公文 海外 教材と検索する方が知りたいことは、たいてい一つに絞られます。「教室に通わなくていいから、あのプリントだけ送ってもらえないか」。駐在が決まって教室を続けられなくなった、現地に公文の教室がない、あっても国語がない。それなら教材だけ取り寄せて家でやらせよう——という発想は、とても自然です。
先に結論を書きます。公文式の教材(プリント)を単体で購入することは、公式に明確に否定されています。公文公式のよくある質問には「公文式教材(プリント)を購入できますか?」という設問があり、答えは「教材を購入することはできません」です。同じページには「教室で使用している教材は、市販のドリル類とは異なります」とも書かれています。つまり書店で買える「くもんのドリル」を買っても、それは教室の教材の代わりにはならない、と公文自身が言っています。
ではどうすればいいのか。実は海外で公文を続ける正規ルートは公式に3つ示されていて、そのうち日本の教材が届くルートには「渡航前にしか開かない窓」があります。ここを知らずに引っ越すと、あとから申し込むことができません。この記事は公文公式サイトに書かれている記述だけを使って、その構造を整理します(本記事の確認日は2026年9月1日です。条件は改定されますので、申し込み前に必ず公式でご確認ください)。
「教材だけ買う」ができない、という前提

公文公式の「よくあるご質問」には、教材を売らない理由まで書かれています。要旨はこうです。教材とともに公文式学習では指導者による指導があり、この両輪が揃ってこそ公文式と呼べるものになる——。プリントは、学力診断テストで開始位置を決め、指導者が採点し、進み方を見て次を渡す、という運用とセットで設計されている。だから単体では売らない、という立て付けです。
ここで多くの方が次に考えるのが「じゃあ書店の『くもんのドリル』でいいのでは」です。これも公式が先回りして否定しています。「教室で使用している教材は、市販のドリル類とは異なります」。補足すると、市販ドリルを出しているのはくもん出版という別の会社で、教室を運営する公文教育研究会とは別法人です。公文公式のメディア記事でも、くもんのドリルは教室教材と同じスモールステップで作られているが、教室には先生がいて子どもの様子を見ながら進められる、一般のご家庭ではそうはいかない、と説明されています。
整理すると、「公文の教材」という言葉が指すものは二つあり、性質がまったく違います。
- 教室・通信で使うプリント教材/非売品。学力診断テストで開始位置が決まり、指導者が採点する運用とセット。単体購入は公式に不可。
- くもんのドリル(市販)/書店やオンラインで誰でも買える書籍。学年・単元別。採点も進度判定もない。公式に「教室の教材とは異なる」と明記。
この区別を先に押さえておくと、以降の判断がぶれません。
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海外で公文を続ける、公式の3ルート
公文の会員向け公式サイト(iKUMON)の「転出・転入」のページには、海外へ引っ越す場合に学習を続ける方法として次の3つが挙げられています。
- 現地人指導者による、その国の子どもたちを対象にした数学や母国語の教室で学習する
- 現地在住の日本人指導者が指導する教室で学習する(地域により異なります)
- 日本の通信教室(通われていた教室との通信、または本部通信教室)で学習する
日本語のプリントが海外の自宅に届くのは、実質的に3番目だけです。そして手続きの入口は「教室の指導者に相談」と書かれています。ここが重要で、Webで完結する申し込み窓口ではないということです。
1番・2番についても、期待とのズレが起きやすい点があります。公式の説明は「海外では、現地人指導者または現地在住の日本人指導者による、その国の子ども達を対象にした数学や母国語の学習指導が行われています」。つまり海外教室の標準は「現地の言語+算数」であって、日本語の国語は標準装備ではありません。実際に各国の公式サイトを開くと差がはっきり出ます。
- 北米(Kumon North America)/掲げているのは Math と Reading の2プログラム。国語の記載は見当たりません。
- シンガポール/Mathematics・English・Chinese。国語の記載は見当たりません。
- オーストラリア/Mathematics・English に加えて Japanese と Kokugo を公式に掲げています。しかも両者は別物で、Kokugo は「日本語が母語の子ども向けで、母語話者並みの流暢さを前提とする」、Kumon Japanese を終えた生徒が Kokugo に進む、と説明されています。
「海外にもKUMONがあるから日本語は大丈夫」は、残念ながら成り立ちません。国語があるかどうかは国・教室によって違い、公式サイトに書いていない国では教室ごとの問い合わせになります。海外の教室そのものの探し方は海外の公文教室に通う前に|「国語がある教室」は限られますで詳しく書いています。
渡航前にしか開かない窓——ここが最大の落とし穴

日本の教材が届く3番目のルート、公式名称「公文式通信学習(海外生)」には、申し込める人の条件がはっきり決まっています。公式のよくある質問から引きます。
- 現在公文式教室に正式に入会している方(国内・海外の教室、通信を問わない。体験学習などは除く)
- 教室退会後3か月以内の方
そして受けられない方として、海外からの一時帰国中の方、体験学習のみ参加の方、韓国・台湾・バーレーンにお住まいの方が挙げられています。さらに規約には決定的な一文があります。「海外通信生の新入会は受け付けていないため、公文式海外通信を退会されると再入会はできません」。
この3つを重ねると、構造が見えます。公文の海外通信は「今、教室に在籍している人(または辞めて3か月以内の人)」だけが入れる扉で、しかも一度出ると二度と戻れない。「引っ越してから、落ち着いたら考えよう」が、この選択肢に関しては最も損をする判断になります。渡航が決まった時点で、続けるのか一度切るのかを決めておく必要があります。
なお教室から通信へ移る場合、公式には「教室退会後3か月以内に限り、原則テストの実施・返送は不要で、教室の続きからの学習が可能」とあります。4か月目以降は学力診断テストからやり直しです。休会という手もありますが、教室の休会は最長3か月で、4か月目までに復会しないと自動的に退会になります。いずれの制度も「3か月」で区切られている、と覚えておくと迷いません。
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通信で届くとして、実際いくら・どう届くのか
公文式通信学習の海外生向け規約(2026年4月改定版・発効日2026年4月1日)に、条件が数字で書かれています。会費は月額・税込・教材費込みで、入会金はありません。
- 1教科/幼児・小学生 8,580円、中学生 9,680円、高校生以上 10,780円
- 2教科/17,160円・19,360円・21,560円 3教科/25,740円・29,040円・32,340円
- 送料は学習者負担(国内生は会社負担ですが、海外生は生徒負担です)。発送は日本郵便の国際スピード郵便(EMS)。EMSの取り扱いがない国・地域は航空便など他の手段になります。
- 支払いはクレジットカードのみ(VISAまたはMastercard)で、請求は日本円
- 英語を始める場合は E-Pencil 6,600円(税込)が必須。ただし海外からは購入できず、渡航前に国内で購入するか、国内在住者による代理購入が必要です。
運用面で見落とされやすいのが、教材が自動では届かない点です。公式には「学習者から返送された教材の受領後、原則10営業日以内に発送」「ご返送がない場合、新たな教材は原則として提供されませんが、その月も会費が必要です」とあります。やりとりは月1回の郵送で、オンライン学習やPDFでのやりとりはできません。返送が滞ると教材が止まり、それでも会費は発生する。ここは海外の郵便事情と直結するので、実務上いちばん効いてきます。
市販の「くもんのドリル」を海外から買えるか
結論から言うと、公式ショップは海外へ送ってくれません。くもん出版の公式オンラインショップ(KUMON SHOP)のご利用ガイドには、「海外への配送は承っておりません。お客さまにて転送サービス等をご利用ください」と明記されています。
ここに紛らわしい罠があります。KUMON SHOP には「海外向けドリル」というカテゴリがあるのですが、中身は英語版のワークブック類で、「海外へ発送するドリル」という意味ではありません。日本国内向けの販売カテゴリです。検索でこのカテゴリに行き着いて「海外対応がある」と読んでしまうと、そのまま注文して止まります。
海外在住のまま正規に買えるのは、英語版・現地語版のワークブックです。くもん出版は英語版ワークブックを約200タイトル提供し、12の言語で翻訳出版していると公表しています。ただしこれらは日本語の国語ドリルではありません。日本語の教材が欲しい場合は、日本の家族に買って送ってもらうか、転送サービスを使うかが現実解になります。
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「教材が手に入るか」で4社を並べる
金額は改定されますので、ここでは「海外にいることが、教材の入手にどう効くか」という構造で並べます。
| 比較軸 | 公文(通信・海外生) | 進研ゼミ | Z会 | スマイルゼミ |
|---|---|---|---|---|
| 教材だけの購入 | 公式に不可(非売品) | 不可(受講とセット) | 不可(受講とセット) | 不可(専用タブレット前提) |
| 海外からの新規入会 | 不可。在籍中か退会後3か月以内のみ | 可(販売会社と契約) | 可(学年別の案内あり) | 公式に記載が見当たらない |
| 教材の届き方 | EMS等で月1回。返送しないと次が来ない | 定期配送。国内より5日遅い設定 | 紙は航空便/デジタル配信のコースもある | 専用タブレットを国内で受け取る前提の記述 |
| 送料の扱い | 学習者負担 | 受講費に含まれる | コースにより海外料金として上乗せ | 公式に記載が見当たらない |
| 支払い手段 | クレジットカードのみ(VISA/Master)・日本円 | カードほか。振込は日本国内から | カード/口座振替。毎月払い不可 | 公式に記載が見当たらない |
公文だけが持つ特徴は、はっきりしています。入口が渡航前に閉じることと、返送しないと次が来ない往復式であること。逆に言えば、この2つを許容できるなら、指導者が採点して進度を決めるという公文の中核は海外でもそのまま維持できます。他社との比較は海外で使える日本の通信教育4社比較にまとめています。
プリントが届いても、埋まらないものが一つ残る
教材の入手経路を整えた家庭が、半年後に相談してくださる内容は、たいてい教材の話ではありません。プリントは届いていて丸もついているのに、子どもが日本語を話さなくなっていく、という話のほうです。
言語学者のカミンズが整理したように、日常会話のことば(BICS)は2〜3年で育つ一方、教科の学習に耐えることば(CALP)は5〜7年かかると言われます。海外では現地校の言語がCALPを伸ばす側に回り、日本語は家庭内の会話だけになりやすい。「使う場面」が家庭の中にしか無い状態が続くと、9歳前後で語彙が伸び止まる、いわゆる9歳の壁にぶつかります。小学校6年間の教育漢字1,026字を一人で積み上げても、それで誰かと考えを交わす場が無ければ、知識のまま止まってしまう。
公文の強みは、一人でも進められる自学自習の設計にあります。だからこそ、足りなくなるのは「相手」のほうです。私たちともだちじゃぱんが担当したいのは、まさにその部分です。プリントで読み書きを積み、こちらで使う相手を得る。併用でいい、と考えています。
用意しているのは三つです。日本の同世代と毎日話せる場。日本の現役水準の先生。そして8人の少人数クラスで、聞き役に回らず必ず発言が回ってくる設計。2026年12月開校のパイロットとして準備を進めています。学費は通い放題の月額定額制で、詳しい条件は資料でご案内しています。
よくある質問
日本の教室に通ったまま、教材だけ海外に送ってもらえますか?
公式に示されている選択肢のひとつが「通われていた教室との通信」です。ただし条件・送料・可否は公式サイトに記載がなく、iKUMONも「詳しくは、教室の指導者にご相談ください」とだけ書いています。つまり教室ごとの裁量です。渡航が決まったら、まず今の教室の先生に相談するのが正しい順序になります。
いったん辞めて、現地で落ち着いてから再開できますか?
海外通信については難しいです。規約に「海外通信生の新入会は受け付けていないため、公文式海外通信を退会されると再入会はできません」とあります。教室からの移行も「退会後3か月以内」が条件です。再開の可能性を少しでも残すなら、渡航前に手続きの目処を立てておくことをおすすめします。
「くもんのドリル」を日本の家族に送ってもらうのはどうですか?
市販品ですので、それ自体は問題ありません。ただし公文公式が「教室で使用している教材は、市販のドリル類とは異なります」と明記しているとおり、教室教材の代替にはなりません。採点者も進度判定もない前提で、家庭学習の教材として選ぶという整理が正確です。
英語もあわせて始めたいのですが。
海外では国語・算数より条件が厳しくなります。E-Pencil(6,600円・税込)が必須ですが海外からは購入できず、渡航前の購入か国内在住者の代理購入が必要です。またiKUMONには「英語学習は、音声ペンの仕様・保守の関係で学習できない地域があります」という記載もあります。対象地域の一覧は公開されていないため、教室または本部への確認が必要です。
補習校と公文、どちらかに絞るべきですか?
絞る必要はありません。補習授業校は外務大臣が指定した246校、日本人学校は文部科学大臣が認定した90校で、通える場所にあるとは限らないのが実情です。通えるなら通いつつ、足りない部分を通信で補う家庭も多いです。大事なのは、読み書きを積む手段と、日本語を使う相手を、それぞれ確保しておくことです。



