帰国の日程が決まると、やることが一気に増えます。そのなかで後回しにされやすいのが在留届の帰国時の手続きです。「在留届 帰国届」で検索すると出てくる名称もばらばらで、公館によって「帰国届」「帰国・転居届」と書かれていたりします。正式名称は「帰国・転出届」で、オンライン在留届(ORRネット)から出せます。この記事では、法令の現行条文と外務省の公式記述だけを根拠に、いつ・どこに・何を出すのか、そして出さないと実際に何が起きるのかを整理します。あわせて、帰国後にお子さんの学校が決まる仕組みまでつなげます。
はじめにお断りです。当社は教育事業者であり、行政書士・弁護士ではありません。この記事は公開されている条文と公式ページの記述を整理したもので、個別のケースの可否は在外公館・お住まいの市区町村にご確認ください。記載はすべて2026年9月8日時点のものです。

正式名称は「帰国・転出届」
外務省のオンライン在留届(ORRネット)では、手続きが3つに分かれています。
- 在留届=海外に住所または一時滞在先を定めて3か月以上滞在するときに出すもの
- 変更届=住所や連絡先など、届出の記載事項が変わったとき
- 帰国・転出届=日本に帰国するとき、または在留届を出した公館の管轄区域から出るとき
公式FAQには「日本に帰国する予定が決まった方及び既に帰国された方」「在留届を提出した日本大使館・総領事館の管轄区域から転出する予定が決まった方及び既に転出された方」は帰国・転出届、と書かれています。ログイン画面のボタンも「変更届、帰国・転出届を提出する方」という名前になっています。
海外で、日本語を続ける方法をお探しの方へ
ともだちじゃぱんは、海外で育つ子どものためのオンラインの日本語スクールです。日本の同世代と毎日話せて、日本の現役水準の先生が担任につく8人の少人数クラス。
🎁 ご登録の方に「学校案内」と「海外で育つ子の日本語 続け方ガイド」のPDFを、自動返信でその場でお届けします。学費・奨学金・開校日程もいちばんにお知らせします。
30秒・無料。ご質問は返信メールにそのままご返信ください。
紛らわしいのが同じ公館の管轄内で引っ越す場合で、これは帰国・転出届ではなく変更届です。逆に、第三国へ引っ越すときは「新たな引っ越し先を管轄している日本大使館・総領事館に在留届を提出する前に、現在の住所地を管轄している日本大使館・総領事館に『帰国・転出届』を提出してください」と順序まで指定されています。
法令上は「出国前」が原則です
ここが多くの記事で抜けている点です。在留届の根拠は旅券法第16条ですが、帰国届の根拠はその先の旅券法施行規則第15条第2項にあります。現行条文はこうです。
前項の届出を行った者は、住所、居所その他の届出事項に変更を生じたときは遅滞なく、当該届出を行った領事官の管轄区域を去るときは事前に、その旨を当該領事官に届け出なければならない。
旅券法施行規則(令和四年外務省令第十号)第15条第2項(e-Gov法令検索の現行条文・2026年9月8日確認)
「去るときは事前に」=出国前に出すのが法令上の原則です。もっとも、忘れたまま帰国してしまっても救済はあります。外務省FAQには「帰国・転出届を提出せずに日本に帰国してしまいました。帰国してからでも提出できますか?」という問いがあり、オンラインで在留届を出した人はORRネット上で帰国・転出届を提出してくださいと案内されています。書面で在留届を出したかたは、提出した公館に相談してください(書面で出した在留届の内容はORRネット上では変更できないと明記されています)。
なお、外務省の公式記述に「出国の何日前まで」といった具体的な日数は見当たりません。条文の表現は「事前に」「遅滞なく」までです。
出さないと何が起きるか(罰則の有無まで)

外務省は、出さなかった場合に起きることを具体的に書いています。
帰国・転出届の提出がないと、帰国された後も、注意喚起や安否確認のためのSMSやメールがみなさんの電話番号やメールアドレスに送信されることになります。緊急事態の際、日本大使館・総領事館は、既に帰国しているあなたの安否確認に時間をとられ、実際に滞在している他のみなさんの安否確認がそれだけ遅れることにもなりかねません。
外務省「在留届FAQ」問9(2026年9月8日閲覧)
自分の不利益というより、現地に残っている人の安否確認が遅れるという書き方をしているのが特徴です。あわせて、次の5つのいずれかに当たると公館側で転出扱いになることも公表されています。
- 在留届に登録されている滞在終了予定日から、1年以上経過した場合
- 在留届を提出した公館から、1年以上連絡を取ることができない場合
- 日本の市区町村に転入届を提出し、又は日本に入国後1年以上出国しないなど、生活の本拠が日本にあると判断される場合
- パスポートの有効期間満了日から1年以上経過している場合
- 在留届に登録された住所に居住していない場合
では罰則はあるのでしょうか。旅券法に、在留届・帰国届の不提出に対する罰則の規定はありません。旅券法の罰則規定(第23条〜第25条)が対象にしているのは、不正取得・他人名義旅券の行使・譲渡貸与・返納命令違反・渡航先違反などで、第16条は引用されていません。義務ではあるが罰則はない——これが正確な整理です。
ところが、帰国後の手続きのほうには過料があります。住民基本台帳法第22条は転入届を「転入をした日から十四日以内」と定め、同法第52条第2項は「正当な理由がなくて第二十二条から第二十四条まで…の規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する」と定めています。出るときの届は罰則なし、帰ってからの届は過料ありという非対称は、知っておく価値があります。
| 手続き | いつ | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 帰国・転出届(在留届の終了) | 管轄区域を去るとき=事前に(帰国後も提出可) | 旅券法16条/同施行規則15条2項 | なし |
| 転入届(住民票) | 転入をした日から14日以内 | 住民基本台帳法22条 | 5万円以下の過料(同法52条2項) |

OUR TEACHERS
教えるのは、日本の学校の先生です。
家庭教師でも、動画配信でもありません。日本の小中学校で子どもと向き合ってきた教員が、約2%の選抜を通って担任になります。まずは無料で、お子さまのことを相談してみてください。
無料です。お子さまがご一緒でなくても構いません。無理におすすめすることはありません。
帰国前に済ませておくもの・帰国後にしかできないもの
帰国届そのものより見落としが多いのが、在留証明です。外務省は在留証明の発給条件として「現地に既に3か月以上滞在し、現在居住していること」「原則として日本に住民登録がないこと」を挙げています。在外公館の説明はもっと直接的です。
「在留証明書」は、あくまで現に海外に在住する方に対するものなので、日本に帰国した方に対しては発給することはできません。
在メルボルン日本国総領事館「在留証明」(2026年9月8日閲覧)
在留証明は、お子さんの帰国生入試の出願書類として求められることがあります。帰国してからでは取れないので、必要になりそうなら出国前に、必要な通数を取り切っておくのが確実です。「あとで取り寄せればいい」が効かない書類だと覚えてください。
在外選挙人名簿も、帰国すると自動では残りません。公職選挙法第30条の11第2号は、国内の市町村に住所を定めた日として戸籍の附票に記載された日後4か月を経過したときに在外選挙人名簿から抹消すると定めています。ただし2018年6月1日から、転入後4か月以内に直接国外へ転出するなど一定の要件を満たす場合は抹消されない扱いになりました。短期の一時帰国か、本帰国かで扱いが変わります。
| タイミング | やること | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| 出国前 | 在留証明・署名証明を必要数取得/帰国・転出届(法令上はここが原則) | 在留証明は帰国後は発給されない(外務省・在外公館) |
| 帰国直後 | 市区町村へ転入届(14日以内) | 住基法22条。パスポート(帰国日のスタンプ)や戸籍謄本・戸籍の附票を求める自治体があります |
| 転入届のあと | 教育委員会から就学通知が来る/学校へ提出 | 学校教育法施行令1条2項・4条・6条。自治体により手順が異なります |
| 忘れていたら | ORRネットから帰国・転出届(帰国後でも可) | 書面で在留届を出した場合は提出先の公館へ相談 |
子どもの学校は、転入届を出さないと動きません
ここが、お子さんのいるご家庭にとって帰国手続きの本丸です。文部科学省は次のように説明しています。
学校教育法第17条に規定された就学義務については、国内に居住する日本国民に対して課されているものであり、外国に居住する日本国民には適用されません。したがって、日本国民である学齢児童生徒が帰国した場合、その時点からその保護者には就学義務がかかることとなり、住所地の教育委員会は住民基本台帳に基づいて学齢簿を編製し、保護者に対して就学すべき学校の指定・編入学期日を通知することとなります。
文部科学省「外国から帰国した学齢児童生徒の就学手続について」(2026年9月8日閲覧)
法令をたどると一本道になっています。転入届(住民基本台帳法22条)→ 市町村長から教育委員会へ通知(学校教育法施行令4条)→ 住民基本台帳に基づいて学齢簿へ記載(同施行令1条2項)→ 就学すべき学校の指定・入学期日を「速やかに」通知(同施行令6条)。つまり転入届を出さないかぎり、就学通知は動きません。実際、「区の住民登録がない方は受け入れができません」と明記している自治体もあります。
なお同じ文科省の説明には「重国籍者であっても日本の国籍を有する学齢児童生徒の保護者は、就学義務を負うことになります」とも書かれています。ご家庭によってはここも確認しておいてください。編入の実務は帰国後の編入・転入手続きの流れ、小学校の時期は本帰国後、小学校はいつから通える?にまとめています。

手続きより長くかかるのは、日本語のほうです
帰国届も転入届も、動き出せば数日で終わります。長くかかるのはお子さんが日本の教室の日本語に戻るまでの時間です。会話はできても、教科書の説明文や、話し合いの場面で使う言い回しは別ものです。編入した学期の途中から、算数や理科の内容ではなく問題文の日本語で詰まるという話は珍しくありません。
ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の先生が学年相当の国語を見て、日本にいる同世代と8人の少人数クラスで毎日話すオンラインの学校です。帰国が決まってから帰国するまでの数か月は、じつはいちばん学習が止まりやすい時期です。その空白をつくらないことが、帰国後の教室での立ち上がりを軽くします。
よくある質問(在留届の帰国時の手続き)
帰国届の正式な名前は何ですか?
外務省・ORRネットでの正式名称は「帰国・転出届」です。ただし在外公館のページには「在留届・転居/変更/帰国届」といった表記も残っており、名称にはゆれがあります。ORRネットにログインすると「変更届、帰国・転出届を提出する方」というボタンから進めます。
帰国してから出しても大丈夫ですか?
出せます。外務省FAQに「帰国・転出届を提出せずに日本に帰国してしまいました」という問いがあり、オンラインで在留届を出した場合はORRネット上で提出、書面で出した場合は提出先の公館に相談と案内されています。ただし法令上は「管轄区域を去るときは事前に」(旅券法施行規則15条2項)が原則で、帰国後の提出は救済にあたります。
出さないと罰則がありますか?
旅券法には在留届・帰国届の不提出に対する罰則の規定がありません。ただし義務ではあり、出さないと帰国後も安否確認のメールやSMSが届き続け、現地に残っているかたの安否確認を遅らせることになると外務省が説明しています。一方で帰国後の転入届は住民基本台帳法22条で14日以内と定められ、同法52条2項に5万円以下の過料があります。
ORRネットのパスワードを忘れました
外務省FAQに手順があります。パスポート番号と登録したメールアドレスを用意して「パスワード再登録」から所定の事項を入力すると、登録メールアドレスに再登録用のメールが届きます。利用者ID(メールアドレス)自体が使えなくなっている場合は、住所地を管轄する公館に連絡すると変更できます。なおパスワードを一定回数以上間違えるとアカウントがロックされ、2時間後に再試行となります。
在留証明は帰国後に取れますか?
取れません。在外公館は「あくまで現に海外に在住する方に対するもの」であり、日本に帰国した方には発給できないと明記しています。外務省の発給条件にも「原則として日本に住民登録がないこと」とあります。帰国生入試などで必要になる可能性があるなら、出国前に取り切ってください。
子どもの学校の手続きは、帰国届とは別ですか?
別です。就学通知は帰国届ではなく、日本での転入届を起点に動きます。転入届が出ると市町村長から教育委員会に通知が行き、住民基本台帳に基づいて学齢簿が編製され、就学すべき学校と入学期日が通知されます(学校教育法施行令1条2項・4条・6条)。帰国届と転入届が自動で連携する仕組みがあるという公式の記述は見当たりませんので、それぞれ別に届け出てください。
まとめ
帰国時の在留届の手続きは、名前が「帰国・転出届」で、法令上は出国前が原則、帰国後でも出せる、罰則はない。代わりに罰則があるのは帰国後14日以内の転入届のほうで、その転入届がお子さんの就学通知の起点になります。そして在留証明は帰国後には取れません。この4点だけ押さえておけば、帰国前後の手続きで取り返しのつかない抜けは起きません。
海外での出生届については海外での出生届を出し忘れたら、児童手当の扱いは児童手当は海外転出でどうなるもあわせてご覧ください。



