一時帰国の日程が決まって、「一時帰国 予防接種 子供」と検索する。滞在国では日本の定期接種の一部が受けられなかった、日本脳炎のワクチンをどうするか迷っている、BCGを打たないまま出国してしまった。帰国のついでに日本の小児科で打っておきたい。そういう家庭は確実にいます。
先に結論を書きます。日本に住民登録がない一時帰国では、定期接種の年齢に当てはまっていても、公費ではなく全額自己負担の「任意接種」になることが多いです。大阪市は、一時的な帰国で居住実態がない場合は「全額自己負担」と明記しています。一方で、自費なら小児科で受けられるので、大事なのは「どれを優先して打つか」と「在庫の予約」です。この記事では、2026年9月27日時点の厚生労働省・自治体・医療機関の公開情報をもとに、費用の目安と、短い滞在で何本打てるかを整理しました。

住民票がないと、定期接種でも「任意接種」になることが多い
日本の定期接種(公費で受けられる予防接種)は、市区町村が実施しています。厚生労働省の定期接種実施要領は、市町村長が対象者の台帳を「住民基本台帳その他の法令に基づく適法な居住の事実を証する資料等に基づき」作ると定めています。つまり、公費の対象になるかどうかは、その市区町村に住んでいると言えるかどうかで決まります。
一時帰国について具体的に書いている自治体を見ると、扱いははっきりしています。
- 大阪市:海外に住んでいる場合は「接種費用の助成等はございません」。一時的な帰国で居住実態がなく接種する場合は「予防接種法に基づかない『任意予防接種』であるため、全額自己負担」。
- 川崎市:住民登録のない人を定期接種の対象にするのは、市内に居住し、住民登録がないことに「やむを得ない理由」がある場合などに限り、里帰りなどの一時的な滞在は対象外。
- さいたま市:住民登録がなくても「居住の実態」があり対象年齢なら受けられる場合がある、事前に区の保健センターへ連絡を、という書き方(一時帰国者への言及はなし)。
名古屋市や神戸市(BCG)も住民登録を前提にしています。東京23区の「里帰り先で受けた定期接種の費用助成」も、区に住民登録がある人向けの制度です。一時帰国者に公費で手当てをすると明記した自治体は、今回の調査では見つかりませんでした。ただ、さいたま市のように相談の余地を残した書き方の自治体もあるので、滞在先の市区町村の保健センターに一度電話で確認する価値はあります。
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「住民票を戻せば公費で受けられる」とは限らない
「それなら住民票を一時的に戻せばいい」と考える人もいます。ところが、これには2つの壁があります。
1つめは、一時帰国では転入届そのものを受け付けない自治体があることです。川崎市のよくある質問は、一時帰国して再び海外に戻る場合は住所が海外の居住地にあるものとして扱い、転入届を出しても住民登録は受け付けない、としています。「住民票を戻せば公費になる」と明記した自治体のページも、見つかりませんでした。
2つめは、住民票を戻すと、ほかの手続きの扱いが変わることです。たとえば神戸市の小学校の体験入学願には「日本に住民票を置きません」という確認欄があり、日本国籍の子が住民票を置く場合は「体験入学はできません。正規就学になります」とあります。国民年金や国民健康保険にも影響が出ます。予防接種だけのために住民票を動かすのは、得にならないことが多いと考えてください。戻す・戻さないで変わることは一時帰国で子どもの住民票はどうする?で詳しく整理しています。
自費の費用の目安(1回・税込)
任意接種の料金は医療機関が決めるので、同じワクチンでも差があります。東京・名古屋・札幌・横浜の4つの医療機関が公開している料金を並べると、次の幅になりました。
| ワクチン | 自費の料金の幅(1回) | 一時帰国で気をつけること |
|---|---|---|
| 日本脳炎 | 6,600〜8,100円 | 東・南・東南アジアの駐在なら優先度が高い。標準は3歳から |
| MR(麻しん風しん) | 7,500〜12,200円 | 注射の生ワクチン=ほかの注射生ワクチンと27日あける |
| BCG | 9,000〜9,570円 | 定期接種は1歳まで。集団接種の自治体があり、予約が必要な小児科も |
| 五種混合 | 約20,000円 | 複数回の接種が必要。滞在中に全部は終わらない |
| B型肝炎 | 5,000〜6,050円 | 不活化=ほかのワクチンとの間隔の制限なし |
| 水痘(みずぼうそう) | 6,100〜8,800円 | 注射の生ワクチン=27日ルールの対象 |
| おたふくかぜ | 5,500〜6,050円 | 注射の生ワクチン=27日ルールの対象 |
| HPV | 27,500〜30,000円 | 9価ワクチンの料金。複数回の接種が必要 |
たとえば日本脳炎とMRを1回ずつなら、1万5千円前後から2万円程度が目安になります。兄弟の分を合わせると、一時帰国の費用の中でも小さくない金額です。
3週間の滞在で何本打てるか:27日ルールで計算する
2020年10月から、ワクチンとワクチンのあいだの間隔のルールが簡単になりました。いま決まっているのは、注射の生ワクチン(MR・BCG・水痘・おたふくかぜなど)同士は27日以上あけることだけで、それ以外の組み合わせには間隔の制限がありません。
- 不活化ワクチン(日本脳炎・B型肝炎など)は、生ワクチンの前でも後でも間隔を気にしなくてよい
- 注射の生ワクチンを2種類打ちたい場合は、別々の日なら最短で28日目以降になる。3週間の滞在では、別日では2本目が間に合わない
- 別々のワクチンを同じ日に打つ同時接種は、医師が必要と認めた場合にできる。短い滞在ではこれが現実的な選択肢になる
また、同じワクチンを複数回打つもの(日本脳炎の1期初回は6〜28日の間隔で2回など)は、それぞれのワクチンの決まりに従います。滞在が3〜4週間あれば、日本脳炎の1期初回の2回を日本で終えられる計算になります。何をどの順で打つかは、予約の電話で「滞在は○日から○日まで」と伝えて、医師に組んでもらうのが確実です。

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日本脳炎:アジアの駐在では優先度が高い
ASEANや中国に住む家庭がいちばん気にするのが日本脳炎です。厚生労働省の検疫所(FORTH)は、流行地である東アジア・南アジア・東南アジアへ行く人に接種が検討される、としています。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の資料では、世界の患者の約半数が中国で、フィリピンのように流行地でもワクチンが国の制度に入っていない国があります。
日本の標準的な接種は、1期初回が3歳で2回、その約1年後に追加1回、2期が9歳で1回です。生後6か月から打つこともできます。
注意したいのは、日本のワクチンは不活化ワクチンで、中国などでは生ワクチンも使われていることです。両者の互換性(海外で打った生ワクチンの続きを日本の不活化ワクチンで打ってよいか)は確認されていません。アジアで生ワクチンを受けた子には帰国後に国産ワクチンでの接種し直しを勧める医療機関もありますが、これは個別の病院の方針です。海外で受けた記録を持って行き、医師に判断してもらうのがいちばん確実です。
BCG:1歳を過ぎると検査が必要になる
BCGの定期接種は1歳まで(標準は生後5〜8か月)です。欧米の多くの国では一般にBCGを行っていないので、赤ちゃんを連れて赴任した家庭では、一時帰国で受けようと考えることがあります。
- 西東京市や東大阪市のように、BCGを保健センターの集団接種で行う自治体がある(小児科で受けられないことがある)
- 小児科で受ける場合も、BCGだけは2日前までの予約が必要、という医院がある
- 1歳を過ぎると任意接種になり、ツベルクリン反応で結核に感染していないことを確かめてから打つ医療機関がある(4歳未満が対象、という例)
ツベルクリン反応は結果を見るまでに日数がかかるので、1歳を過ぎた子のBCGは、滞在の早い時期に相談を始める必要があります。
対象年齢を海外で過ぎてしまった場合
「海外にいたせいで定期接種の年齢を過ぎてしまった。救済はないのか」という疑問もよく見かけます。定期接種には、病気などで受けられなかった子が年齢を過ぎても公費で受けられる長期療養特例がありますが、その「特別の事情」として国の要領に並んでいるのは、重い病気・免疫を抑える治療・臓器移植・災害やワクチンの大幅な供給不足などで、海外滞在は含まれていません。海外滞在者向けに独自の助成をしている自治体も、今回の調査では見つかりませんでした。
つまり、海外で年齢を過ぎた分は、本帰国後も含めて任意接種(自費)になるのが基本です。なお、これとは別に、MRワクチンの供給不足で令和6年度に打てなかった人は、2027年3月31日まで定期接種として受けられる措置があります。
海外で受けた接種の記録はどう扱われるか
海外で受けたワクチンの記録は、日本の母子健康手帳に書き写しておくと、日本の小児科で話が早くなります。さいたま市や川口市は、海外で受けた接種について、医師の判断と保護者の同意があれば「既に接種した回数分の定期接種を受けたもの」とみなすことができるとしていて、手帳の該当欄に日付を、署名欄に国名を転記するよう案内しています(国の要領には同じ規定は見当たらず、自治体の運用として書かれています)。
JIHSのトラベルクリニックは、現地で別のメーカーのワクチンを追加接種しても「通常は有効性や相互作用などの問題はない」としています。逆に、現地の学校に日本での接種歴を出すときは、英文の予防接種証明書が要ることがあります。横浜市・港区・渋谷区はいずれも1通300円で、発行まで10日〜2週間ほどかかります(渋谷区は海外で受けた接種を対象外としています)。一時帰国中に英文証明書を取りたい場合は、着いてすぐに申し込まないと滞在中に届きません。
予約は出発の1か月前までに
一時帰国の予防接種でいちばん多い失敗は、小児科に行ってからワクチンの在庫がないと分かることです。任意接種のワクチンは取り寄せになることがあり、「取り寄せが必要なワクチンは1週間前までに電話を」と案内している小児科もあります。
- 海外で受けた接種の記録(現地の接種カードや証明書)と母子健康手帳を手元にそろえる
- 日本で打ちたいワクチンを決める(日本脳炎・BCG・MRなど)
- 滞在先の近くの小児科かトラベルクリニックに、滞在日程・ワクチン・在庫・費用を電話で確認する
- 滞在先の市区町村の保健センターに、公費の扱いを念のため確認する
トラベルクリニックは、厚生労働省検疫所(FORTH)の「予防接種実施機関」のデータベースで都道府県とワクチン名から探せます(医療機関の申請による登録なので、受診前に必ず確認を、と注意書きがあります)。学校の体験入学や一時預かりの手続きと重なる時期なので、全体の段取りは一時帰国の「体験入学」完全ガイドや、未就学の子なら一時帰国中に保育園・幼稚園へ通わせられる?とあわせて組んでください。体験入学や一時預かりで予防接種歴の提出を必須にしている公的な記載は、今回は見つかりませんでした(八王子市の一時保育は、初回面談に母子健康手帳を持ってくるよう求めています)。
一時帰国のあとに残るもの
予防接種や手続きに追われる一時帰国でも、子どもにとって大きいのは、日本の同い年の子と日本語で過ごす時間です。そして海外に戻ると、その相手は次の一時帰国までいなくなります。
ともだちじゃぱんは、その「続き」をつくるためのオンラインスクールです。日本の現役水準の教員が担任につく8人の少人数クラスで、同じように海外で育つ日本の同世代と毎日話せます。年に一度の数週間ではなく、ふだんから日本語で話す相手をつくることが目的です。
よくある質問
一時帰国中に、定期接種を公費で受けられますか
日本に住民登録がない一時帰国では、公費ではなく全額自己負担の任意接種になることが多いです。大阪市は、一時的な帰国で居住実態がなく接種する場合は「任意予防接種」で「全額自己負担」と明記しています。一時帰国者に公費で手当てをすると明記した自治体は見つかりませんでした。扱いが気になる場合は、滞在先の市区町村の保健センターに確認してください。
住民票を一時的に戻せば、公費になりますか
そうとは限りません。川崎市のように、一時帰国して再び海外に戻る場合は転入届を出しても住民登録を受け付けない、と明記している自治体があります。「住民票を戻せば公費になる」と明記した自治体のページは確認できませんでした。住民票を戻すと体験入学ができなくなる自治体(神戸市の例)や、年金・健康保険への影響もあります。
一時帰国の予防接種の費用はいくらですか
医療機関によって違いますが、公開されている料金の例では、1回あたり日本脳炎6,600〜8,100円、MR7,500〜12,200円、BCG9,000〜9,570円、水痘6,100〜8,800円、おたふくかぜ5,500〜6,050円、B型肝炎5,000〜6,050円程度です(2026年9月27日確認)。予約の際に診察料を含めた総額を確認してください。
3週間の一時帰国で、生ワクチンを2種類打てますか
別々の日に打つ場合、注射の生ワクチン同士は27日以上あける必要があるので、3週間では2本目が間に合いません。同じ日に打つ同時接種は医師が必要と認めた場合にできるので、滞在日程を伝えて医師に相談してください。不活化ワクチン(日本脳炎など)は、生ワクチンとの間隔の制限がありません。
海外で打った日本脳炎ワクチンの続きを日本で打てますか
日本の日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンで、中国などでは生ワクチンも使われています。両者の互換性は確認されていないため、海外で受けた記録を持って行き、医師に判断してもらってください。海外で受けた接種の記録は、日本の母子健康手帳に書き写しておくと話が早くなります。



