帰国が近づくと、多くのご家庭が同じ心配をします。「せっかく身についた英語を、帰国したら失うのではないか」。検索すると「帰国子女 英語 維持」「帰国子女 英語 維持 小学生」「帰国子女 英語 維持 中学生」「帰国子女 英語 維持 オンライン」と、学齢や手段ごとに細かく調べている保護者の多さが分かります。この記事では、帰国後に英語が落ちるメカニズムと、学齢別の現実的な維持のしかたを整理し、そのうえで――多くの記事が触れない――英語維持と同時に起きる「もう一つの問題」についても正直にお伝えします。
帰国後、英語はどのくらいの速さで落ちるのか
結論から言うと、使わなければ落ちます。とくに落ちやすいのは「話す力」で、聞く力・読む力は比較的残りやすいと言われます。落ち方には個人差が大きく、次の3つが効いてきます。
- 帰国時の年齢:低年齢で帰国したほど落ちやすい傾向があります。文字(読み書き)が定着する前に環境が変わるためです。
- 海外にいた期間と、そこで英語をどう使っていたか:現地校で教科を英語で学んでいた子と、日本人学校+英語授業だった子では、残る力の種類が違います。
- 帰国後に英語を使う時間があるか:これが最大の要因です。日本の日常生活では、意識して作らない限り英語を使う時間はゼロになります。

現場でよく言われる目安は、「週に数時間、英語で考える時間を確保できるかどうか」です。週1回の英会話レッスンだけでは、話す力の維持が精一杯で、伸ばすところまでは届きにくい。一方で、英語で本を読む習慣がある子は、驚くほど落ちません。読書は語彙と文構造を保つからです。維持のためにまずやるべきことを1つだけ挙げるなら、英語の多読を生活に組み込むことです。
学齢別・現実的な維持のしかた
やり方は学齢で変わります。ご自身のお子さんの段だけ読んでいただいて構いません。
- 小学生(低学年):文字が定着する前なので、音と読書が中心。英語の絵本・チャプターブックの読み聞かせ、動画、オンライン英会話を短時間でも高頻度に。「勉強」にすると続きません。
- 小学生(高学年):読み書きを保つ段階に入ります。英語での多読+書く機会を確保。英検などの目標を置くと、家庭で進捗が見えるようになります。
- 中学生:学校の英語が簡単すぎて退屈する時期。学校の英語とは別のレイヤー(多読・ディスカッション・英検準1級以上・オンラインでの英語授業)を用意しないと、地力が落ちていきます。
- 高校生:大学の帰国生入試や英語外部試験(TOEFL・IELTS等)に直結します。目的が明確な分、維持のモチベーションは作りやすい段階です。

手段としては、オンライン英会話、インターナショナルスクールのアフタースクール、帰国生向けの英語保持コース、English Only の学童・キャンプなどがあります。どれが優れているかではなく、「週にどれだけの時間、英語で考えるか」の総量で結果が決まる、と考えてください。
ここで正直にお伝えしたいこと――もう一つのリスク
英語維持の相談を受けるとき、私たちがいつもお伝えしていることがあります。帰国後の数年で本当に困る家庭の多くは、英語が落ちたからではなく、日本語(国語)が学年相当に届いていないから困っています。
理由は単純です。帰国後、子どもは1日6時間、日本語で授業を受けます。国語だけでなく、算数の文章題も、社会も理科も、すべて日本語で読んで書く。ここが学年相当に届いていないと、成績も自信も同時に下がります。一方の英語は、落ちても日常生活が回らなくなることはありません。つまり、緊急度がまったく違うのです。
背景には言語習得の仕組みがあります。日常会話(生活言語=BICS)は2〜3年で育ちますが、教科書を読んで考えて書く学習言語(CALP)は5〜7年かかるとされています(ジム・カミンズ)。家庭で日本語を話していれば会話は保てるので「うちの子は日本語も大丈夫」に見える。ところが教室では読み書きで詰まる。両言語とも会話はできるのに、どちらでも深く考えられないという状態(ダブルリミテッド)は、こうして生まれます。国語の「できない」の中身は帰国子女の国語、英語が得意な子ほど陥りやすい落とし穴はアメリカから帰国した子の国語にまとめています。
両立させるための優先順位のつけ方

「どちらも大事」は正論ですが、時間と費用は有限です。実務的には、時期によって配分を変えるのが現実解です。
- 帰国前(海外にいる間):英語は環境が勝手に維持してくれます。この時期こそ国語に投資するのが、いちばん費用対効果が高い。帰国後に埋める穴を小さくしておく時間です。
- 帰国直後(最初の1年):国語>英語。学校生活の立ち上がりが最優先です。英語は「落とさない最低ライン」(多読+週1回程度の会話)を維持する。
- 帰国1年後以降:学校生活が安定したら、英語の比重を戻します。中学受験・高校受験・大学受験で英語資格が武器になる場面が出てくるためです(帰国子女の中学受験)。
| オンライン英会話 | 英語保持コース・インター系 | 帰国生塾 | ともだちじゃぱん | |
|---|---|---|---|---|
| 担うもの | 英語で話す時間の確保 | 英語で学ぶ環境の継続 | 受験に向けた英語・国語対策 | 日本語(国語)の土台 |
| 英語の維持 | 会話中心に効く | もっとも効く | 資格・入試向けに効く | 担いません(専門に任せる) |
| 国語の土台 | 範囲外 | 範囲外 | 受験科目としては扱う | 学年相当を体系的に |
| 同世代の友達 | 基本1対1 | その場の子どもたち | 講座による | 日本在住の同世代と毎日 |
| 費用の考え方 | 回数×単価 | 比較的高額になりやすい | 講座数で積み上がる | 通い放題で月額定額 |
| 使いどころ | 最低ラインの維持 | 英語を本気で保つ | 受験期 | 帰国前後の国語の空白を作らない |
この表ではっきりさせておきたいのは、私たちは英語の維持を担わないということです。英語は英語の専門サービスに任せてください。私たちがお役に立てるのは、その裏側で静かに空いていく「国語の穴」を作らないことです。
「英語は大丈夫。日本語のほうはどうだろう?」と思った方へ。1分でできる学年相当・国語力チェック(無料)で、学年の穴の目安がわかります。配分を決める前に、現在地を確認しておくと判断が速くなります。
ともだちじゃぱんは、どこを担うのか
ともだちじゃぱんは、海外で育つ子どものための日本語(国語)のオンラインスクールです。国内最大級のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」(在籍1,000名超)を運営する株式会社NIJINが母体で、講師は採用合格率およそ2%の選抜。今の日本の教室を知り尽くした現役水準の教員が、8人制の少人数クラスで、学年相当の国語を教えます。英語の維持は、オンライン英会話や英語保持コースと組み合わせてください。役割が違うので、競合しません。

そしてもう一つ。英語を保つのに「英語で話す相手」が要るのと同じように、日本語を保つにも「日本語で話す相手」が要ります。家族との会話だけでは語彙が広がりません。ともだちじゃぱんのクラスには日本に住む同世代のクラスメイトがいて、平日の夜=現地の放課後の時間帯に、日本語で読んで、書いて、話します。帰国したときには「もう知っている友達」がいる状態から始められる――これは、英語の維持とは別の、帰国後の大きな安心です。料金は通い放題で月額定額です。
よくある質問
帰国後、英語はどのくらいで落ちますか?
個人差が大きく、一律には言えません。傾向としては話す力から落ち、聞く力・読む力は比較的残ります。低年齢で帰国したほど落ちやすく、読み書きが定着している年齢なら残りやすい。決定的なのは帰国後に英語を使う時間があるかどうかで、意識して作らない限り日本の生活では英語の時間はゼロになります。英語の多読を習慣にできた子は、驚くほど落ちません。
週1回のオンライン英会話だけで維持できますか?
話す力の「最低ラインの維持」には有効ですが、伸ばすところまでは届きにくいのが実際です。週1回のレッスンに英語の多読を足すと、費用を増やさずに効果が大きく変わります。読書は語彙と文構造を保つからです。中学生以降は、学校の英語とは別のレイヤー(多読・ディスカッション・英語資格)を用意しないと、地力が落ちていきます。
英語と国語、どちらを優先すべきですか?
時期で変えるのが現実的です。海外にいる間は国語(英語は環境が維持してくれます)。帰国直後の1年も国語優先(学校生活の立ち上がりが最優先で、英語は最低ラインの維持に留める)。学校生活が安定してから英語の比重を戻す。帰国後に本当に困るのは英語が落ちたときではなく、日本語の授業についていけないときだからです。
英語を保つためにインターナショナルスクールに入れるべきですか?
英語の維持という点ではもっとも効果的な選択肢のひとつです。ただし、費用に加えて「日本語(国語)を学ぶ時間が減る」という別の課題が生まれます。日本の高校・大学への進学を考えるなら、日本語の読み書きをどこで補うかを同時に設計してください。インターに通いながら日本語を伸ばす話はインター育ちの子の日本語で扱っています。
英検は帰国後の英語維持に役立ちますか?
役立ちます。理由は2つあり、ひとつは家庭で進捗が見える目標になること。もうひとつは、帰国枠入試や高校・大学の選考で英語資格が評価される場面があることです。ただし級を取ること自体が目的になると、話す力の維持がおろそかになりがちです。資格対策と、英語で読む・話す時間を、切り分けて確保してください。

