「帰国生入試、そのうちなくなるらしいよ」――駐在先の日本人コミュニティで、一度は耳にする話ではないでしょうか。実際、「帰国子女 大学受験 なくなる」「帰国子女 大学受験 なくなる なぜ」「帰国生入試 廃止」と検索する保護者は少なくありません。ところが出てくるのは塾のコラムや個人の投稿ばかりで、「制度そのものが廃止されたのか」「どの大学の、どの学部が、いつから変わったのか」「なぜそう言われるようになったのか」という肝心の出どころがはっきりしません。この記事では、公開情報で裏が取れたことだけを書きます。裏が取れなかったことは「確認できませんでした」と正直に書きます。お子さんの進路に直結する話だからこそ、伝聞ではなく一次資料に戻れる状態にしておくことが目的です。
何が実際に起きたのか――早稲田・慶應で確認できた変更
まず、うわさの震源地と思われる二校から見ていきます。早稲田大学の入学センターが公開している「帰国生・外国学生を対象とした入試」のページには、帰国生を対象とする入試として教育学部の帰国生入学試験(教育学科教育学専攻生涯教育学専修、英語英文学科が対象)と、国内者・帰国者を問わず受け入れる人間科学部のFACT選抜入学試験が案内されています。あわせて「2025年度入試以降の複数学部共通募集の停止について」という資料が掲載されており、ひとつの出願で複数学部を受けられた大学横断の帰国生募集が停止されたことが読み取れます。一方で政治経済学部は「グローバル(海外就学経験者)入学試験」を実施しており、2026年度の入試要項が公開されています。つまり早稲田で起きたのは全廃ではなく、大学一括の入口が、学部ごとの入口に分かれたという再編です。
慶應義塾大学はどうでしょうか。学部入学案内の帰国生入試ページで対象として案内されているのは経済学部・法学部・医学部・理工学部です。そして入試の変更点として「2026/2027年度以降 総合政策学部・環境情報学部『帰国生対象入学試験』の募集停止について」が掲示されています。SFC(総合政策学部・環境情報学部)側の入試ページにも、帰国生対象入学試験は2025年度の実施をもって終了した旨と、今後は春AO・夏秋AO、条件が合えば冬AO(GIGA)や一般選抜の出願を検討してほしい、という案内が出ています。なお、文学部・商学部・看護医療学部・薬学部が2025年度から募集を停止したという記述は帰国生向けの情報サイトに複数見られますが、大学の公式ページで確認できたのは「現在の対象学部が経済・法・医・理工である」ところまでで、その経緯は公式には確認できませんでした。

「制度そのものが廃止された」という事実は確認できません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。帰国生を対象とした大学入試という制度が全国一律に廃止された、という事実は確認できませんでした。むしろ、最新年度の要項が公表され続けている入試がいくつも見つかります。東京大学は「外国学校卒業学生特別選考」の第2種として帰国生徒を対象とした選抜を実施しており、2027年度の募集要項が公開されています。大阪大学にも「帰国生徒特別入試」のページがあり、2027年度入試の入学者選抜要項が公表済みで、募集停止をうかがわせる記載は見当たりませんでした。
私立でも同様です。上智大学は「海外就学経験者(帰国生)入学試験」を国際教養学部を除く学部・学科で募集しており、2027年度の入学試験要項が公開されています。土台の部分でも、文部科学省は毎年度「大学入学者選抜実施要項」を各大学に通知しており、令和9年度(2027年度)版も公表されています。そこでは帰国生徒等について、外国における教育事情の違いに配慮し、小論文・面接・資格検定試験の結果などを適切に組み合わせて選抜する、という考え方が示されています。制度の器そのものは、今も置かれていると言えます。
したがって、正確な言い方はこうなります。「なくなる」のではなく、「一部の大学・学部で、帰国生専用の入口が閉じられ、総合型選抜や学部独自方式に移された」。全体像そのものは帰国子女の大学受験の仕組みに、枠という言葉の意味そのものは帰国子女枠とは?に整理しています。国公立の事情は私立とかなり違うので、帰国子女 大学受験 国立もあわせてご覧ください。

なぜ「なくなる」と言われるのか――背景として確認できること
では、なぜこの言い方が広まるのでしょうか。断定はできませんが、公開データから読み取れる構造的な変化はいくつかあります。ひとつは、日本の大学入試そのものの重心が動いていることです。文部科学省が公表した令和7年度の入学者選抜実施状況では、大学全体の入学者のうち総合型選抜が126,766人(19.5%)、学校推薦型選抜が221,415人(34.1%)を占めています。合わせれば半数を超えます。書類・小論文・面接で人を見る選抜が主流のひとつになった以上、帰国生専用の入試を別立てで持たなくても、同じ物差しで評価できてしまう――そう判断する大学が出てくるのは自然な流れです。
- 総合型選抜への吸収:帰国生専用の入口を閉じ、総合型選抜や学部独自方式で受け入れる形へ。慶應義塾大学SFCが春AO・夏秋AO等を案内しているのが代表例です。
- 入口の多様化:文部科学省のIB教育推進コンソーシアムによれば、令和7年1月時点で97大学が国際バカロレアのスコア等を活用した入試を実施しています。海外で学んだ子が使えるルートは、帰国生入試だけではなくなりました。
- 英語だけでは差がつきにくくなった:英語資格を出願要件や加点に使う入試が国内でも広がりました。大学は「英語+何か」を見たい、という指摘は帰国生指導の実務者からも出ています(識者の見解であり、大学の公式見解として確認できたものではありません)。
- 大学横断の便利さが消えた:早稲田大学の複数学部共通募集の停止のように、受験生から見て「使い勝手が悪くなった」変化が、「なくなった」という体感に直結しています。

もうひとつ、見落とされがちな点があります。入口が総合型選抜に移ると、求められるものはむしろ増える傾向があるということです。専用入試では海外在留年数と英語資格と小論文で済んでいたものが、総合型選抜では活動記録、志望理由、探究の中身、そして日本語での論述まで問われることがあります。「枠がなくなって不利になった」というより、評価される中身が広がったと受け止めるほうが実態に近いはずです。
中学受験の「帰国子女枠 廃止」はどうなのか
同じ不安は中学受験でも語られます。結論から書くと、中学入試で帰国子女枠が全国的に廃止された、という事実は確認できませんでした。首都圏では多くの学校が帰国生入試を続けており、日能研グローバル・サービスなどが毎年、帰国生入試の日程一覧を公表しています。学校ごとの募集停止までは網羅的に確認できませんでしたが、「制度が消えた」と言える状況は見当たりません。
確認できたのは、廃止ではなく出願資格の厳格化と日程の後ろ倒しです。中学受験の専門メディアは、東京の私立中学の帰国生入試について、2024年度入試から出願資格を「海外滞在1年以上、帰国後3年以内」に明確化したこと、実施日を11月10日以降、その翌年度以降は11月20日以降とする申し合わせがなされたことを伝えています。背景として、海外在住経験のない国内インターナショナルスクール在籍者などにまで受験資格が広がっていたこと、日程の早期化が進んでいたことが挙げられています。ただし、これは東京私立中学高等学校協会の申し合わせとして報じられている内容であり、協会自身が公開する一次資料そのものは確認できませんでした。お子さんが該当しそうな場合は、志望校の募集要項で出願資格を直接ご確認ください。
言い換えれば、中学受験で起きているのも「なくす」方向ではなく「本来の対象に戻す」方向の調整です。海外での在籍期間や帰国時期が、これまで以上に効いてくるということでもあります。中学受験の条件・日程・選考型は帰国子女 中学受験の条件・日程・選考型にまとめています。
枠の名前が変わっても、確かめ方は同じ
ここまでを踏まえると、保護者がやるべきことははっきりします。うわさの真偽を議論するのではなく、志望校の最新の募集要項を自分の目で見ることです。手順は、①大学の入試情報ページで「帰国生」「海外就学経験者」「外国学校卒業」「グローバル」の語を探す、②見つからなければ総合型選抜・AO入試の出願資格に海外就学の記載がないか確認する、③出願資格(在籍年数・帰国後の経過期間)と選考科目・提出書類を控える、④「入試の変更点」のお知らせを必ず読む、の四つだけです。入試名称が変わっただけで、実質的に帰国生が主対象の入試が残っているケースがあるため、①で見つからなくてもそこで終わらせないことが大切です。
| 早稲田大学 | 慶應義塾大学 | 東京大学・大阪大学 | 上智大学 | |
|---|---|---|---|---|
| 確認できた変更 | 2025年度入試以降、複数学部共通の帰国生募集を停止 | 総合政策・環境情報の帰国生対象入試は2025年度の実施をもって終了(2026/2027年度以降 募集停止) | 募集停止を示す記載は確認できず | 募集停止を示す記載は確認できず |
| 現在確認できる入口 | 教育学部の帰国生入学試験/人間科学部FACT選抜/政治経済学部のグローバル(海外就学経験者)入学試験 | 帰国生入試は経済・法・医・理工で案内。SFCは春AO・夏秋AO等へ | 東大=外国学校卒業学生特別選考(第2種・帰国生徒)/阪大=帰国生徒特別入試 | 海外就学経験者(帰国生)入学試験(国際教養学部を除く学部・学科) |
| 読み取れること | 大学一括の入口が学部ごとに分かれた | 学部単位で終了と継続が混在している | 国立でも帰国生徒向けの特別選考は続いている | 最新年度の要項が継続して公開されている |
| 確かめる場所 | 入学センターと各学部の入試ページ | 学部入学案内の「入試の変更点」 | 各大学の入学者選抜要項・募集要項 | 入試情報サイトの入学試験要項 |
枠に左右されない準備は「日本語で読んで、書いて、答えられる」
制度の話をここまでしてきましたが、実務的な結論はひとつです。枠の有無に左右されない準備をしておくこと。そしてそれは、いちばん潰しが効く準備でもあります。帰国生入試が残っていれば小論文と面接があり、総合型選抜に移っていても志望理由書・活動報告・面接があります。多くの場合、この部分は日本語です。名称がどう変わろうと、日本語で読んで、考えて、書いて、口頭で答えられる力が問われる構造は変わりません。合格した後も、講義もレポートも日本語で進みます。
ここで効いてくるのが、海外にいる間の積み上げです。日常会話(生活言語・BICS)は環境に入れば2〜3年で身につきますが、教科書を読んで考えて書く学習言語(CALP)は5〜7年かかると言われます。高校生になってから小論文だけ対策しようとしても、そもそも語彙と読解の土台がなければ書けません。逆に言えば、中学生のうちから学年相当の国語を止めずにいれば、入試制度がどう変わっても持ち出せる資産になります。書く力の伸ばし方は帰国子女の作文に、国語のつまずきの層は帰国子女の国語に整理しています。
受験対策は帰国生塾、土台の国語はともだちじゃぱん
正直に申し上げると、ともだちじゃぱんは受験専門塾ではありません。志望校ごとの出願資格の読み解き、小論文・面接・志望理由書の対策は、蓄積を持つ帰国生に強い塾の領域で、その価値は本物です。私たちが担うのはそのひとつ手前――学年相当の国語・記述という土台と、日本の同世代とのつながりです。受験期は帰国生塾と併用し、志望校対策は塾で、土台の国語はうちで、という分担が現実的だと考えています。

ともだちじゃぱんは、国内最大級のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」(在籍1,000名超)を運営する株式会社NIJINが母体です。講師は採用合格率およそ2%の選抜で、今の日本の教室を知り尽くした現役水準の教員が、8人制の少人数クラスで教えます。1対1の家庭教師と違い、クラスには日本に住む同世代の仲間がいるのが特徴で、「勉強だから」ではなく「友達と話したいから」続く。だから漢字も読解も記述も、日常のなかで積み上がります。そして帰国して日本の大学に進むとき、すでに日本に友達がいる状態で新生活を始められることは、受験そのものとは別の大きな安心になります。料金は通い放題で月額定額です。
まずは今の学年とのギャップを確認したい方へ。1分でできる学年相当・国語力チェック(無料)で、お子さんの「学年の穴」の目安がわかります。海外での国語・日本語の続け方は海外駐在×子どもの国語・日本語 完全ガイドにまとめています。
よくある質問
帰国子女の大学受験は、本当になくなるのですか?
制度が全国一律に廃止された、という事実は確認できませんでした。東京大学の外国学校卒業学生特別選考(第2種・帰国生徒)、大阪大学の帰国生徒特別入試、上智大学の海外就学経験者(帰国生)入学試験は、いずれも最新年度の要項が公開されています。確認できたのは、早稲田大学の複数学部共通募集の停止や、慶應義塾大学の総合政策学部・環境情報学部での終了といった個別の大学・学部での停止や再編です。志望校ごとに事情が違うため、必ず最新の募集要項でご確認ください。
「なくなる」と言われるのはなぜですか?
公開データから読み取れる要因はいくつかあります。文部科学省の令和7年度入学者選抜実施状況では、大学全体で総合型選抜が19.5%、学校推薦型選抜が34.1%を占めており、書類・小論文・面接で評価する入試が広がっています。国際バカロレアのスコア等を活用する入試も令和7年1月時点で97大学が実施しています。帰国生専用の入口を持たなくても評価できる仕組みが整い、専用入試が総合型選抜へ吸収される動きが出ている、という説明が成り立ちます。ただし各大学が停止の理由を公式に説明しているわけではないため、断定はできません。
中学受験の帰国子女枠が廃止されるという話は本当ですか?
全国的に廃止された、という事実は確認できませんでした。首都圏では多くの学校が帰国生入試を継続しており、毎年の日程一覧も公表されています。確認できたのは廃止ではなく厳格化のほうで、2024年度入試から東京の私立中学の出願資格を「海外滞在1年以上、帰国後3年以内」に明確化し、実施日を11月10日以降(翌年度以降は11月20日以降)とする申し合わせがなされたと専門メディアが伝えています。ただし協会自身の一次資料は確認できませんでした。志望校の募集要項で出願資格を直接ご確認ください。
志望校の帰国生入試が見つからないときは、あきらめるしかないですか?
その前に、名称が変わっていないかを確かめてください。早稲田大学の政治経済学部のように「グローバル(海外就学経験者)入学試験」という名前で実質的に海外就学者を対象とする入試が用意されていることがあります。総合型選抜やAO入試の出願資格に海外就学の記載が入っている場合もあります。「帰国生」の語だけで検索して見つからなくても、「海外就学経験者」「外国学校卒業」「グローバル」などの語や、総合型選抜の出願資格まで確認するのが安全です。
制度が変わるかもしれない前提で、いま何をしておけばいいですか?
二つあります。ひとつは書類の蓄積で、在学証明書・成績証明書・出入国の記録・英語資格のスコア・活動の記録を、その年度が終わるたびに手元にそろえておくこと。どの入口を使うことになっても必要になります。もうひとつが日本語です。帰国生入試でも総合型選抜でも、小論文・志望理由書・面接は日本語という学校が多く、入学後の学びも日本語で進みます。学年相当の漢字・読解・記述を止めないことが、制度がどう動いても価値を失わない準備になります。

