帰国子女 漢字ドリルと検索してこのページを開いた方は、たいてい次のどれかの状況にいます。日本にいる同学年の子と比べて漢字が明らかに遅れていると気づいて、何を買えば追いつけるのか分からない。以前買ったドリルが最初の数ページで止まったまま本棚に立っている。あるいは一時帰国で書店に寄る予定があり、そこで買うものを先に決めておきたい。
先に結論を書きます。海外で育つ子の漢字ドリル選びがうまくいかない原因は、教材の質ではなく「実学年で選んだこと」にあることがほとんどです。海外の子は、読める漢字の学年・書ける漢字の学年・意味や使い方が分かる漢字の学年が、そろっていません。三つがバラバラなのに、実学年のドリルを1冊だけ買うと、最初のページで一番弱い層に当たって折れます。折れたのは子どもの根気ではなく、選び方です。
そこでこの記事では、原因の話ではなく「どのドリルを、どう選んで、どう回すか」という実務だけを書きます。買う前の切り分け、市販ドリルの4タイプと向き不向き、学年をまたいで戻るときの設計、1日の量の決め方までです。

学年で選んだドリルが最初のページで折れる理由
海外の子の漢字が学年から遅れる背景には、日本の小学校で国語に使われている授業時数を海外では確保しきれないという構造的な事情があります。原因の話は別の記事で詳しく扱っているので、ここでは帰国子女 漢字|読めない・書けないの正体に譲ります。この記事で押さえておきたいのは、その結果として何が起きるか、の一点だけです。
起きるのは「ムラ」です。たとえば小4の子が、読みは3年生の漢字までほぼ読める、書きは2年生の後半があやしい、熟語の意味は1年分以上あいまい、という状態になる。これは珍しいことではなく、むしろ標準的です。ここで「小4だから」と4年生の漢字ドリルを買うと、1ページ目からいきなり書き取りで詰まり、その日のうちに「漢字きらい」が上書きされます。逆に言えば、レベルを下げるのではなく三つの層のどこが弱いのかを先に確かめてから買うだけで、同じ子が続けられます。
「帰国子女」という言葉の定義・対象になる期間・何年からあてはまるのかは、学校や制度によって違います。そこだけ先に整理したい方は帰国子女とは?定義・期間・何年からと帰国後に困ることをご覧ください。
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買う前に5分でやる「読み・書き・意味」の切り分け
書店に行く前でも、ネットで注文する前でも構いません。紙とえんぴつだけで、次の3つを別々に見ます。教科書がなければ、学年別漢字配当表を掲載している無料サイトの一覧表を印刷しても足ります。
- 読みの層:ひとつ下の学年の漢字を20字ほど並べて、声に出して読ませます。訓読みだけでなく音読みも聞きます。ここで8割ほど読めていれば、読みは学年相当に近いと考えていいです。
- 書きの層:同じ20字を、こんどは読み方を言って書かせます。読みが8割でも書きが3割ということはよくあります。むしろそれが普通です。
- 意味・使い方の層:書けた漢字を使って、短い文を1つ作らせます。「委」が書けても「委員」「委ねる」が出てこない、日本の学校生活を前提にした語(給食、放課後、係、日直など)が出てこない、というつまずきがここで見えます。
この3つの結果が、そのまま「買うべきドリルのタイプ」に対応します。読みが弱いなら書き取り中心のドリルを買っても効きません。書きだけが弱い子を読み優先の教材に戻すのは遠回りです。意味と使い方が弱い子に学年別の書き取りを渡しても、字は書けるが文が書けない状態が続きます。
順番についてもうひとつ。漢字指導では、読みと書きを分けて読みを先に固めるほうが結果的に速いという考え方が広く共有されています。読める漢字の数は書ける漢字の数より圧倒的に多く、そして「読めない漢字」より「読める漢字」のほうが書けるようになりやすい、というのが現場からの報告です(出典:みんなの教育技術/土居正博氏の漢字指導メソッド)。海外で書く量が少ない子ほど、この順番は効きます。
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漢字ドリルは4タイプある。中身がまったく違う
「漢字ドリル」と一括りにされていますが、書店に並んでいるものは設計思想が4種類に分かれます。ここを知らずに表紙と学年だけで選ぶと、切り分けの結果と合わないものを買ってしまいます。
| タイプ | 中身の特徴 | 向いている状態 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 書き取り型 (学年別・スモールステップ) | 配当漢字を1字ずつ、書き順と練習マスで反復。くもんの小学ドリルや学研の毎日のドリルなど、1日1枚で終わる分量に切ってあるものが多い。 | 読みは追いついていて、書く量だけが足りない子。学習習慣そのものを作りたい家庭。 | 読みが不安定なまま入ると1ページの負荷が急に重くなる。字は書けても文の中で使えないままになりやすい。 |
| 読み優先型 (音読・口唱で入る) | 先に声に出して読む、唱えながら書く。小学館の「陰山メソッド 徹底反復 漢字プリント」は全漢字音読プリントから入る構成で、偕成社の下村式は口唱法で書き順を唱えながら書く。 | 読める字が明らかに少ない子。書くことに強い抵抗がある子。日本語を耳から入れてきた子。 | 読めるようになった達成感で止まりやすい。書きの練習に移る時期を親が決めておかないと読みだけで終わる。 |
| 熟語・語彙型 | 1字ではなく熟語・送りがな・同音異義語で問う。学研の「もっと漢字力」のようなテスト形式や、旺文社の「小学漢字1026字の正しい書き方」のように熟語と成り立ちで示す一覧型もここに近い。 | 単体の書き取りはできるのに、作文や読解で使えない子。帰国後の国語の授業に備えたい子。 | 語彙が薄いと問題文の意味が分からず手が止まる。意味の層が弱いと出た子には、いきなりは重い。 |
| 総復習型 (複数学年を1冊で) | 6年分を1冊で通す構成。学年をまたいだ抜けを一気に見つけられる。教科書準拠ドリルも近い性格で、教科書会社ごとに漢字の出る順が違う。 | どこが抜けているのか自体が分からない子。帰国が決まって残り時間が短い家庭。 | 1冊が厚く終わりが見えないので心が折れやすい。教科書準拠は編入先の採択教科書が分からないと選べない。 |
教科書準拠を選ぶときの注意をひとつ。漢字が教科書に出てくる順番は教科書会社によって違うため、準拠ドリルは光村図書版・東京書籍版などに分かれて売られています。帰国後の編入先が決まっていないうちは、準拠ではない学年別ドリルのほうが無難です。
もうひとつ、日本語を母語としない子ども向けに作られた教材という選択肢もあります。AJALT(公益社団法人 国際日本語普及協会)の「かんじ だいすき」シリーズは全6巻で小学校の配当漢字1,026字を扱い、漢字を意味のまとまりで分類し、イラストと文脈から入る構成です。4巻から6巻には英語訳・ポルトガル語訳の別冊があります(出典:AJALT かんじだいすきシリーズ)。日本語より現地語のほうが強くなっている子には、日本の子向けドリルより入りやすいことがあります。
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学年をまたいで戻ることを、恥ずかしくない設計にする
小学校の6年間で学ぶ漢字は1,026字で、学年ごとに配当が決まっています。1年80字、2年160字、3年200字、4年202字、5年193字、6年191字です(出典:文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編)。数字を見ると分かりますが、3年生から急に増えます。海外で暮らす家庭がつまずきを自覚するのがちょうど小3から小4のあたりに集中するのは、偶然ではありません。
また4年生の配当には、平成29年の改訂で都道府県名に使う漢字が加わりました。日本に住んでいない子にとっては、字そのものより「阜」「潟」「媛」が地名として頭に入っていないことのほうが壁になります。これは漢字ではなく背景知識の問題なので、日本地図を横に置くだけで負荷が下がります。
戻る学年を決めるときのコツは、子どもに「戻る」と言わないことです。実務的には次の3つで済みます。
- 学年表記が小さい、あるいは表紙の学年が目立たないドリルを選ぶ。苦手克服をうたったシリーズには、前の学年の間違えやすい漢字を織り込んだ設計のものがあり(くもんの「にがてたいじドリル」など)、これなら学年を下げずに抜けを拾えます。
- 1冊を通しでやらせず、切り分けで弱いと出た単元だけを抜き出して渡す。ドリルは「全部やる本」ではなく「必要な部分を取り出す棚」だと考えます。
- 戻る場合は、期間を先に区切って本人に伝える。「2週間だけ2年生の漢字を確認して、そのあと今の学年に上がる」と言えば、戻ることは後退ではなく手順になります。

1日の量は「10分で終わる量」に固定する
海外の子の1日は、現地校の宿題と現地語の読書で先に埋まっています。そこに30分の漢字を足す計画は、たいてい2週目に崩れます。市販ドリルの多くが1日1枚・1回10分前後を単位にしているのは、この現実に合わせた設計です。
量の決め方は、字数ではなく時間で決めます。10分たったら途中でもやめる。これを守ると、ドリルは「終わらない宿題」ではなく「毎日終わる予定」に変わります。1年間続けば、10分でも積み上がる量は相当なものになります。逆に、週末に90分まとめてやる形は、漢字にかぎってはほとんど残りません。
覚えた漢字は、使う相手がいないと消える
ドリルを続けている家庭からよく聞くのが、「テストではできるのに、しばらくすると忘れている」という声です。これは記憶力の問題というより、覚えた漢字が使われる場面が生活の中にないからです。日本にいる子は、覚えた漢字を翌週には黒板で見て、友達とのやりとりで書きます。海外にはその出口がありません。入口だけあって出口がない状態です。
ですから、ドリルはやめなくていいです。むしろ書く力は紙の反復でしか積めない部分があります。足りないのは、覚えた字を使う相手のほうです。日本の同世代と話す時間、書いたものを読んでもらう相手、「その漢字知ってる」と言ってもらえる場面。ここが1つあるだけで、同じドリルの定着率が変わります。
ともだちじゃぱんは、2026年12月開校のオンライン日本語スクールです。日本の現役水準の先生が担任につき、8人の少人数クラスで、日本の同世代の子と毎日話す時間をつくります。漢字を教える教材の代わりではなく、家で積んだ漢字が使われる場所として設計しています。お使いのドリルはそのまま続けていただいて構いません。学費は通い放題の月額定額制で、詳細は開校情報の登録でご案内しています。
よくある質問
教科書準拠と、ふつうの学年別ドリルはどちらがいいですか
編入先が決まっていない段階では、学年別ドリルのほうが無難です。漢字が出てくる順番は教科書会社によって異なり、準拠ドリルは光村図書版・東京書籍版などに分かれています。帰国先の学校と採択教科書が分かってから準拠版に切り替える、という二段構えでも遅くありません。日本人学校や補習授業校に通っている場合は、その学校が使っている教科書に合わせるのが自然です。
日本語を母語としない子ども向けの教材と、日本の子向けのドリルはどちらを選ぶべきですか
家庭内でも現地語のほうが優勢になっている、日本語の会話はできるが読み書きの経験が少ない、という子には、意味とイラストから入る非母語話者向け教材のほうが入りやすいことがあります。一方、日本語の会話も読解もある程度できていて書く量だけが足りない子には、日本の子向けの学年別ドリルのほうが効率的です。切り分けで「意味・使い方」の層が大きく弱かったかどうかが、判断の分かれ目になります。
アプリやタブレット教材で代用できますか
読みの層はアプリと相性がよく、毎日の接触量を稼ぐ手段としては優秀です。学習管理アプリと連動した紙のドリルもあり、点数を入力するとキャラクターが育つといった仕組みで継続を支えるものもあります。ただし書きの層、とくに書き順と字形については、手で書く経験を置き換えるのは難しいというのが現時点での一般的な見方です。読みはアプリ、書きは紙、という分担が現実的です。
一時帰国でまとめ買いするなら、何冊くらいがいいですか
今使う1冊と、終わったときに渡す1冊の、合計2冊までをおすすめします。3冊以上買うと、どれも中途半端に残る確率が上がります。加えて、全学年を1冊に収めた総復習型か一覧型を1冊、辞書のように棚に置いておくと便利です。日本の書店では実物を開いてマスの大きさと1ページの分量を確認できるので、「これなら10分で終わりそうか」を目で見て選べるのが一時帰国の最大の利点です。
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