アメリカ駐在で中学生のお子さんがいるご家庭から、いちばん多く出てくる質問がこれです。「アメリカの日本人学校に高校はありますか」。
答えはありません。アメリカにある全日制の日本人学校はシカゴ・ニューヨーク・ニュージャージー・グアムの4校で、いずれも小学部と中学部までです。中学3年が終わった時点で、全員が進路を選び直すことになります。この記事では、その4校の課程、高校段階で日本の教育課程を続けられる唯一の学校、そして中3の家庭が実際に選んでいる4つの道を、公表資料でたどります。
アメリカの日本人学校は4校――全部が小学部・中学部まで
文部科学省が公表している「認定した在外教育施設の一覧」に載っている、アメリカの日本人学校は次の4校です。
| 学校 | 所在地 | 課程 | 高等部 |
|---|---|---|---|
| シカゴ双葉会日本語学校 全日校 | イリノイ州 | 小学部・中学部(小中一貫) | なし |
| ニューヨーク日本人学校 | コネチカット州グリニッジ | 小学部・中学部 | なし |
| ニュージャージー日本人学校 | ニュージャージー州オークランド | 小1〜中3の9年一貫 | なし |
| グアム国際日本人学校 | グアム(マンギラオ) | 幼稚部・小学部・中学部 | なし |
これはアメリカだけの事情ではありません。世界に90校ある日本人学校のうち、高等部を持っているのは上海日本人学校だけです。上海の高等部は2011年に日本人学校で初めて開設されたもので、いまも唯一の例です。日本人学校というしくみは、そもそも義務教育段階(小学部・中学部)を対象に設計されているため、高校は制度の外にあります。
アメリカの4校はいずれも小規模です。ニュージャージー日本人学校は2025年4月時点で初等部19名・中等部20名の計39名、グアム国際日本人学校は全日制の総計が約60名(幼稚部22名・小学部22名・中学部5名/補習授業校51名は別)。シカゴ双葉会日本語学校全日校は1978年9月開校で、「小中一貫校・義務教育学校等」として運営されています。もともと中学部の在籍が二桁という学校が多く、高等部を置ける規模ではないというのが実情です。

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高校で日本の課程を続けられるのは「慶應義塾ニューヨーク学院」だけ
日本人学校とは別に、私立在外教育施設という枠があります。日本の学校法人が海外に設けた学校で、文部科学大臣から日本の小・中・高等学校と同等の課程を有すると認定されているものです。文科省の一覧に載っているのは世界で6校です。
| 学校 | 所在国 | 高校段階 |
|---|---|---|
| 立教英国学院 | 英国 | あり |
| 帝京ロンドン学園 | 英国 | あり |
| スイス公文学園 | スイス | あり |
| 早稲田渋谷シンガポール校 | シンガポール | あり |
| 西大和学園カリフォルニア校 | 米国 | なし(幼稚園・小学部・中学部) |
| 慶應義塾ニューヨーク学院 | 米国 | あり(Grades 9〜12) |
ここが誤解されやすいところです。米国にある私立在外教育施設は2校ありますが、西大和学園カリフォルニア校は幼稚園から中学3年までで、高校はありません(平日校は約130人、併設の補習校は約750人、1993年設立、ロミタ/パロスバーデス/アーバインの3校舎)。
つまりアメリカで高校段階の日本の教育課程を選べるのは、慶應義塾ニューヨーク学院の1校だけです。
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慶應義塾ニューヨーク学院――298名、慶應義塾大学への推薦
同学院が公表している概要は次のとおりです。
| 項目 | 公表値 |
|---|---|
| 設立 | 1990年 |
| 所在地 | 3 College Road, Purchase, NY 10577(ニューヨーク州ウエストチェスター郡) |
| 学年 | Grades 9〜12(9・10年=Junior/11・12年=Senior) |
| 在籍 | 298名 |
| 教員 | 54名(生徒対教員比 7:1) |
| 卒業生 | 3,281名 |
| 大学進学率 | 100% |
| 出身校の所在国 | 13か国 |
| 寮 | あり(ボーディング/通学の両方) |
重要なのはGrade 9から始まることです。アメリカの学年でいうGrade 9は日本の中学3年に相当します。日本の中学2年を終えた段階で受験して入る道と、中学3年を終えて10年生(高校1年相当)で入る道の両方があるということです。中3のぎりぎりまで待つ前提で動くと、選択肢を1つ落とすことになります。
卒業後は学院長の推薦により慶應義塾大学の学部へ進む道が用意されています(推薦を辞退して米国内の大学へ進む卒業生もいます)。授業は英語と日本語の両方で行われ、国語は日本語、その他の多くの科目は英語という構成です。
学費(2026-2027年度の公表値)
| 費目 | 寮生 | 通学生 |
|---|---|---|
| Admissions Fee(入学金) | $4,200 | $4,200 |
| Tuition(授業料) | $34,400 | $34,400 |
| Room and Board(寮費・食費) | $19,100 | ― |
| Commuter Fee(通学生費用) | ― | $4,050 |
| Facilities Fee(施設費) | $3,000 | $3,000 |
| Deposit on Materials(教材預り金) | $3,000 | $3,000 |
| Entrance Examination Fee(受験料) | $500 | $500 |
| 初年度の合計(目安) | $64,200 | $49,150 |
同学院にはBursary Program(就学支援)/奨学金の制度も公表されています。寮があるということは、保護者が帰任したあとも子どもが残れるということでもあります。これはシンガポールの早稲田渋谷シンガポール校や、英国の立教英国学院と同じ構造で、駐在の終わりと子どもの進路を切り離せる数少ない選択肢です。

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実際に中3の家庭が選んでいる4つの道
ここからは推測ではなく、学校が公表している実績で見ます。ニュージャージー日本人学校が公開している「主な進学先」には、次の学校名が並んでいます。
| 道 | 公表されている進学先の例 |
|---|---|
| ① 現地のハイスクールへ | 米国内の現地校 |
| ② アメリカで日本の課程を続ける | 慶應義塾ニューヨーク学院 高等部 |
| ③ 日本の私立高校へ(帰国生入試など) | 早稲田大学本庄高等学院/国際基督教大学高等学校/青山学院高等部/法政大学国際高等学校/同志社国際高等学校/関西学院高等部 ほか |
| ④ 日本の国公立高校へ | 東京学芸大学附属高等学校/千葉県立船橋高等学校/東京都立三田高等学校/埼玉県立浦和西高等学校 |
この一覧が示しているのは、アメリカ駐在の中3は「現地に残る」か「日本へ戻る」かの二択ではないということです。慶應義塾ニューヨーク学院という、アメリカに居ながら日本の高校課程に進む道が実際に使われています。
一方で、日本の高校を受ける場合は帰国生入試の要件が関わります。多くの学校が「海外在留期間」「帰国後の経過期間」を条件にしているため、帰任の時期が受験資格そのものを左右します。中3の1年間をどこで過ごすかは、学力の問題である前に日程の問題です。

高校で切れるのは「学校」ではなく「日本語で考える時間」
アメリカの日本人学校に高等部がないという事実は、進路の問題としてはっきりしています。ただ、もう1つ静かに起きることがあります。中学3年までは日本語で授業を受けていた子が、高校からは1日の大半を英語で過ごすようになるということです。
現地のハイスクールに進むと、日本語に触れるのは家庭のなかだけになります。会話は続いても、「考えを日本語で組み立てて、同世代に向かって説明する」機会はほとんどなくなります。日本の大学の帰国生入試や、将来日本で働く可能性を考えたときに効いてくるのは、この部分です。
ともだちじゃぱんは、日本の現役水準の教員が8人の少人数クラスを担任し、日本にいる同世代の子どもたちと同じクラスで学ぶオンラインの日本語スクールです。日本時間の土曜午前は、アメリカ東部の金曜夕方、西部の金曜午後にあたります。現地の高校に通いながら、日本語で考えて話す時間だけを残すという組み方ができます。
よくある質問(アメリカ 日本人学校 高校)
アメリカの日本人学校に高校(高等部)はありますか?
ありません。アメリカにある全日制の日本人学校は、シカゴ双葉会日本語学校全日校・ニューヨーク日本人学校・ニュージャージー日本人学校・グアム国際日本人学校の4校で、いずれも小学部と中学部までです。世界に90校ある日本人学校のうち高等部を持つのは上海日本人学校の1校だけです。
アメリカで日本の高校の課程に進む方法はありますか?
あります。慶應義塾ニューヨーク学院(ニューヨーク州パーチェス)が、文部科学省認定の私立在外教育施設として高校段階(Grades 9〜12)の課程を持っています。在籍298名、教員54名、生徒対教員比7:1、1990年設立。卒業後は学院長の推薦により慶應義塾大学へ進む道があります。
西大和学園カリフォルニア校には高校はありますか?
ありません。同校は文部科学省認定の私立在外教育施設ですが、課程は幼稚園・小学部・中学部(中学3年まで)です。平日校は約130人、併設の補習校は約750人。1993年設立で、ロミタ・パロスバーデス・アーバインに校舎があります。「米国に私立在外教育施設が2校ある=どちらも高校がある」という誤解が多いところです。
慶應義塾ニューヨーク学院の学費はいくらですか?
同学院が公表する2026-2027年度の費用は、授業料 $34,400、寮費・食費 $19,100、入学金 $4,200、施設費 $3,000、教材預り金 $3,000、受験料 $500。公表費目を足すと寮生の初年度は約 $64,200、通学生(Commuter Fee $4,050)は約 $49,150 です。制服・旅行費・部活動費などは別途かかると明記されています。就学支援・奨学金の制度もあります。
中学3年が終わったあと、実際にどこへ進んでいますか?
ニュージャージー日本人学校が公表している「主な進学先」には、慶應義塾ニューヨーク学院高等部、日本の私立(早稲田大学本庄高等学院・国際基督教大学高等学校・青山学院高等部・法政大学国際高等学校・同志社国際高等学校・関西学院高等部など)、日本の国公立(東京学芸大学附属・千葉県立船橋・東京都立三田・埼玉県立浦和西など)、そして米国内の現地校が並んでいます。4つの道が実際に使われています。
いつから動けばいいですか?
中学2年の段階です。慶應義塾ニューヨーク学院はGrade 9(日本の中学3年に相当)から受け入れるため、中2を終えた段階での受験が選択肢に入ります。また日本の高校の帰国生入試は「海外在留期間」「帰国後の経過期間」が要件になることが多く、帰任の時期が受験資格そのものを左右します。中3になってから調べ始めると、選べる道が減ります。
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