一時帰国の予定を立てながら、「一時帰国 健康診断」と検索する。現地の病院では日本語で説明を聞けない、胃カメラは日本で受けたい、子どもの成長も一度きちんと診てもらいたい。駐在家庭なら、親と子の健診をまとめて一時帰国に入れたいと考える人は確実にいます。
先に結論を書きます。一時帰国の健康診断は、「誰が受けるか」と「日本の健康保険があるか」で受け方が変わります。会社員本人と配偶者は会社の健康保険組合の制度で安く受けられることが多い一方、子どもは対象外の健康保険組合が少なくありません。保険がなくても人間ドックは受けられますが、申し込みを断る病院もあります。この記事では、2026年10月4日時点の法令・健康保険組合・医療機関・自治体の公開情報をもとに、親と子それぞれの受け方、費用、予約の時期を整理しました。

まず全体像:誰が、どこで、いくらで受けられるか
| 受ける人 | 主な受け方 | 注意すること |
|---|---|---|
| 会社員本人(海外赴任者) | 会社・健康保険組合の海外赴任者向け健診や人間ドック | 一時帰国時の健診は法律上の義務ではなく、会社の制度次第 |
| 配偶者 | 健康保険組合の家族健診・人間ドックの補助 | 補助の額・条件は組合ごとに違う |
| 子ども | 組合の家族健診(対象の場合)/自費の小児科健診/体験入学先の学校医の健診 | 子どもを対象外にしている組合がある。自治体の乳幼児健診は住民票がネック |
| 日本の保険がない人 | 自費の人間ドック・健診 | 保険証・国内の住所・国内の電話番号がないと申し込めない病院がある |
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会社員本人:一時帰国時の健診は「法律の義務」ではない
海外に6か月以上派遣される社員には、派遣の前と帰国後に健康診断を受けさせることが、労働安全衛生規則(第45条の2)で会社に義務づけられています。ただし帰国後の健診について、条文は国内の業務に「一時的に就かせるときを除く」としています。一時帰国のときの健診は、法律が決めたものではなく、会社や健康保険組合の制度として行われているということです。
そのため、受けられる内容は会社によって大きく違います。日本製鉄の健康保険組合は、海外勤務者の人間ドックを4,600円で受けられるとし、申し込みは海外からウェブで、連絡は「原則として電話ではなく、eメール」と案内しています。まずは会社の人事か健康保険組合のページで「海外赴任者」「一時帰国」の健診の案内を探すのが出発点です。
家族の健診:子どもが対象かどうかは組合しだい
配偶者と子どもの健診は、健康保険組合ごとの任意の制度です。公開されている案内を並べると、子どもの扱いがはっきり分かれます。
- 日本製鉄健康保険組合:対象は海外勤務者と「配偶者、20歳以上の扶養家族」=20歳未満の子は対象外
- 味の素健康保険組合:被保険者と帯同の配偶者が対象で、「配偶者以外の帯同家族は除きます」=子は対象外
- ファーストリテイリング健康保険組合:配偶者と40歳以上になる扶養家族(2026年度の条件)
- パナソニック健康保険組合:海外勤務者と帯同家族(配偶者と子ども)が対象。中学生以下は外部の医療機関で受け、窓口でいったん全額を払ってから会社に請求する仕組み
パナソニックの医療機関向けの依頼文を見ると、中学生以下の健診は、診察・身体計測・血液検査(5歳以上)・保健指導(予防接種の指導を含む)といった内容です。子どもも対象になっている組合でも、予約や支払いは家族が自分で動くことが多いので、案内を読み込んでおきましょう。
子どもの健診:自治体の健診・自費の小児科・学校医
会社の制度で子どもが対象外なら、ほかの道を探すことになります。
1歳6か月・3歳の乳幼児健診
日本の1歳6か月健診と3歳児健診は、母子保健法で市町村が行うと決められている健診です。ところが一時帰国では、川崎市のように転入届を出しても住民登録を受け付けない自治体があり、住民票のない子が滞在先の自治体で公費の乳幼児健診を受けられると書いた自治体の案内は、今回の調査では見つかりませんでした(受けられないと明記した案内も見つかっていません)。対象の年齢の子がいる場合は、滞在先の市区町村の保健センターに一度電話で確認してください。
自費の小児科健診
小児科の中には、自費で健診を受け付けているところがあります。恵比寿のクリニックのコラムでは、自費の乳幼児健診の目安を3〜4か月から1歳で3,000〜5,000円程度としています。学齢期の子では、インターナショナルスクールの提出用や海外渡航向けの学童健診を、診断書・一般健診・胸部X線・心電図の基本コースで10,780円と公開しているクリニックもあります(東京・神谷町)。
体験入学をするなら、学校医の健診を受けられることがある
一時帰国中に日本の学校へ通う場合、学校側から健康診断を求められることがあります。多摩市は、一時帰国中に学校に通う子は内科・耳鼻科・眼科・歯科の健康診断を受ける必要があり、学校医で受ければ無料と案内しています(海外の学校の健診結果に日本語の診断書があれば代わりにできます)。杉並区は、転入学の手続きのあとすみやかに学校医の健診を受けるよう求め、結核の多い国に6か月以上滞在していた子には胸部レントゲンの精密検査を求めています。東南アジアの駐在家庭は該当する可能性があるので、体験入学の申し込みのときに確認しておくと慌てません。体験入学の流れは一時帰国の「体験入学」完全ガイド、自治体ごとの受け入れの違いは一時帰国の小学校の受け入れにまとめています。

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日本の保険がない人の人間ドック:断られる病院と受けられる病院
住民票を抜いて日本の公的な保険に入っていない人は、一時帰国中に国民健康保険にも入れません。ただ、人間ドックはもともと保険の効かない自由診療なので、保険がないこと自体より、「申し込みの条件」に引っかかることのほうが問題になります。
たとえば東京大学医学部附属病院の予防医学センターは、①日本の医療保険証がない、②日本国内の郵送先住所がない、③国内の連絡先がない、のどれか1つでも当てはまると申し込みを受けられないとしています。結果を一時帰国中のホテルや海外の住所に郵送することもできません。
一方で、海外在住者を受け入れると明記している医療機関もあります。
- KARADA内科クリニック(渋谷・五反田・中野・福岡天神):人間ドックの標準コース19,800円から(胃・大腸がん検査を含むコースは71,500円、税込)。国内の住所・電話番号の登録は不要で、結果は2〜3週間以内にLINEで届く
- 夙川内視鏡内科まえだクリニック(兵庫県西宮市):保険証がない場合はパスポートなどの身分証明書で受診でき、胃と大腸の内視鏡と血液検査で85,600円。希望日の2週間前までに予約
- 日本赤十字社医療センター(東京・広尾):英文の診断書は11,000円で約10日(海外在住・保険証なしで受けられるかは案内に書かれていません)
料金はいずれも各医療機関の公開情報で、変わることがあります。「日本の保険がない海外在住者です。結果は海外で受け取れますか」と、申し込みの前に必ず聞いてください。子どもが病気やけがをしたときの医療費の扱いは一時帰国中の子どもの医療費で整理しています。
予約は「滞在の早い日程」で「2〜3週間前」までに
医療機関の案内では、予約の締め切りはおおむね2〜3週間前です。日本赤十字社医療センターは人間ドックを申込日から14日以降とし、受診月の約2か月前から予約を受け付けています。ファーストリテイリング健康保険組合は予約サイトなら3週間以上先、パナソニックの松下記念病院は希望日の14日前までとしたうえで、帰国者が多い時期は14日以上前でも難しいことがあると書いています。
もう1つ大事なのが受ける日です。結果が出るまで2〜3週間かかる施設があるので、滞在の終わりに受けると、要再検査になっても日本にいるうちに対応できません。着いてから1週間以内に受けるように組むと、再検査や歯科の治療を滞在中に入れる余地が残ります。予防接種や学校の手続きと日程がぶつかりやすいので、全体の段取りは一時帰国で子どもにやること|15項目チェックリストと一時帰国の予防接種もあわせて見てください。
出発前に確認する4つのこと
- 会社・健康保険組合の一時帰国時の健診の案内(本人・配偶者・子どもがそれぞれ対象か、補助はいくらか)
- 日本の保険がない場合、受けたい医療機関が海外在住者を受け付けるか、結果をどう受け取れるか
- 子どもの健診を自費の小児科で受けるか、体験入学先の学校医で受けるか(結核の検査を求められるか)
- 母子健康手帳、海外での健診・予防接種の記録、英文の診断書が必要かどうか
一時帰国のあとに残るもの
健診や手続きに追われる一時帰国でも、子どもにとって大きいのは、日本の同い年の子と日本語で過ごす時間です。そして海外に戻ると、その相手は次の一時帰国までいなくなります。
ともだちじゃぱんは、その「続き」をつくるためのオンラインスクールです。日本の現役水準の教員が担任につく8人の少人数クラスで、同じように海外で育つ日本の同世代と毎日話せます。年に一度の数週間ではなく、ふだんから日本語で話す相手をつくることが目的です。
よくある質問
一時帰国のときの健康診断は、会社が受けさせる義務がありますか
法律上の義務ではありません。労働安全衛生規則は、6か月以上海外に派遣する社員の派遣前と帰国後の健診を会社に義務づけていますが、帰国後の健診は国内の業務に「一時的に就かせるときを除く」としています。一時帰国時の健診は、会社や健康保険組合の制度として行われています。
子どもも会社の健康保険組合の健診を受けられますか
組合によります。日本製鉄健康保険組合は20歳以上の扶養家族まで、味の素健康保険組合は配偶者までを対象としていて、子どもは対象外です。パナソニック健康保険組合のように帯同の子どもも対象にしている組合もあります。会社の人事か健康保険組合に確認してください。
日本の保険がなくても人間ドックを受けられますか
受けられる医療機関はあります。人間ドックはもともと自由診療です。ただし東京大学医学部附属病院のように、保険証・国内の住所・国内の電話番号のどれかがないと申し込めない施設もあります。国内の住所や電話がなくても受け付け、結果をLINEで送るクリニックもあるので、申し込み前に条件を確認してください。
一時帰国中に1歳6か月健診や3歳児健診を受けられますか
乳幼児健診は市町村が行う健診で、住民票のない一時帰国の子が受けられると書いた自治体の案内は確認できませんでした。受けられないと明記した案内も見つかっていないので、滞在先の保健センターに確認してください。自費で健診を受け付けている小児科もあり、費用の目安は1回3,000〜5,000円程度です。
健康診断は一時帰国のいつ受けるのがいいですか
日本に着いてから1週間以内がおすすめです。結果が出るまで2〜3週間かかる施設があり、滞在の終わりに受けると、要再検査になっても日本にいるうちに対応できません。予約はおおむね2〜3週間前までに必要です。



