「一時帰国 体験入学 小学校 ブログ」で検索する人が探しているのは、制度の説明ではありません。実際に申し込んだ人が、いつ連絡して、何を持たせて、初日に何が起きたのか。要するに「で、実際どうだったの」です。ところが体験記は書いた人の自治体の話でしかなく、読み進めるほど自分の場合がわからなくなる、という現象が起きます。
理由ははっきりしています。体験入学は自治体ごとに別の制度だからです。申込先が教育委員会の市もあれば校長の市もあり、期間は2週間で切る市も2か月まで認める市もあり、そもそも体験入学という制度を持たない区もあります。この記事では、体験記の代わりに自治体が公開している受け入れ要項そのものを並べて、「実際どうなるか」を再構成します。個人の体験談は一切使いません。

まず、体験入学が「ない」区がある
ブログを読み比べて混乱する最大の原因がこれです。文部科学省のFAQが「いわゆる『体験入学』は国の制度としては存在しておらず、正規の編入学とは違い、各教育委員会の裁量によって実施されているものです」と書いているとおり、実施するかどうかから自治体の判断です。実際、こう明記している自治体があります。
なお、体験入学ではありません。正式な編入学での受入れとなります。(世田谷区)/なお、体験入学という制度はありません。正式な編入学での受入れとなります。(台東区)/体験入学は行っておりません。一時的な就学の場合も、正式な編入学での受入れとなります。(枚方市)
世田谷区・台東区・枚方市の各公式ページ
編入学扱いになると、話がひっくり返ります。台東区と文京区は「原則、2週間以上継続して通学すること。」という下限を課しています。上限ではなく下限です。夏休みの1週間だけ、という希望はここでは通りません。台東区はさらに「・自己都合による欠席・早退・遅刻は認められません。」「・出国する際は必ず退学手続きを行ってください。」とも書いています。世田谷区も「受け入れ期間中は、就学に専念してください。」としています。
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申込は「1か月前」ではなく、市によっては2か月前
体験記でいちばん役に立たないのがこの項目です。締切が市ごとに違いすぎるからです。公開されている要項から拾うと、こうなります。
| 自治体 | 申込の締切 | 受け入れ期間 | 要項に書かれている特記 |
|---|---|---|---|
| 市川市 | 2か月前まで | 原則1週間以上1か月以内 | 「※体験入学許可後は、原則期間の変更はできません。」/実施は5月から翌年2月まで |
| 北本市 | 2か月前が目安+1か月前に書類 | 30日以内 | 受け入れ期間は6月1日〜翌年1月31日で「夏季休業日、冬季休業日は除く」/パスポートの写しを添えて許可申請書を提出 |
| 茅ヶ崎市 | 1か月前/6・7月希望は4月1〜30日に受付 | 原則2週間まで・年度内1回 | 「締切が過ぎてからの申し込みはできません。」/「保護者の方から学校に電話していただき受入確定となります。(学校への連絡にはメール不可)」 |
| 吹田市 | 3週間前まで(電子申請) | 概ね1か月以内 | 「体験入学期間中の成績の評価はしません。通知表や卒業証書のお渡しはありません。」 |
| 春日市 | 1か月前に仮申込→本申込 | 原則2週間以内 | 「本申し込みを受け付けるまでは、正式な決定ではありません」/「校区の学校が受け入れることができない場合は、他の学校においても体験入学の受け入れは行いません。」 |
| 仙台市 | 開始日の2開庁日前まで | 2ケ月間が限度 | 期間の上限が最も長い/小学校および特別支援学校小学部の給食費は無償 |
| 杉並区 | 帰国1か月前に連絡、ただし帰国後でないと申請不可 | 区の運用による | 「お子さんが日本に帰国してからの手続きになります。帰国前の手続きはできません」/年度初め(4月)は基本的に受け入れなし |
| 福岡市 | 市の案内による | 2週間程度 | 「教科書無償給与・給食費無償化・就学援助制度等の対象外となります」 |
見落とされがちなのが茅ヶ崎市の例です。夏休みに通わせたいなら、申し込みは4月中。8月に思い立って調べ始めた時点で、その年はもう終わっています。年末年始の一時帰国を考えている方が9月に読んでいるとすれば、それはちょうどいいタイミングです。
もうひとつ、茅ヶ崎市は令和7年度から対象者を絞りました。「以前茅ヶ崎市に居住していた学齢児童生徒(又は茅ヶ崎市の小中学校に年度内に編入学予定の学齢児童生徒)」——縁のない自治体には、そもそも申し込めないという条件です。祖父母宅の市がこの型かどうかは、最初に確認する価値があります。
受け入れてもらえない時期が、はっきり決まっている
「行事の時期は避けたほうがいいらしい」とブログには書かれますが、要項はもっと具体的です。
4月から5月、2月から3月は学校での受け入れができません。中学3年生の受け入れはできません。
茅ヶ崎市
和光市は「年度初めや年度末、中学校の定期テスト、受験期間中等は受入れができない場合や期間の短縮をする場合がある」、香芝市は「入学式および卒業式については、ほかの児童生徒に向けた重要な式典であるため、原則として参加することはできません。」としています。北本市にいたっては、受け入れ期間そのものが「6月1日から翌年1月31日(夏季休業日、冬季休業日は除く)」——つまり夏休みも冬休みも不可です。一時帰国のタイミングと真正面からぶつかります。
宿泊行事も原則参加できません。吹田市は「林間・臨海学習、修学旅行等の宿泊を伴う学校行事には参加できません。」、和光市も同旨。楽しみにしていた行事に当たっていた、という落胆はここで先回りして避けられます。
持ち物は、いちばん詳しい要項を写しておくと早い
多くの自治体は「持ち物は体験先の学校へご確認ください」(茅ヶ崎市)で終わっています。そのなかで、茨木市立茨木小学校が公開している一覧が抜きん出て具体的です。
学校長が体験入学を許可した場合、必要な持ち物は以下の通りです。貸し出しはしませんので、ご用意ください。/体操服(登校時着用している服とは別のものをご用意ください。)/運動時に着用する帽子/上履き(スリッパは不可)/体育館シューズ/お道具箱 23×33×5.5cm 以下のもの/(お道具箱の中に入れる)はさみ・のり・色鉛筆/給食用ナフキン/水筒/筆記用具/連絡用ノート/自由帳(無地)/教科用ノート
茨木市立茨木小学校「体験入学について」
夏はこれにプールセット(水着・水泳帽・ゴーグル・タオル・サンダル・濡れたものを入れる袋)が加わり、1か月程度の体験入学なら給食エプロンセット(エプロン・三角巾または帽子・マスク)も必要です。給食当番が回ってくるからです。
教科書は原則もらえません。文部科学省FAQが「体験入学の児童生徒を対象とした教科書の無償配布は行っていません」としており、茨木市は「(体験入学の場合、教科書はお渡しできません。)」、市川市は「体験入学の期間に関わらず、教科書の給与はありません。」、安来市は「お持ちのものがあればご持参ください。」。在籍している日本人学校や補習校の教科書を持って行くのが現実的です。
なおランドセルと防災頭巾については、要否を明記した公的な要項が見つかりませんでした。「学校で貸してもらえた」という話はよく見かけますが、一次情報では確認できていません。茨木小の詳細なリストにもランドセルは載っていません。事前訪問のときに直接たずねるのが確実です。

給食は、アレルギーがあると出ないことが多い
これは事前に知っておくべき、かなり大きな話です。確認できた自治体は、いずれも「アレルギー対応はできない=弁当持参」でした。
食物アレルギー等ある場合は、給食利用できません。お弁当を持参していただきます。(茅ヶ崎市)/※アレルギー等がある場合、給食の提供はできませんので、お弁当を持参ください。(市川市)/・食物アレルギー等、喫食できない食品がある場合は、弁当持参での受け入れとなります。(北本市)/原則としてアレルギー対応や宗教上の理由による食物制限の対応はできません。(春日市)
各市の公式ページ
通年で在籍する子には対応する学校でも、数週間の体験入学では体制を組めない、ということです。アレルギー対応を「する」と明記した自治体は、調べた範囲でゼロでした。
給食費も注意が要ります。春日市は「正式な在籍ではないため、市負担額を含む給食費をお支払いいただきます。」——公費で賄われている分まで払う、という意味です。世田谷区は「給食費につきましては、事前に申し出のあった登校期間(喫食の有無にかかわらず、給食を用意した日)で請求させていただきます。」。食べなかった日も請求されます。和光市は「給食費は予め定められた1食分の金額×喫食予定の日数分を体験入学初日に現金でお支払いください。」——初日に現金が要ります。
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けがの保険は、市によって「加入できる/できない」が正反対
ここは実害に直結するので、必ず確認してください。日本スポーツ振興センターの災害共済給付に加入できる自治体と、できない自治体があります。
加入できる例——市川市(掛金460円)、吹田市(任意加入・年額460円)、春日市(440円・必須)、香芝市(希望者・年間550円)、宝塚市、安来市、北本市(民間保険との選択)。
加入できない例——茅ヶ崎市は「日本スポーツ振興センター災害保険に加入できないため、事故等による医療費等は、自己負担です。旅行保険や個人賠償責任保険等に加入しておくことをお勧めします。」。茨木市は「登下校時及び学校等で発生した事故やけが等の治療費については、すべて保護者の負担となります。」。松本市も「災害共済への加入は対象外です」。
そして和光市が、この問題の全体像をいちばん率直に書いています。
体験入学時は和光市に住民票がないため、健康保険の対象外となります。また、日本スポーツ振興センターの保険にも加入できないため、事故等による医療費は、保護者の全額負担となりますのでご注意ください。
和光市
日本の健康保険証がない状態で、学校でけがをする。体験記ではあまり触れられませんが、海外旅行保険の学校での事故の扱いを出発前に確認しておく価値は十分にあります。
必要書類でつまずくのは、たいていパスポートの押印
共通して求められるのは、子どものパスポート(入国スタンプのページ)と、滞在先を証明する書類です。そしていま実際に起きているつまずきが、これです。
ICチップの入ったパスポートで自動化ゲート及び顔認証ゲートを利用した場合は、パスポートに帰国日の証印(スタンプ)がされません(入国審査の職員に申し出て証印を受けることは可能)。パスポートに帰国日の証印がない場合、帰国日を確認するために飛行機の搭乗券の半券をお持ちください。
世田谷区(台東区にも同文)
顔認証ゲートを通ると、スタンプが押されません。体験入学を申し込む予定があるなら、入国審査で職員に申し出て証印をもらうか、搭乗券の半券を捨てずに取っておいてください。
滞在先の証明は、台東区が具体例を挙げています。「親戚宅等に滞在・・・滞在先の世帯主による居住証明書など/持ち家に滞在・・・滞在先に届いた郵便物や公共料金領収書など2〜3点/賃貸物件に滞在・・・滞在先の賃貸借契約書など」。三鷹市は「ホテル・ウィークリーマンションは滞在先として認められない」としているので、宿泊先の形態も確認が要ります。
もうひとつ、結核の検査が求められることがあります。杉並区は「結核高まん延国で6カ月以上の滞在歴のある方は、学校医の診察後、原則、結核検診の精密検査(胸部レントゲン)をお受けいただきます」、春日市は検査方法まで指定して「(検査費用は保護者負担)」と書いています。北本市は結核高蔓延国の一覧をPDFで公開しています。該当する国にお住まいなら、渡航前に現地で検査を受けておくほうが、日本での日程が楽になります。
初日に起きること、そして起きないこと
要項から読み取れる範囲で、初日までの流れはこうです。茅ヶ崎市の場合、教育委員会への相談から始まり、保護者から学校へ電話して受入確定、そして「保護者の方とお子様で学校へ事前訪問 ”体験入学開始日の3営業日まで”に済ませてください。」。この事前訪問で、持ち物・登下校の時間・服装を確認します。和光市も「5 持ち物・登下校の時間について 学校によって異なるため、顔合わせ時に学校で確認をお願いします。」としています。
起きないことも書いておきます。日本語の補習はつきません。北本市は「・日本語での授業となります。日本語の指導員は付きませんのでご了承ください。」、和光市は「日本語が分からないことでの補習的な授業は行いません。」、春日市は「通常の学校運営の中で受け入れを行うため、特別な対応はできません。」。日本語が不安な状態で放り込むと、本人がいちばんつらい思いをします。
そして成績はつきません。吹田市が明文で「体験入学期間中の成績の評価はしません。通知表や卒業証書のお渡しはありません。」としています(この点を明記している自治体は、調べた範囲では吹田市だけでした)。出席日数や指導要録の扱いを明文化した自治体は見つかりませんでした。
最後に、途中で終わることがある、という規定もあります。安来市は「体験入学中、学校生活に適応できない、またはクラス運営に支障が生じた場合は、期間中であっても体験入学をお断りする場合があります。」、吹田市は「学校の指示を守ってください。守られない場合は受入途中であっても体験入学を中止します。」。同じ安来市は逆側の条件として「児童生徒本人が体験入学に対し前向きな気持ちがあること。」も挙げています。親の希望だけで進めない、というのは要項に書いてあることなのです。
2週間で得られるものと、得られないもの
要項をここまで読むとわかるのは、体験入学は「日本の学校を体験する」ためのものであって、「日本語を伸ばす」ためのものではないということです。日本語の補習はつかず、成績もつかず、期間は2週間から1か月。それでも意味があるのは、日本語で友達と遊べた経験が本人のなかに残るからです。
問題はその先です。帰国して数か月経つと、その顔を見る機会がまた無くなっている。年に一度の2週間では、学年相当の国語は積み上がりません。
ともだちじゃぱんは、その「続き」をつくるためのオンラインスクールです。日本の現役水準の教員が、8人の少人数クラスで学年相当の国語を教えます。同じクラスに、同じように海外で育っている日本の同世代がいます。年に一度会う友達ではなく、毎週会って話す相手をつくることが目的です。体験入学で「日本語で話すのは楽しい」と分かった子ほど、その先が続きます。
手続きの全体像は一時帰国の「体験入学」完全ガイド、自治体差は一時帰国の小学校の受け入れ、市でこんなに違う、期間の上限は体験入学は何週間まで受け入れてもらえるかにまとめています。
よくある質問
いつまでに申し込めばいいですか
自治体によって大きく違います。市川市は開始日の2か月前、北本市も2か月前が目安、茅ヶ崎市は1か月前(ただし6・7月希望は4月1日〜30日の受付で「締切が過ぎてからの申し込みはできません」)、吹田市は3週間前、仙台市は開始日の2開庁日前です。杉並区のように「お子さんが日本に帰国してからの手続きになります。帰国前の手続きはできません」という自治体もあります。まず滞在先の市の要項を開いてください。
夏休みだけ2週間、という使い方はできますか
自治体によります。茅ヶ崎市は原則2週間まで、福岡市は2週間程度で、まさにその使い方を想定しています。一方、台東区と文京区は編入学扱いで「原則、2週間以上継続して通学すること」という下限を課し、北本市は受け入れ期間から夏季休業日・冬季休業日を除いています。三鷹市は在籍21日以上を求め、長期休業期間はその日数に含めません。
何を持たせればいいですか
最も詳しい公的リストは茨木市立茨木小学校のもので、体操服・運動帽・上履き(スリッパ不可)・体育館シューズ・お道具箱(23×33×5.5cm以下)とその中身(はさみ・のり・色鉛筆)・給食用ナフキン・水筒・筆記用具・連絡用ノート・自由帳・教科用ノートが挙げられています。夏はプールセット、1か月程度なら給食エプロンセットも。教科書は原則配布されないので、在籍校のものを持参してください。ランドセルと防災頭巾の要否を明記した公的要項は見つかりませんでした。
アレルギーがあっても給食は食べられますか
確認できた自治体は、いずれも対応不可でした。茅ヶ崎市「食物アレルギー等ある場合は、給食利用できません。お弁当を持参していただきます。」、市川市・北本市も弁当持参、春日市は「原則としてアレルギー対応や宗教上の理由による食物制限の対応はできません。」。アレルギー対応をすると明記した自治体は見つかりませんでした。申し込みの最初に伝えてください。
学校でけがをしたら、医療費はどうなりますか
自治体で正反対です。市川市(460円)、吹田市(任意・年額460円)、春日市(440円・必須)、香芝市(年間550円)などは日本スポーツ振興センターの災害共済給付に加入できます。一方、茅ヶ崎市・和光市・松本市・茨木市は加入できず全額自己負担です。和光市は「住民票がないため、健康保険の対象外となります」とも明記しています。海外旅行保険で学校での事故が補償されるか、出発前に確認してください。
通知表はもらえますか
もらえません。吹田市が「体験入学期間中の成績の評価はしません。通知表や卒業証書のお渡しはありません。」と明記しています。これは体験入学が正式な就学ではないことから来ています。なお、日本人学校と日本国内の学校の両方に学籍がある場合は、それぞれの卒業・修了要件を満たせば両方の卒業証書を受け取れる、と文部科学省のFAQは説明しています。
パスポートに入国スタンプがありません。申し込めますか
搭乗券の半券をお持ちください。世田谷区と台東区は「ICチップの入ったパスポートで自動化ゲート及び顔認証ゲートを利用した場合は、パスポートに帰国日の証印(スタンプ)がされません」としたうえで、「帰国日を確認するために飛行機の搭乗券の半券をお持ちください。」と案内しています。入国審査で職員に申し出れば証印を受けることも可能です。



