ロンドンへの赴任が中学生の子どもと重なるとき、いちばん先に確認すべきことがあります。ロンドン日本人学校に高等部はありません。同校は小学部と中学部からなる小中一貫の学校で、中学3年生は全員が卒業時に進路を選び直すことになります。しかも駐在の任期は自分では決められないので、「中3の3月に、家族はどこにいるのか」が読めないまま受験の年を迎える家庭が少なくありません。この記事は、中学部卒業後に実際にとられている進路を、日本の高校・英国の日系高校・現地校の3つに整理します。
ロンドン日本人学校は小学部と中学部だけ
まず学校の形から確認します。ロンドン日本人学校は私立の小中一貫教育校で、ロンドン西部イーリング区アクトンの87 Creffield Road, Acton, London W3 9PUにあります。高等部は設置されていません。
沿革をたどると、1965年に「日本語会」として始まり、1974年に補習授業校へ、そして1976年6月18日に全日制の学校として正式に開校しました。1987年4月には現在の校舎(元ハーバーダッシャーズ・アスケス女子学校の校舎)へ移転しています。100年以上前に建てられた建物を使う、英国らしい校舎です。
在籍者数は、英国の日系企業の盛衰とともに大きく動いてきました。開校まもない1976年10月は小学生54人・中学生25人。1987年に657人、1991年には980人まで増え、2001年には583人になっています。ピーク時から見れば規模はかなり縮んでおり、1学年あたりの人数は日本の公立中学よりずっと少ないのが実際です。

中学部卒業後の3つの道
高等部がない以上、選択肢は次の3つに整理できます。
| 進路 | 学ぶ場所 | 日本の高校卒業資格 | 家族との暮らし |
|---|---|---|---|
| ①日本の高校へ進学 | 日本 | あり | 子だけ帰国/家族で帰国 |
| ②英国の日系高校へ進学 | 英国 | 学校による(下記) | 寮または通学 |
| ③英国の現地校へ進学 | 英国 | なし(英国の資格) | 自宅から通学 |
この表でいちばん効いてくるのはいちばん右の列です。①を選ぶと、任期が残っている場合は子どもだけ日本へ戻る(親戚宅・寮)という判断になります。②なら英国に残りつつ日本の課程を続けられます。③は英国に根を下ろす選択です。学力の問題というより、家族がどこで暮らすかの問題だということが、進路を考えるうえで大事な視点になります。
②英国に残る場合――日系の高校は2つある
英国には、日本人学校の中学部を卒業したあとに進める日系の学校が2つあります。性格がかなり違うので、分けて見ます。
立教英国学院(ウェストサセックス州ラッジウィック)
立教英国学院は小学部(第5学年・第6学年)、中学部、高等部を置く男女共学・全日制普通科の学校です。特筆すべきは、日本の文部科学省から国内の学校と同等であると認定を受けた最初の私立在外教育施設であるという点。学校自身が「卒業・進学にあたっては日本国内の学校と同じ資格を有する」と説明しており、イギリスの文部科学省からも私立学校として認定されています。
完全寮制で、生徒は全員が寄宿寮で生活します。保護者が英国・日本・ヨーロッパ各地と世界各地に住んでいるため、親の任期が終わっても子どもが英国に残って学び続けられるのが最大の特徴です。立教大学をはじめとする複数大学の指定校推薦枠を持ち、2026年度からはハンガリー国立大学医学部への指定校推薦プログラムも始まります。
帝京ロンドン学園高等部(バッキンガムシャー州ウェクサム)
帝京ロンドン学園は高等部のみの学校で、所在地は Framewood Road, Wexham, Buckinghamshire SL2 4QS。ロンドン中心部まで40分、ヒースロー空港まで20分という立地です。個室の寮と通学のどちらかを選べるのが立教英国学院との大きな違いで、家族が英国にいるあいだは自宅から通い、任期が終わったら寮に移るといった組み替えができます。
2022年12月に国際バカロレア(IB)校の認定を受けており、グローバルスタディーズコースでは国際バカロレア資格(IBDP)の取得が可能です。私立在外教育施設として初めて日本語DPを提供している点も特徴です。日本の大学にも海外の大学にも道を残したい家庭に向いています。

①日本の高校へ戻る場合――帰国生入試という別ルート
いちばん多く選ばれるのが、日本の高校へ進む道です。海外在住期間などの条件を満たせば、帰国生(帰国子女)を対象とした入試で受験できる高校があります。一般入試とは別枠で、試験科目や出願時期も異なります。
ここで現実的な難所になるのが国語と社会です。ロンドン日本人学校は日本の学習指導要領に基づいて授業を行うので、教科の内容そのものは日本と同じです。ただし、日本にいる中学生が日常的に浴びている日本語の量――友達との会話、テレビ、部活の人間関係――は、海外では自動的には入ってきません。読解のスピードや記述の量で差がつきやすいのはこの部分です。
受験校の条件(在外年数・帰国後の経過月数・出願時期)は学校ごとに大きく違い、しかも毎年更新されます。中2の段階で候補校の募集要項を1度取り寄せておくと、中3の夏に慌てずにすみます。
③英国の現地校に進む場合
英国の現地校に進めば、GCSEやAレベルといった英国の課程に乗ることになります。英語力が十分にあり、家族が英国に長く residence を持つ見通しがあるなら有力な選択肢です。ただし日本の高校卒業資格は得られないため、その後日本の大学を目指す場合は帰国生入試や国際バカロレアなど別のルートを取ることになります。
また、英国の現地校は入学時期・出願プロセスが日本と大きく異なります。日本人学校の中3の学年暦と英国校の入学スケジュールは重ならないので、「日本の受験と英国の出願を同時に走らせる」期間が発生します。この二重進行は保護者の負担が大きく、早めに1本に絞る家庭も多いところです。

進路より先に決まってしまうもの――任期
ここまで3つの道を並べましたが、実際の家庭でこれらを比べる順番はたいてい逆です。先に任期が決まり、あとから進路が絞られる。中2の冬に「あと1年で帰任」と告げられて日本の高校受験へ舵を切る家庭もあれば、中3の秋に延長が決まって英国の日系高校を調べ始める家庭もあります。
だからこそ、どの道に転んでも効くものに時間を使っておくのが合理的です。それが日本語で読む・書く・話す力です。日本の高校を受けるなら国語がそのまま得点になり、英国の日系高校へ進むなら日本語で授業を受け続けることになり、現地校へ進んでも家庭の言語として残ります。3つの道すべてで無駄にならない準備は、実はこれくらいしかありません。
日本語を、日本の同世代と一緒に続ける
日本人学校に通っていれば日本語は保てる、と思われがちですが、帰国した子どもたちがつまずくのは教科書の日本語ではなく、同世代の日本語のほうです。話す速さ、話題、言い回し。教室で困るのはそこでした。
ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の教員が8人の少人数クラスを担任し、日本にいる同世代の子どもたちと同じクラスで学ぶオンラインの日本語スクールです。学校教育法第一条に定める学校(一条校)ではありませんが、日本の教員が日本の教科を日本語で教えます。ロンドンと日本の時差は8時間(夏時間)。ロンドンの朝が、日本の夕方のクラスにあたります。
よくある質問(ロンドン日本人学校 高校)
ロンドン日本人学校に高校(高等部)はありますか?
ありません。ロンドン日本人学校は小学部と中学部からなる小中一貫教育校です。中学部を卒業した生徒は、日本の高校、英国の日系高校、英国の現地校のいずれかへ進みます。
英国に日本の高校卒業資格が取れる学校はありますか?
あります。立教英国学院は、日本の文部科学省から国内の学校と同等であると認定を受けた最初の私立在外教育施設で、学校自身が「卒業・進学にあたっては日本国内の学校と同じ資格を有する」と説明しています。小学部(5・6年)、中学部、高等部を置く完全寮制の学校です。
立教英国学院と帝京ロンドン学園の違いは?
大きな違いは3つです。①立教英国学院は小学部5年から高等部まで、帝京ロンドン学園は高等部のみ。②立教英国学院は完全寮制、帝京ロンドン学園は個室の寮と通学を選択できます。③帝京ロンドン学園は2022年12月にIB校認定を受け、私立在外教育施設として初めて日本語DPを提供しています。
帝京ロンドン学園はロンドンから遠いですか?
所在地は Framewood Road, Wexham, Buckinghamshire SL2 4QS で、ロンドン中心部まで40分、ヒースロー空港まで20分です。自宅からの通学も選べる距離感で、一時帰国や親の出張との両立もしやすい立地です。
ロンドン日本人学校の生徒数はどのくらいですか?
年によって大きく変動してきました。開校まもない1976年10月は小学生54人・中学生25人、1987年に657人、1991年に980人とピークを迎え、2001年には583人になっています。最新の在籍者数は学校へご確認ください。
中3で帰国するかどうかが決まりません。どう備えればいいですか?
3つの道のどれに転んでも効く準備をしておくのが現実的です。具体的には日本語の読み書きと、同世代と話す機会です。日本の高校を受けるなら国語がそのまま得点になり、英国の日系高校に進んでも日本語で授業を受け続けることになります。あわせて、候補校の募集要項を中2のうちに一度取り寄せておくと、中3の夏の負担が軽くなります。
高校段階の選択肢全体は日本人学校の高校、中学部そのものは日本人学校の中学部にまとめています。ロンドンの学校選び全体はロンドンの学校選び、学費はイギリスの日本人学校の学費、世界の学校は日本人学校 一覧をどうぞ。補習授業校との違いは日本人学校と補習校の違いで解説しています。


