文章題も社会も解けず、「勉強ができない子」として扱われる。本人がいちばん理由を説明できない部分です。
- 文化・ふるまい:手の挙げ方、給食、掃除、整列、持ち物の細かいルール。海外の学校では褒められた「自分の意見を言う」姿勢が、日本の教室では浮いてしまうことがあります。
- 人間関係:グループがすでにできあがっている時期に入る難しさ。話題(テレビ・ゲーム・流行り言葉)が共有できず、輪の外側にいる時間が続きます。
- 家庭の期待:「せっかく海外にいたのだから」「英語が話せるのだから」。悪気のない一言が、うまくいっていない自分を否定する圧力になります。

この4つのなかで、親が具体的に手を打てるのは1つ目です。文化や人間関係はすぐには変えられませんが、教科の日本語は積み上げれば必ず戻ります。そして実際、「授業が分かるようになった」ことをきっかけに、教室での居場所が戻る子は少なくありません。分かる授業が増えると発言できるようになり、発言できると存在が認められる――小学生の教室では、この順番がとてもよく効きます。国語の「できない」の中身を分解した解説は帰国子女の国語を、漢字の戻し方は帰国子女の漢字をご覧ください。
休み始めたら、親が最初にやること
順番があります。焦って「明日は行こう」と迫るより、次の順で動くほうが結果的に早いことが多いです。
- 1. 原因を子どもに問い詰めない:「なんで行きたくないの」に答えられる小学生はほとんどいません。本人にも分かっていないからです。まず休ませ、安全な場所であることを確認します。
- 2. 担任・スクールカウンセラーに事実を伝える:「わがまま」ではなく帰国に伴う適応の問題である可能性を共有します。教科の日本語でつまずいている場合は、公立校の日本語指導の対象になり得ます(海外での不登校もあわせてどうぞ)。
- 3. 学習の空白を止める:休んでいる間も学びが止まらないようにします。遅れが広がるほど、戻る時のハードルが上がるためです。
- 4. 学校以外の居場所を確保する:教室に戻る戻らないに関わらず、「人とつながる場」を一つ持っておくことが回復を支えます。
制度面で知っておくと安心なのが、自宅でのICTを活用した学習が、一定の要件を満たすと校長判断で「出席扱い」にできるという国の考え方が示されていることです(文部科学省の通知による)。要件や運用は学校・自治体で異なるため、必ず在籍校と教育委員会に確認してください。「休んでいる=すべてが止まる」ではない、と知っているだけでも、家庭の気持ちはずいぶん違います。
「学校以外の居場所」の選択肢を比べる

| 教育支援センター・フリースクール | オンラインスクール | 家庭教師・個別指導 | ともだちじゃぱん | |
|---|---|---|---|---|
| 担うもの | 通える居場所と生活リズム | 学習と居場所の両方 | 学習の遅れの補強 | 学年相当の国語+日本語で話す場 |
| 人とのつながり | 同じ地域の子どもたち | 全国の同世代 | 先生と1対1 | 日本在住の同世代と毎日 |
| 外に出る必要 | あり(通所) | なし(自宅から) | 訪問またはオンライン | なし(自宅から) |
| 帰国前から使えるか | 使えない | 一部可 | 可 | 可=海外にいる間から |
| 費用の考え方 | 公的機関は無償・民間は要確認 | スクールにより幅がある | 回数×単価で積み上がる | 通い放題で月額定額 |
| 向いている状況 | 外に出る力が戻ってきた段階 | 自宅から少しずつ再開したい | 学習の穴を短期で埋めたい | 言葉と友達を同時に立て直したい |
選ぶときの基準はシンプルで、「その子が明日、自分から参加したいと思えるか」です。良い制度でも、本人が拒めば続きません。とくに帰国直後の小学生は「日本語で失敗する場面」に強い恐怖を持っていることがあります。いきなり大人数の場に入れるより、少人数で、失敗しても大丈夫だと分かる場から始めるほうが安全です。
「授業が分からない」が原因かどうかを見分けたい方へ。1分でできる学年相当・国語力チェック(無料)で、学年の穴の目安がわかります。行き渋りの背景に学習のつまずきがあるなら、そこは必ず戻せます。
ともだちじゃぱんは、どこを担うのか
ともだちじゃぱんの母体は、国内最大級のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」(在籍1,000名超)を運営する株式会社NIJINです。NIJINアカデミーは、学校に行きづらくなった子どもたちがオンラインで学び直す場として始まり、そこから学校に戻っていった子どもは400名を超えます。「行けなくなった子が、また人とつながって学び直す」――私たちがいちばん長く向き合ってきたのは、まさにこのテーマです。

ともだちじゃぱんはその知見を、海外で育つ子ども向けに設計し直したスクールです。講師は採用合格率およそ2%の選抜で、今の日本の教室を知り尽くした現役水準の教員。8人制の少人数クラスなので、発言できないまま終わることがありません。そして日本に住む同世代のクラスメイトがいるので、帰国したときには「もう知っている友達」がいる状態から始められます。授業は平日の夜=現地の放課後の時間帯、料金は通い放題で月額定額。すでに帰国して学校に行きづらくなっているお子さんの場合は、NIJINアカデミー側が受け皿になることもできます。学校になじめないという段階のご相談は帰国子女が学校になじめないときもご覧ください。
よくある質問
帰国してすぐは元気だったのに、急に行き渋り始めました。なぜですか?
逆カルチャーショックは段階的に来るためです。帰国直後は「久しぶりの日本」で高揚感があり、周囲も「帰ってきたばかりだから」と受け止めてくれます。ところが2〜3か月経つと、周りは「もう慣れたはず」という前提に切り替わり、本人も慣れない自分を責め始めます。急に始まったように見えて、実際には少しずつ積み上がってきた疲れが表面化したものと考えてください。
無理にでも登校させたほうがいいのでしょうか?
まず休ませて、原因を切り分けるほうが結果的に早いことが多いです。とくに「授業が分からない」が背景にある場合、教室に押し戻すだけでは状況が悪化します。分からない時間が長くなるほど自信が削られるからです。学習面の穴を埋めながら、学校・スクールカウンセラーと状況を共有し、戻れるタイミングを一緒に探すのが現実的です。
休んでいる間の勉強はどうすればいいですか?
止めないことがいちばん大切です。遅れが広がるほど、戻るときのハードルが上がります。とくに漢字は学年配当のある積み上げ式なので、休んでいる間も少しずつ進めておくと復帰が楽になります。また、自宅でのICTを活用した学習は、一定の要件を満たせば校長判断で出席扱いにできるという国の考え方が示されています。運用は学校・自治体で異なるため、在籍校に確認してください。
英語は話せるのに、日本語で自信をなくしています。どうしたら?
英語ができることと、日本語の教室で自信が持てることは別問題です。多くの場合、「教科の日本語」が足りていないために発言できず、そこから自信が下がっています。会話ではなく、教科書を読む・書くという領域を学年相当まで戻すことが直接の対策になります。同時に、日本語で話しても大丈夫だと思える小さな場を用意してあげてください。少人数であることが効きます。
まだ海外にいます。帰国後の不登校を防ぐためにできることは?
2つあります。ひとつは学年相当の国語を止めないこと。帰国後のつまずきの多くは、教科の日本語から始まります。もうひとつは日本の同世代と日本語で話す時間を持っておくこと。流行りの言葉も、教室の空気も、少しずつ体に入っていれば、帰国後の「話が合わない」がやわらぎます。帰国前の準備は帰国前の日本語準備にまとめています。

